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被災地から考える新型コロナウイルス対策―その①【避難所編】

前回のnoteで、コロナと自然災害の複合的な被害が発生する危険性について述べました。しかし、7日夕方に7都府県に緊急事態が宣言されたように、新型コロナウイルスの感染拡大が進む一方です。

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今後どれくらい感染拡大が深刻になるのか分からない中、災害が起きたら?という不安からの前投稿でしたが、それに加えて対策案もまとめるべきだと考えて、第2回としてnoteにまとめます。
本当は、一回にまとめたかったのですが、長くなりそうなので、今回は避難所編です。

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避難所問題

今までの被災地で開設されてきた避難所では、密閉・密集・密着が揃いやすい状況にあります。発災直後に不特定多数の人が押しかけ、ようやく一人分のスペースを確保して床に毛布を敷いた状態に24時間居る…という状況は極力避けるべきです。

宿泊施設の活用

そのために自然災害が発生した時に適応される【災害救助法】を活用して、ホテルや民宿などの宿泊施設を避難所とするべきだと考えています。
内閣府も同じことを懸念していたようで、4月1日4月7日付けで都道府県に向けて、宿泊施設を活用するようにという通達が出されています。

この新型コロナウイルスの対応にも、軽症者向けに都内のホテルが確保されたというニュースがありました。
同じく、日本財団は関東圏に軽症者向け施設の整備を進めているという発表が。

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一方で、

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のように体制が整わないから受け入れに反対意見が出ています。加えて周辺住民への理解など、ハード面とソフト面の両方の整備には時間がかかりそうです。
こうした事例を踏まえて、宿泊施設と行政などと災害発生前から打ち合わせや協定など、まだ余裕がある内に備えをしておいてほしいと思うのですが、備えられる(予算がある)行政がいくつあるでしょうか。ぜひとも今からの備えをお願いしたいところです。

宿泊施設の活用を解決策の一つとして上げましたが、場所によっては宿泊施設そのものが無いところもあるかもしれません。都市部から離れれば離れるだけ、そんな地域が増えるはずです。被災した自宅との日常的な行き来など被災者の利便性を考えると、避難所と被災地域が近いことにこしたことはありません。


車中泊・テント泊

候補とできるのが、車中泊やテント泊など、被災した自宅でもなく避難所でもない場所です。

熊本地震で活用された事例があります。あの時は、避難所のキャパを超える人が避難する状況にあったことと、余震への不安から建物内に入れない人が一定数いました。そのため、グラウンドにテントが建てられ、大型展示場の駐車場が大きな車中泊避難スペースへと変わりました。

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車中泊が一番多かった益城町のグランメッセでは最大で2,000台以上、推定で1万人が避難したと言われています。テントが立ち並んだ益城町の総合運動公園では、156世帯571名が生活しました。

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キャンピングカーやトレーラハウス

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今ニュージーランドでは帰国者の自主隔離のためにキャンピングカーを設置しているそうです。国内でも、熊本地震の時に避難用の設備として個人の所有者からキャンピングカーを募集するという動きもありました。
トレーラハウスも便利です。熊本地震の際には実際に「福祉避難所」として活用されました。その後、西日本豪雨では仮設住宅として設置。

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牽引すればどこにでも持ってこれる上に、物によっては必要な水回りや寝具など生活に必要なものが整備されているものもあります。車中泊で心配されるエコノミークラス症候群、テントで心配な天候不順や熱中症対策が可能な点が優れています。

更に北海道胆振東部地震の時には、個人の敷地内にトレーラハウスを設置し、それが仮設住宅として認められました。被災した自宅の片付けや、畑作業、空き巣の心配等で自宅から離れられない人も多いため、こうした柔軟な活用はとても被災者にとって助かるものだと考えています。


その他の施設

企業の保養地、大学のセミナーハウス、公務員向け社宅などを含む公営住宅、青少年の家、キャンプ場、などはどうでしょうか。
特に公営住宅等はそのまま仮設住宅として活用できる可能性もあります。ただ、長年空き家だった部屋はカビが繁殖していたり、ベランダが鳥のフンだらけだったり、状態が悪い場合もあります。
実際に仮設などとして活用されるも、部屋の清掃がされておらず入居が後ろ倒しになることもありました。
ある資源を資源として活用できるような手入れも、平時からできる備えです。


親戚や知人宅

政府からの通知にもあるように、親戚宅や知人宅も避難先の選択肢の一つです。実際に台風19号の被災地長野県では、とても多くの被災者がこの選択をしていました。ただ、1週間を超える長期的な避難になると、最初は快く受け入れてくれていても関係が変わってきます。「お世話になっているのが申し訳なくて日中ずっとはいられない」なんて声もあります。
家の広さや設備などによっても、受け入れられるかどうかは変わってくるでしょう。
今のうちから「もし何かあったら避難させてもらえる?」と目ぼしい人に確認しておくと良いかもしれません。これは個人でできる備えの一つです。


寝る場所以外の設備

避難生活が長期化する場合は、避難者が健康を害さないような環境を作る必要があります。
食事・トイレ・お風呂です。

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避難所の食事は大体、大手コンビニなどから朝昼晩とお弁当や軽食が届きます。
これは、一人あたりの食費目安が災害救助法によって定められていて、更に設備や衛生面など現地での調理が難しいことからお弁当など既製品の提供がされています。

ただ、食費目安は過去に何度も地域の実情に合わせて調整されています。設備面や衛生面などが問題なら、キッチンカーの導入や移動販売車にお願いできないでしょうか。(この新型コロナウイルスの影響を受けて、オフィス街や、ショッピングモールなどが営業停止になっているので、経営が厳しいところはたくさんあるはずです)

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避難所のお弁当だけでは栄養面の課題が大きいため、よく炊き出し支援がされています。キッチンカーや移動販売車での提供が公費で賄われれば、その必要もなくなり、炊き出しに充てられていたリソースを他に回すことができるのです。

避難生活が長引くと、決まった食事にもストレスを感じ始めます。好きなときに好きなものを作って食べるということができないのです。
その点、キッチンカーなどであれば保健所の衛生面をクリアしています。
「もう○○の弁当は見たくもない、〇〇自体にも行く気がしない」なんて声を、本当に何度も聞きました。
民間などからの手配が難しい場合は、公的なものを借りてくるのはどうでしょうか。実は、自衛隊も炊飯設備を持っていて、要請に応じて貸し出しも可能なようです。

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お風呂

避難所の横に自衛隊のお風呂が作られたり、近くの入浴施設が広く使えるようになったりすることがよくあります。ただ、一般の入浴施設は、感染拡大防止のために休業しているところも多く、今の状況で大きな入浴設備がマッチしているかはよく考えなければいけません。
お風呂に浸かることを諦めるなら、シャワーユニットをいくつか整備すれば解決できます。ユニットの数が多ければ、使い終わった後に消毒や換気を交代ですることができます。

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また、トイレの整備も重要です。
食べたら出す必要があります。あまり大きな関心を集めませんが、排泄環境はとても重要です。特にエコノミークラス症候群防止のためにも、適度な排泄は健康維持に欠かせないため、きれいで行きたくなるようなトイレ環境を整える必要があります。トイレカーやトイレトレーラーなど、移動式の水洗(に近い)トイレもたくさんあります。
他の行政や企業などからもレンタルできることもあります。数を揃えることも大事ですが、そのクオリティにも気を配ってほしいのです。

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指定避難所への指定を

上記のような避難所の代替案以外にも、各地には集団感染を防ぎつつ避難生活が送れるような施設があるはずです。過去にもたくさん指定外避難所が生まれています。
指定外避難所では、食事の提供など災害救助法に則った避難所支援が受けられません。そのため、必要に応じて早急に指定する必要があります。
しかし、まずどこに指定外の避難所があるのか確認、そこが指定に値するのか、指定すれば行政として管理する必要もあるのでその人的余裕があるのか、など大変な人手が必要になります。
復旧の先導を担う行政職員の大半が避難所運営に割かれてしまうという状況も避けたいものです。指定避難所となった施設を管理する組織が、そのまま避難所運営の舵取りに関わったり、指定避難所でNPOなどが運営を委託されたりという事例もあります。必要に応じて、外部からの応援活用や関係機関に委託するなど、人的リソースの配分も柔軟に対応してほしいと考えます。

追記−対策案

課題編
避難所編
復旧(ボラセン)編
物資/デマ編


最後まで読んでいただいて、ありがとうございます。 少しでも、災害現場の課題が伝わっていたら嬉しいです。 いただいたサポートは、被災地の現在を伝えるための活動資金にさせていただきます!