「先生は子供がいないから分からない!」と言われた
1年目のとき
私が初任者だったとき、担任していた子のお母さんから「子供がいない先生には私の気持ちなんか分からない!」と言われた。
「私に子供がいるかどうかなんて知らないじゃん…」と思ったし(いなかったけど)、今考えてもクレームの内容は理不尽だった。
様々な事情で子供をもたない選択をする人もいるし、子供が欲しいのにできなくて諦める人もいる。特に教員は激務のためか、不妊治療をしている人や流産を経験した人が多いような気がする。言ってはいけない言葉だと思う。子どもがいない人はいい先生になれないとか、子どもがいる人はいい先生というわけでは決してない。
だけど、だけど、、、
「確かに分からない」とも思う。申し訳ない。初任者だった私は、保護者の気持ちを分かりたいと思っていた。だけど、新卒の若者に、小学生の子供をもつ親の悩みなど分かるだろうか?大学でもそんなこと勉強してないよ………
「分かってほしい」だったのかな
私に「子供のいない先生には分からない!」と言ったお母さんがどんな気持ちだったのか、それから何年も考えている。
きっとそのお母さんは、自分の気持ちを「分かってほしい!」と本当は言いたかったかったんじゃないのかな。
私はそのとき3年生担任。そのおうちのお子さんは、発達の遅れが顕著になってきた時期だった。「私が見てあげられないからこの子はできないんだ」と泣いていたこともあった。私がお母さんの心のフォローができていなかったと思う。
保護者の心のフォローまで、教員の仕事ではない。そう言ってしまえばそれまでだけど、子供と携わる職業において、それは切っては切り離せない。
保育士さんに学ぶ
今、週に数回子供と「子育て支援センター」に遊びに行く。そこで、保育士さんたちと関わって、ハッとさせられた。保育士さんたちは、子供との関わりだけでなく、保護者との関わりもプロフェッショナルだと思う。
子供の幸せを願うなら、その子を育てる保護者のフォローが絶対に必要。自分は教員としてその視点が足りていなかったと思う。
子供がいるからといって、全員の保護者の気持ちが分かるようになるわけではない。保育士さんたちだって若い方が多いし、保護者の気持ちを勉強してきているわけではないと思う。
では何が違うのかと考えると…
「子供を普段家で見ている保護者を支えることも自分たちの仕事だ」
という意識なんじゃないかな。
これは「保育園」と「学校」のそもそもの違いではあるんだけど、保育園から学校へお子さんが入学した保護者はその違いを説明されてきていない。現場で保護者と関わる私たちにもやはり必要な意識だと思う。
「傾聴」と「期待を超えた」気遣い
私がよく行く支援センターの保育士さんは、必ず声をかけてきてくれて、「この前お話してた〇〇どうですか?」等と質問して、話を聞いてくれる。
学校にはいろんなおうちのお子さんが来る。そんな時間はなかなかないけれど、だからこそ、機会を作ってまずはおうちの方の話を傾聴することが大切だなと思う。
そして絶対に否定せず肯定的に返してくれる。悩みを相談したときも、「もうご存知かもしれませんが…」「もし気になるようでしたら、こんな感じでやってみるとかどうですかね?」「でも、ママも大変ですよね…」と控えめにアドバイスをしてくれる。
正直言って担任していた中には問題のあるご家庭もあったけれど、そういった保護者に学校は厳しい目を向けていなかったか、考えさせられた。それは何の解決にもならないのではないか。
そして、いつもプラスαの一言がある。挨拶だけでいいような場面で、気の利いた声掛けをしてもらえるとやはり嬉しい。忙しい中で難しいことだけれど、保育士さんたちをお手本にして、保護者の方への労いの言葉やちょっとした気遣いを大切にしたい…(と、今は余裕があるから思える。)
本当は、担任と別に保護者対応をする役職があればいいのに、と思う。若手とベテランで担任をするとか。やはり新卒に保護者の悩みを聞くのは無理があるよ……。