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出会い、変化、そして、喪失 -3冊の本と2つの映画-

最近の私は、「選択」「正しい生き方」「他者と衝突の捉え方」「夢を叶える」「自分らしさ」といったことに迷っていたような気がする。と、いうのも、どうも自分が愚痴っぽくなっていることに、気づいてしまったからだ。

転職して3か月。私は、あることに気づいた。現在の職場のすべての人に関して、一度はをグチ言っている、自分に気づいてしまったのだ。

「あの子は恋愛のばかりしてくる。」「あの人はいつもイライラしている。」「あの人はいつも偉そうに判断ばかりしている」「あの人は、あの人は・・・」


「あれ?間違っているのは、私? いらないのは、私?」


一度その沼にはまってしまうと、もうどうしようもない。静かに静かに、自分が黒くなってしまう。そんな私にとどめを刺すように、周りの人が口々に言う。


「みんな、周りの人の生き方を気にしすぎだ」

「何が目的なのか、わかんなくなってるんじゃない?」

「結局、誰に好かれたいの?みんなに好かれたいの?」


何となく、居心地の悪さを感じていた今日この頃。後ろ暗い気持ちを手放せない自分への不甲斐なさと愛おしさ。そんな私が引き寄せたのが、これらの作品。以下、作品の紹介と、私が強く惹かれた一文(一節を)紹介していきます。

1作目『少しだけ、無理をして生きる』は、経済小説という分野を確立した城山三郎のエッセイだ。彼が、小説執筆のための取材で出会った数々の政界人と関わる中で、「人間の魅力とは何か」を考え、読者に語りかけていく作品となっている。城山さんの本を手に取るのは、神戸で大学生をしていた時に、課題として読んだ『鼠』以来だ。(こちらも歴史好きにはたまらないし、神戸にゆかりのある人は是非読んでほしい。そうじゃなくても読んでほしい。)ちょっとした、人生のエッセンスが、心にじわっと染み渡る。

文芸評論家の小林秀雄さんがどこかに書いておられたことですが、「人は、その性格に合った事件にしか出会わない」のです。「こんな女に誰がした」というように、こういう事件があったから私はこんな女になったんだと普通の人は考える。小林さんは、そうじゃないんだと言う。こんな女だから、こういう事件に出会うのだ。小林さん流の逆説ではありますが、けれど、これは人生の真理じゃないか。

2作目『スロウハイツの神様』は、大人気作家、辻村深月の小説。ざっくり言うと、若かりしクリエイターたちが一つ屋根の下、ぶつかったり慰めたり恋したり、嫉妬したり苦しんだりする話。知人のライターにゴリ押しされて手に取った。彼に勧められるまで辻村さんの小説は一度も読んだことがなかった。別に意識していたわけではないけれど、何となく、綺麗で鋭利な感じかしていたので避けていた。彼は、クリエイターの背中を押してくれる、素晴らしい作品だ、というようなことを言っていた気がするが、私にはえぐみが強かった。深夜3時にひとしきり泣いた。

「家の名前は『スロウハイツ』にしよう。この家では、ゆっくりと時間をかけて、できるだけみんなで会話する。そしてその分、夢とか理想とかは、手早くぱっぱと叶えてね。それで行こう。」

3作目『ピンヒールははかない』は、ニューヨーク在住のライター、佐久間裕美子さんのエッセイだ。この方は、以前webサイト「とうだいもとくらし」のインタビュー記事でお見かけし、ずっと会いたいなぁ、会いたいなぁと思っている人だ。(アイタイ!)

私が強く訴えたいのは、この本は単に「シングル女性の自由な生き方」というような言葉では片付けられないということだ。他人から影響を受けることと、他人に人生を乗っ取られてしまうことの境目がわからなくなってしまっていた私は、風呂に沈みながら涙した。

「別れのあと、わざわざ自分が痛みを感じるようなことを考えて、苦痛を大きくすることがある。でも、クリーンな痛みに集中すれば、辛い気持ちはそんなに長く続かない。どんな感情も、痛みも、90秒もすれば去っていくのだから。」

4作目『キャロル』は、言わずと知れた名作。ケイト・ブランシェットと、ルーニーマーラーのやり取りが強く、美しい。(以下、Netflixを解約してしまったのでうろ覚えですが・・・)

「あなた、やりたいことはあるの?」「絵を描いていたい。才能があるかはわからないけれど。」「あなたが正しいと思うことをやり続けなさい。あなたがそれをやり続けるべきかどうかは、他人が決めることよ。だから、あなたはやりたいことを続けなさい。

5作目の『アイリス・アプフェル 94歳のニューヨーカー』は、現在もご存命の97歳!ファッション・テキスタイルデザイナー アイリス・アプフェルのドキュメンタリー。キュートでパンチの効いた外見と、歴史や知性、工夫とクリエイティビティを感じさせる言葉の数々に痺れる。(こちらもうろ覚えですが・・・)

アイリス「最近は皆同じような服ばかり着ていてつまらない」付き人(?)「時代は変わります」アイリス「私が変える」


環境が大きく変わった人も、そうでない人も、日々に小さな変数が潜んでいて、その度に自分は間違っていないかどうか、不安になってしまう。自分はこれでいいんだ、と信じ込もうとしてしまう。そんな時でも、自分と、周りの人のポテンシャルをゆっくりと見つめ直して。ひっそりとホットミルクを飲んで。


今日も、見知らぬ誰かに、救われるのです。

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