夫と血縁関係のある子は望めない ┊︎不妊治療日記

手術を終えた先生から告げられたのは

「両方の精巣をくまなく探したんですが、、、
見つかりませんでした」

夫は精巣で精子が作られていない
非閉塞性無精子症でした。

そしてすぐに理解しました。

「あ、もう夫の遺伝子を受け継いだ
子どもには会えないんだ」と。

理解した瞬間涙が止まらなくなり
私は母の胸で声をあげて泣きました。

本当は少し期待していたから。
見つかるかもしれないと。

それが一瞬で絶望に変わりました。

ずっと夢でした。
大好きな夫に似た少しやんちゃで
優しくて可愛い我が子を抱っこすることが。

もうこの夢が叶わなくなる、
みんなが当たり前のように手に入れている幸せが
自分にはもう叶わないんだと。


何か次の話をしたそうな先生でしたが
私の様子を見て話せる状態じゃないと判断したのか
それ以上なにも言わずその場を立ち去りました。

しばらく呆然としていると
手術を終えた夫が痛みに耐えながら出てきました。

涙で濡れたまつ毛に真っ赤な目。

きっと先生から結果を聞いて泣いていたんだと思います。

本当は痛くて悲しくて辛いはずなのに
毅然と明るく振る舞う夫。

そんな痛々しい夫の姿を見て
「支えなきゃ」と私も明るく振る舞いました。

先生からは
「1週間後の経過観察の時に詳しい説明をします」
と告げられ、病院をあとにしました。

帰りの車内で流れる沈黙。

なんとか元気づけようと会話を探す母。

少しずつ悲しみが押し寄せてきたのか
また涙が溢れてくる夫。

夫は泣きながらひたすら
「ごめん」を繰り返していました。