藤沢市にとって村岡新駅は必要か?
東海道本線の藤沢駅・大船駅間に、2032年の開業を目指し新駅建設の覚書を交わしたとのこと。これにFacebookの藤沢コミュニティでは、盛り上がっているのだが、ざっくり8割~9割くらいは建設反対の意見。まあ、だいたい税金で何かを建てるとなると理由も聞かず・考えず「反対」の意見が大半を占めることはいつものこと。主な反対意見として
・コロナで大変なのに税金を使うところが違うだろ
・駅なんて作ってないで福祉に回せ
・大船~藤沢間の短い距離でなぜ駅が必要か?
おおむね、こんな感じ。コロナを理由に関しては、本件は2032年開業予定だから、さすがに、お支払時にコロナは解消されているだろう。よって反対理由としてはかなりピントがずれている。また福祉に関しても、どこまで範囲をどこまで言うかという点はあるが、令和2年度の藤沢市予算を見ると、歳入1480億円に対して、介護保険事業、後期高齢者医療事業、市民病院事業を合わせて約591億円投入しており、歳入に対する構成比は40%も占めていることになる。ここにさらに追加するというも、いささか疑問が残る。投資は全部「無駄遣い」で、それなら「福祉に回せ」理論だと将来に何も残らない。
藤沢市の負担金41億円をどう考えるか?
村岡新駅建設の目的として、鎌倉市の深沢地区開発があるらしく、鎌倉市役所の移転の計画もあるとのこと。ここまで聞くと鎌倉のメリットだらけにもかかわらず、受益者負担の原則を考えれば藤沢・鎌倉が同じ41億円負担はおかしくないか?という疑問が残る。たしかにそうだが、推測ではあるが、藤沢と鎌倉の財政の違いがここに出ているのでは?と考える。
藤沢市令和2年歳入予算 1480億円
藤沢市の負担金 41億円
⇒ 負担率:2.7%
鎌倉市令和2年歳入予算 642億円
鎌倉市の負担金 41億円
⇒ 負担率:6.3%
このように藤沢と鎌倉では歳入額に2.3倍の開きがあるため、負担金額が同じであっても「財布」の大きさに違いのではなかろうか。もちろん41億円は大金ではあるが、簡単に考えると、藤沢の財布に1万円入っている中で、270円を使うかどうかという感じ。果たしてこれが「税金の無駄遣い」とまでいえるかどうか。また本件は一時的な消費ではなく、投資であり、後述の解決の打ち手の1つとするならば、この点も考慮するべきではないか。
藤沢市の将来人口の推移の問題
2018年、藤沢市が発表した下記の資料のとおり、2030年をピークに藤沢市の人口は減少傾向に入ると予想される。もちろん、何も手を打たなかった前提だが、新駅を建設することにより、人口減少の鈍化の手だてとも考えられないか。
駅間が短すぎる問題
お金の話や人口減少の打ち手とかいえば、それとなく説明がつくような気がするが、やはり一番のネックが、駅間の短さに他ならない。おおよそ測定で、藤沢から新駅、大船から新駅は下記のとおり。
★藤沢・大船から新駅まで
藤沢~新駅 2.0km
大船~新駅 2.6km
これは「2キロくらい歩ける距離」という意見があるが、新駅ができてもこの距離だけはは絶対に歩くという人はあまりいないのではないか?それはそうと、この駅間は如何ともし難い。近郊の駅間の距離と比較してみる(いずれも概算測定値)
①東海道本線
東京~新橋 1.5km
新橋~品川 3.7km
②東海道緩行線
東京~有楽町 0.7km
品川~高輪ゲートウェイ 0.7km
横浜~保土ヶ谷 3.0km
③京浜東北線
本郷台~大船 2.9km
横浜~桜木町 1.8km
横浜~関内 2.6km
東京~新橋は歴史的背景があるので別にして、体感で東海道線で一番短いと思われる新橋~品川でも3.7キロあることを考えると、相当短い駅間になることがわかる。一番近しいのは、京浜東北線の横浜~桜木町(藤沢からの距離)、横浜から関内(大船からの距離)くらいだが、果たしてどのようなダイヤ・運用を想定しているか。また、利便性という面で、例えば東京~平塚あたりまで緩行線の計画があり、そのために駅の位置付け(東戸塚や保土ヶ谷)とかいろいろと手だてはあるかもしれない。ただ、いずれにしても現行運用で新駅だけできるとなると、その説明はしてほしいところ。
行政の広報プロセスの課題
この後どうなるかは別にして、どうもこの手の公の発表方法には疑問が残る。過去の事例からしても、脊髄反射的に「反対」「税金の無駄遣い」というお約束の意見が一瞬で支配するのだから、きちんと説明資料なりき記者会見なりを整えて「メリットとデメリットがそれぞれありますが、メリット分で回収できますよ」と順序立てて説明するべきだではないか。もしかしたら、それらは実施しているのかもしれないが、伝わってこないのでは意味がない。
まとめ
仮に「賛成」「反対」の意見を求められるのではあれば、今の伝わってきている情報、調べられる情報では「わからない」としか言えない。前述のとおりに、ある断面ではメリットもありそうだし、藤沢市が41億という金額を負担に関しても「無駄使い」とまで言いきれないと考える。特に藤沢市の人口減少傾向という大きな課題があるのだから、その打ち手として新駅はアリな気もする。無論、他の手段で減少傾向に歯止めをかける方法もあるかと思うが、果たして10年後に実行できるか疑問も残る。ただし、駅間の短さ問題は、緩行線並みの短さをどう解消するかイメージすらつかない。ここはさすがに納得できる説明がほしいところ。ただ最終的には行政も力技で乗り切る気かと邪推する。
この手の意見をする場合、例えば、個人の感覚で「41億円は大金」で考えてしまいがちだが、本件は「公」の話だから、本来は歳入から財政単位で考えるべきであり、その違いは差は大きい。また、コロナ、福祉というキーワードを入れて意見するとそれっぽく聞こえるが、実際のところ、時世や市の財政をみればすぐわかること。このあたり行政で働いている人は優秀な人が多いのに、伝達プロセスのへなちょこさは行政がいつまでたってもイケてないし、ともかく反対としか言われないことは分かっているだろうに。いろいろと書いたが、今時点では「賛成」でも「反対」でもにないが、決して、めちゃくちゃで、ダメな計画ではないと思う。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?