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葛藤を喰う大学生日記。(初回)

こんにちは!
更科日記の模倣である、「更科でいず」を連載する「なぎを」と申します。
大学生になって一年が経ちましたが、様々な感情を短い期間で味わいました。自由だからこそ、選択肢が多いからこそ、私は窮屈になってしまうのです。
無名の私が学生生活でしか感じえない葛藤や興奮を、1000年前に菅原孝標女が日記にして示したように、文字にしたいと思います。
初回に投稿するのは、現在ではなく、高校3年生であった私が大学への進学が決定した時にwordに綴った心情です。このwordは「私の更級日記」といいタイトルで保存されており、私の原点でもあります。先生の名前を変えただけで、それ以外は当時のまんまです。スタバで書いたこの時が懐かしいなぁ。



12月31日に私はずっと巡り合いたかった更級日記の書を買い、朝のスタバで最初の50ページを読みふけった。
出産近くの乳母が作者の髪を撫で泣きながら、月光に照らされるのは何とも言えない気持ちになる。私の今住んでいる千葉県というよく分からない地で少女が様々な思いにはせながら、少女時代を過ごしていたという事実だけで私の胸を刺す何かがあるのである。

平安時代の恋愛物語はどれも奇想天外であり、私の胸を躍らせるのだ。しかし、先ほど目の前のカップルが行っていたように、「彼女がトイレに行く間に勝手にドリンクの口を開けて間接キスをする」という行為に関しては、気持ち悪いと即座に思ってしまう。もし、この行為が平安時代に書かれていて、そして私がその作品を読んだらきっと悶絶するのだろうなぁ、なんと単純な生き物だ、私は、なんて思いながら朝を過ごした。

私が最近かなり嬉しいと感じたのは、O先生に大学合格のことを話したときのことである。
「O先生はいらっしゃいますかぁ」と気後れした私の声が国語科に響きわたり、直ぐに後ろから来たS先生に「ほら、入って。入って。」と強引に押されたのを記憶している。
今思えば、その時の私はついていたのかもしれない。O先生はいかにも母親の雰囲気を持ちながら、私がいる方に近づいた。そして、小さな手を囲炉裏にやるようにストーブに当てる。なまめかしいなんて、私は思いながら先生に「私事で恐縮ですが。。。」と話を切り出した。O先生はすごく喜んでくれて「なぎをさんなら絶対に受かると思っていたよ」とおっしゃってくれた。それ以上にS先生は興奮していて、私に右腕半分を突き出した。私は二秒間思考が停止し、ハグの代わりだとわかったときには笑みを浮かべ、O先生と同じことをやった。私と話すのを止めた後も、彼は興奮していて、なんだか私まで嬉しくなった。
「先生が冬休み明けに源氏物語の授業をしてくださるという話を聞いたのですが、それは本当ですか!?」ときらきらした目で私は思わず言った。「うんん、今はね、考えているとこ」と柔らかな笑みで放った先生に、S先生もつられて一喜一憂する。
私が更級日記と瀬戸内寂聴さんの源氏物語の現代語訳を読みたいといったときに、O先生はマスク越しでも伝わる、にっこりとした表情を私に見せ、S先生は「是非、O先生に聞いてよ。彼女、源氏物語の師匠だからね」とウィンクしたような気がした。どこで話の区切りをつけようと迷っていたが、私の方から「ありがとうございました。では、よいお年を」と言い、先生も「わざわざ嬉しいニュースを伝えてくれてありがとうね。よいお年を。」と声をかけてくださり、私の胸はハイジャンプしていた。国語科を出た後も私は3時間ほど、その余韻に浸っていた。



読んでくださった方ありがとうございました。
次回は大学生になった1年目の私が少し病んで、いろいろ悩んでいる頃の日記を引用しながら、2年目に向けて文字を綴ります。

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