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令和の米騒動と株価暴落

コメが不足しているらしい。
私自身は、正直コメをあまり食べないので影響はほとんどないが、一部のスーパーの棚からコメが消えて騒動になっているらしい。
この令和のコメ騒動ともいえるような事態の原因を聞いていると、先日株式市場で起きた”大暴落”と共通する要素があるように思えた。
そこで今回は、令和のコメ騒動と株価暴落の共通点について記してみたい。

コメは足りている

各種情報を総合するとコメ自体は足りているようだ。
実際にコメを大量に使用する外食産業などは、コメを年間の長期契約で確保していて、コメ不足の影響は受けていない。
信じられないなら、近くのコンビニやほか弁屋でも見れ見ればいい。普通にお握りやお弁当を売っているはずだ。
そうは言っても実際にスーパーの棚からコメがなくなると不安になるものだ。

コメ不足の原因はTVの煽り報道

コメ不足の原因を調べ見ると以下のような感じらしい。

篩下米(フルイシタマイ)の不足

一般の販売に適さないような粒の小さなお米のことを”篩下米(フルイシタマイ)”と言いうそうだ。このお米は、普通は給食センターや社員食堂などで利用されているそうだ。ところが昨年は、お米の出来が大変良かったために、この粒の小さいお米の生産量が減ってしまったらしい。そこで業務用に使われている粒の小さいコメが不足し、一等米への需要が増えたそうだ。
ちなみに粒が割れたお米などは、お煎餅の材料などの業務用に使用されるそうだ。

インフレ

ここ数年の円安で輸入小麦の価格が上昇し、パンやうどんの値段が上昇していた。そのため、パン食需要の一部がお米にシフトし、予想より10万トン程度(需要の2%弱)需要が増えた。

お盆休み

お盆シーズンに入り、問屋や卸が夏休みに入り、流通量が減っていた。またこのシーズンは、ちょうど去年とれたお米が払拭し新米が登場する端境期にあたる。そのため、いつもなら潤沢にある卸など流通段階でのコメの在庫が減っていた。

南海トラフ臨時情報

一時的な要因で、お米が多少品薄になっていたところに”南海トラフ地震臨時情報”が出た。この影響で、一部の消費者が備蓄用にコメの買い占めに走った。

TVが大騒ぎ

一部のスーパーの棚からコメがなくなったのをTVなど大手メディアが騒ぎ立て、情弱な消費者が買いに走った。

以上が今回の令和のコメ騒動の経緯のようだ。
コメ不足の主犯は、南海トラフ臨時情報を出した政府とコメ不足を騒ぎ立てたTVなどのメディアにあるようだ。

コロナのマスク不足と同じ

今回の令和のコメ騒動の経緯は、ちょうど4年前にあった、新型コロナのマスク不足騒動と構図は同じだ。
マスクやトイレットペーパーのような消費財は、年間の消費量が人口でほぼ決まっている。いきなりトイレットペーパーが3倍売れるようなことは普通はない。
当然メーカーは余分な在庫は持ちたくないので、年間需要に合わせて計画的に生産している。
そこに一度に普段より極端に多い需要が発生すれば品薄になるのは当然だ。
実際には不足していないのに、メディアが騒ぐことで超過需要が一時的に生じて、店頭から品物が消えたのだ。

株価暴落との類似点

今回の令和のコメ騒動は、ちょうど同じ8月に発生した株価暴落と状況が似ている。
8月に発生した株価暴落では、SNSでの情報拡散が暴落を引き起こしたのではないかとの説がある。特に雇用統計に絡む「サームルール」と呼ばれる指標に投資家が過剰反応したとの説だ。
今年に入り、新NISAが始まったことから、株式投資が初めての”素人投資家”が株式市場に大量に参入した。新人といっても数は膨大だ。新NISAによる投資額は、月間で1兆円を超えている。
この大量の素人投資家の一部が、SNS情報で暴走したというのが暴落の原因だというのだ。
ちょうどTVでコメ不足の報道を見た”情弱消費者”が、食べきれない大量のお米を買い占めたのと同じ仕組みだ。

価格はマージナルで決まる

今回のコメ騒動をもう少し詳しく分析すると、TVなどで盛んに報道されている(煽っている)コメ価格というのは、所謂”スポット市場”の価格だそうだ。
例えば外食産業やコンビニなどは、年間契約で既に購入契約を済ませている。そして卸などが、一時的に余剰在庫になったコメを取引しているのがスポット市場だ。今回のコメ騒動では、このスポット市場に買いが殺到して価格が倍近くに上昇してしまったそうだ。
一方で仮にスポット価格が上昇しても、コンビニやほか弁屋が年間契約している価格には影響はない(もちろん契約形態による)。
この現象の面白い点は、”価格はマージナル(限界)価格”で決まるという点だ。
同じような現象の極端な例としては、例えばコロナ初期に原油価格がマイナスになったのを思い出させる。原油もほとんどが産油国と消費国の長期契約で決まっている。一方で原油のWTI市場というのは、やはり究極のマージナル市場だ。なので”マイナス価格”のような極端なことが時々起きる。
また投資家にはお馴染みの日銀の金融政策が効果を発揮するのも、銀行間の短期金融市場が、金融取引の”マージナル市場”だからだ。

バブルで全員が儲けるわけではない

株価や不動産バブルが暴落すると必ず出てくる話がある。それは、「損をした人と同じぐらい儲けた人がいるんでしょ!」という話だ。
もし市場の構造を理解していれば、こんなバカげた疑問は持たないだろう。株式市場というのは究極のマージナル市場だからだ。
例え一株でも取引されれば、それが市場の価格になる。常に世の中に存在しる全ての株が取引きされているわけではない。実際には、ほとんどの株が、持ち合いや生命保険や年金などの機関投資家が長期保有していて市場には出てこない。
高値から株が暴落した場合を想定すればよくわかるだろう。全員が高値近辺で取引しているわけではない。取引されているのは株式全体のごくごく一部だ。
そしてその価格が”市場価格”になるのだ。
これが市場経済の基本の「キ」だ。しかし、このことをちゃんと理解している人は意外に少ない。偉そうにしている政治家や大企業の経営者でも、このことを理解していない人が意外に多い。
そして、市場で乱高下する価格は人々を不安にさせる。この不安が生み出したのが、共産主義や社会主義などの計画経済だ。しかし結果はご存じの通りだ。
今の世界経済を見ればわかる通り、一見ひっちゃかめっちゃかに価格が乱高下する市場経済の方が優れているのは一目瞭然だ。

株式市場の仕組み

今回の令和のコメ騒動から投資家が学べることは、市場全体に存在する需要と供給のほんの一部の価格である限界価格(マージナル)で株価が決まるということだ。株価が一見意味もなく乱高下するのはこのためだ。
この仕組みを理解せずに投資を行うと、「買うべきところで売却し、売るべきところで買い向かう」羽目になる。
ちょうどTVのコメ不足のあおり報道を受けて、食べきれないほどの大量のコメを買って途方に暮れている”情弱の消費者”のようなものだ。
逆に言うと、短期で売買しているデイトレーダーのような投資家は、株式自体の本質的価値を気にする必要はない。むしろ知らない方がいい。それより重要なのは市場のセンチメントだ。要はどれだけ”バカが騒いでいるか”が重要になる。要はババ抜きゲームだ。
ちなみに一部の天才トレーダーは、市場の短期的な受給を”嗅ぎ分ける”天賦の才能があるようだが、一般人はマネするのは止めた方がいい。

コメ騒動の今後

ちなみの今後のコメ価格だが、9月に入り新米が出回ると当然需給は緩む。そして去年取れたコメは”古米”になる。普通は価格が下がる。
そこで問題となるのが新米の価格だろう。
コメ農家、卸などは、高値の今のスポット価格を参考価格として高値で年間契約を結ぼうとするだろう。
一方で、外食産業やコンビニなどの大手ユーザーは、今のコメのスポット価格は”一時的な異常値”として、米騒動前の価格を参考に契約しようとするだろう。
もし高値で契約となると、当然コンビニのおにぎりやホカ弁のコスト上昇要因となる。
一方で、為替が円高に進んでいることから、小麦価格などが落ち着くと、パンやうどんの値段が下がるかもしれない。

この辺りは実際に結果を見ないとわからない。
だから市場は面白い。







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