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オブジェクト指向UI(OOUI)は銀の弾丸なのか

「オブジェクト指向UIデザイン」という本を読みました。
著者である上野学さんのTwitter(@manabuueno)はUIについての哲学が面白く以前からフォローしていましたが、5月にOOUIに関する書籍が出ていたので買ってみました。

表紙に書かれている「銀の弾丸」とは「問題を綺麗さっぱり解消する特効薬」を意味します。果たしてオブジェクト指向UIは「銀の弾丸」と言えるのか、その特徴とともにまとめてみます。

オブジェクト指向UIとは

まず「オブジェクト指向UI」とはなんぞやというところから。
よく対比で持ち出される「タスク指向UI」と比較してみます。

【オブジェクト指向UI】
・ 名詞->動詞(オブジェクト選び、次にそのオブジェクトに対するアクションを選ぶ)
・ナビゲーションはオブジェクト(名詞形)を手掛かりにする
・モードレスである

オブジェクト指向UIにおいて、オブジェクトとはユーザーの関心の対象を指します。メールアプリではメールボックスやメッセージが、Twitterではツイート、通知、プロフィールなどがオブジェクトに当たります。

ユーザーがまず目にするのは多くの場合は操作の対象となるオブジェクト(名詞)の一覧であり、選択してからアクションを選択するという流れになります。ここで選択するオブジェクトは一つだけに限りません。

例)メールアプリの場合
・メッセージを一つ選択→閲覧/返信/削除など
・メッセージを複数選択→既読にする/フラグをつける/削除など

【タスク指向UI】
動詞->名詞(まずアクションを選び、次にそのアクションの対象を選ぶ)
・ナビゲーションはタスク(動詞形)を手掛かりにする
・モーダルである

一方タスク指向UIにおけるタスクとはユーザーが行う作業/行為のことを指します。先ほどと同じくメールアプリでは、メール作成、メール返信、メール閲覧、メール削除などがタスクに当たります。

ユーザーがまず目にするは上記のようなタスクの一覧であり、そのうち一つを選んでから対象のオブジェクトを選びます。

例)メールアプリの場合
・メール作成→(新規メッセージなので選択はなし)
・メール返信/閲覧/削除→メッセージを一つ選択

なぜオブジェクト指向UIだと嬉しいのか

それぞれの違いについて分かったところで、ではなぜオブジェクト指向UIが推されるのか、それはタスク指向UIで困ることを考えることで浮かび上がります。

タスク指向UIで困ること

1. モードが発生する(モーダルである)
タスク指向UIではユーザーはタスクを選択してから対象のオブジェクトを選択します。(メッセージを削除→対象オブジェクトを選択)
これはつまりタスクを選択した時点で削除モードに入ってしまうことを指します。この状態で次にメールの返信をしようとすると、削除モードから抜けるためにナビゲーションメニューに戻り、次に「メールを返信」というタスクを選択し返信モードに入る必要があります。
先にタスクを選んでしまうことで別のタスクをしようとする時に毎回モード解除という行動を経なければなりません。ユーザビリティはかなり悪いですね。

2. 直感に反する
実世界において、人間は対象のオブジェクトを五感のいずれかで捉え、それに対するアクションをする生き物だと思っています。
それを踏まえると対象のオブジェクトを捉えていない段階でアクションを選択することは直感的でなく非常に違和感があります。

オブジェクト指向UIではどう解決されるのか

まず「1. モードが発生する(モーダルである)」について、オブジェクト指向UIでは多くの場合モードが発生しないモードレスなUIになっています。(厳密にいうと半モーダルと呼ばれる状態のようですが)

例えばiOSのメールアプリではメッセージ一覧があり、その中からオブジェクト(メッセージ)をスワイプすると以下のようにアクションを選択できます。

ここではモードに入っていないので、ユーザーはそのままメッセージ一覧をスクロールして、他の対象のオブジェクトを探索することができます。

これによりユーザーは最初にアクションを選択する必要がなく、オブジェクトの一覧を探索しながら、あるメールには返信し、あるメールは不要になったので削除しと自由に行動することができます。

次に「2. 直感に反する」について、オブジェクト指向UIにおいてユーザーはまずオブジェクトの一覧を見せられ、その中を探索しながら任意のオブジェクトを捉えてアクションを選択します。

更にオブジェクト指向UIにおいてオブジェクトは自身の状態を表すこと、アクションに応じてるその場で変化することが重要となっています。従ってそのメールが既読なのか未読なのか、フラグがついているのかは一覧のメッセージ一つ一つが表しており、アクションに応じてその場で状態が切り替わります。

これはまさに実世界で人間が行なっている流れであり、とても直感的です。
直感的な操作ができることでシステムに慣れていないユーザーも複雑な説明書がなくても業務を行うことができます。

オブジェクト指向UIは銀の弾丸なのか

こうオブジェクト指向UIのメリットばかりを述べていると、全てのシステムをオブジェクト指向UIに切り替えればいいという話になりそうですが、決して万能ではありません。

ある状況下においてはどうしてもタスク指向UIにならざるを得ない場合があるからです。それは以下のような場合です。

・タスクによってユーザーに提示すべきオブジェクトの属性やアクションが大きく異なる場合
この場合、先にオブジェクトを提示しようとすると、情報量が多くなり過ぎてUIにおさまりきらなくなる
・オブジェクトが意識されていない、あるいはオブジェクトがひとつだけで選択の必要がない場合
たとえばATMは口座というオブジェクトのみであるためタスク指向UIとなっている(ナビゲーションに並ぶのは「お引き出し」や「お預け入れ」などのタスク)

このように決してオブジェクト指向UIは「銀の弾丸」ではなく、全てのUIをオブジェクト指向UIにすればよい、できるというわけではないことを意識することが大切です。

まとめ

今回はタスク指向UIと比較しながら、オブジェクト指向UIの特徴に触れてきました。
オブジェクト指向UIは決して銀の弾丸ではないものの、上手く適用することができればユーザビリティの改善につながり、ユーザーは直感的かつ創造的な仕事ができるようになると思っています。

本書では実際のオブジェクト指向UIの設計手順についても詳しく説明されているので、それは追ってまとめたいと思います。

(因みにサムネイル画像は銀色のモノを探していた時に見つけた職場近くのますやのオムライスです。とっても美味しいので是非。)

ますや
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