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お金の使い方

私はお金を使うということにとても慎重だ。
金額の多寡に関わらず、だ。
自分にとって価値のあるものとお金を交換できたらとても満足だし、
そうではなかった時の後悔は計り知れない。

昔からそうだったのではない。
むしろ、正反対の価値観で生きてきた。

3年前、会社を早期退職して定期収入が途切れた。
30年ほど、毎月決まった金額が口座に入るという生活だったため、
定期的な収入が途切れるということは、
私にとって未知の世界だったし、ある意味恐怖だった。
サラリーマン家庭で育ったため、なおさらだ。
退職して1年くらいは、とにかくお金が減るのが怖かった。
周りの目には、私はとてもケチに映っていたと思う。

会社勤めをしているときは、本当によくお金を使っていた。
「宵越しのお金は持たない主義だから!」なんて
ボーナス日に全額使い切ったり、
無計画にカード払いで買い物をしたりしていた。
買うものといえば、主に洋服やアクセサリー、インテリア雑貨や家具など。
最新家電もそろえ、外車も買った。
飲み会、お茶、旅行、毎日のランチ・・・湯水の如くお金を使っていた。

そんな私に転機が訪れたのは、
ジョシュア・ベッカーの「より少ない生き方」を読んだ時だ。
この本によって、私の価値観は大きく、本当に大きく変わった。
それまでの私は、物質至上主義だった。
ところが、モノを所有すれば幸せになれると信じていたにもかかわらず、
まったく心が満たされないどころか、
空虚感がインクの染みのようにじわじわと広がっていく感覚。
この目の前のモノたちは、自己承認欲求の証拠物であるという
紛れもない事実を突きつけてくる。
読み終えた直後、私は何かに取り憑かれたように
自分に必要ないと思ったものは、すべて処分した。
処分したものの量を見て愕然とした。
すべて、己と向き合うことなく手に入れたもの・・・。
せっせと好きでもない労働をしては、
せっせと不要なものを買い続けていたのだ。

一旦身辺整理をすると、その後は買い物をする際に
驚くほど慎重になった。
適当に買って、またあのごみになるのかと想像しただけで、
身震いがするようになり、気軽に買うことができなくなったのだ。
結局、手元に残ったものは驚くほど少なかったが、
まったく生活に困ることはなかった。
むしろ所有する息苦しさから解放され、肩の荷が降りた感覚があった。

ものを所有するには、労力を要する。
お気に入りのもののメンテナンスをするのはとても楽しい作業だが、
数には限度がある。
許容量を超えると、管理することが苦行になっていく。
その点、少数精鋭のものに絞り込むと、
手を掛けられる時間が増え、慈しんでメンテナンスができるため
ものも長持ちするようになった。

ものにかけるお金が浮いたぶん、
私は経験にお金を使うようになった。
旅行やコンサート、家族や友人との食事など。
ただ、これらも自分にとって価値が見出せるものに限定している。
魂が喜ぶことにお金は使いたい。

お金=エネルギー

自分にとっての価値基準がある程度定まってくると、
お金に対する不安もなくなっていった。
ようやく、自分にとって正しくバランスよく
お金が使えるようになってきたと思っている。

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