2018年コンゴパンジ病院取材

「授業もテレビもワークショップも、伝え、扉を開く役割は一緒」立山芽以子さん(TBS New23 ディレクター)

平日夜のTBS系報道番組「NEWS23」。番組内の特集では、国内外の様々なイシューが深掘りして伝えられる。ディレクターとして、日系移民や第二次大戦、アフリカ、開発などに焦点を当て、番組制作をしてきた立山芽以子さんにお話をうかがった。

DEAR News193号(2019年8月/税抜500円)の「ひと」コーナー掲載記事です。所属等は取材当時のものです。DEAR会員には掲載誌を1部無料でお届けしています。

ムクウェゲ医師への密着取材

立山さんは、2016年・18年の2回にわたり、コンゴ民主共和国(以下、コンゴ)の産婦人科医で人権活動家のデニ・ムクウェゲ医師(写真右)*1を取材している。

コンゴでは紛争が長期化し、武装勢力による組織的な性暴力が横行してきた。性暴力被害者の治療と精神的ケアに携わって来たムクウェゲ医師は、紛争を生み、継続させている構造的問題についても精力的に発言してきた。そのひとつが「紛争鉱物問題」である。

コンゴで産出される鉱物資源は、電子機器の原料となり世界中の人々の生活に便利さをもたらしている。一方で、金になるからこそ、産地や鉱山を支配しようという勢力による暴力と人権侵害が絶えない。

立山さんは、知人のアフリカ研究者から医師の活動を聞き、「コンゴの情報は詳しく知らなかったけど、お話を聞いてみたい」と思った。2016年に医師が来日した際には、空港到着時から「密着取材」を行った。講演会や取材、関係団体の訪問など、多くのスケジュールをこなす医師の体力と好奇心に驚いた。この時、医師はアクティブ・ミュージアム(女たちの戦争と平和資料館)も訪問し、第二次大戦中に日本軍「慰安婦」とさせられた女性たちに深い共感を示した。

「この時、ムクウェゲ先生はまだ日本では有名ではなかったので、多くの人に身近なスマホに焦点を当てて、番組*2を作りました。スマホとコンゴと日本、紛争鉱物のつながりに特化しました」と立山さんはいう。

*1 2018年にイラクのヤズディ教徒ナディア・ムラドさんと共にノーベル平和賞を受賞した。2019年には自伝の日本語翻訳版も発行された。今年10月に2回目の来日が予定されている。
*2 TBS NEWS公式YouTubeチャンネルより視聴可能。「内戦が続くコンゴで性暴力と戦い続ける医師(2016年10月5日 NEWS23放送)」

美しい国・コンゴで

2018年には、コンゴの現地取材を行った。立山さんには、自然の美しさがとりわけ印象的だった。そして、「こんなにきれいなところで、こんな酷いことが起きるのかと。雨が降り、緑があり、鉱物資源があり、豊かになるはずの国なのに。豊かだからこそそういう目に合うということもあるが、なぜこんなに大変なことが起きているのか」と感じたという。

医師の活動拠点であるパンジ病院では、患者一人ひとりの状況―例えば、どこから来て、どんな経験をし、今どのような状態にあるのか―をスタッフたちが把握している様子が印象に残った。性暴力被害者への取材もスタッフの協力により行うことができた。

そして、加害者の元兵士への取材も行った。彼らは罪の意識があまりなく、「やむを得なくやった」という気持ちが強いのだという。

「何人かの元兵士に話を聞いたのですが、皆同じような経験をしていました。ある日、村に武装勢力がやってきて、男性はその場で殺されるか、味方になるかを迫られる。女性はレイプされる。男性は武装勢力に加わらざるを得ない。その後は酒や麻薬で麻痺させられ、襲った村でレイプするように命令される、逃げようとすれば殺される。彼らも被害者と言えば、被害者。加害者だけど被害者。そして、自分がやったことは酷いことだと分かっていて、故郷にはもう帰れないと言っていました。お父さんにもお母さんにも会えず、都会のスラムで、仕事もなく、ひっそりと暮らしているんです」。

立山さんが元兵士に「今何がしたい?」と聞くと、彼は「学校に行きたい」と答えたそうだ。10代半ばから、5年も6年も武装勢力に連れ回されてきた。卒業して良い仕事に就きたいと思っても学校に戻れない。

複数の元兵士の話を聞きながら、立山さんは「下っ端の兵士を罰しても仕方がないな」と感じた。「彼らに命令しているのは誰なのか。本来は処罰されるべき人が政治家になったりしている。彼らがのうのう生きている限りは、兵士も『使い捨て状態』なんです」。

この時の取材はJNNドキュメンタリー番組「ザ・フォーカス」でも放送された。

きっかけとしてのテレビ

コンゴをめぐる問題は、論点が数多くあり、番組制作の切り口も多い。スマホ、鉱物資源という切り口、女性の人権、植民地支配の歴史、政治、ムクウェゲ医師の活動という切り口‥。

例えば鉱物に焦点を置くと、女性の人権に興味のある人には「物足りない」と感じられる。限られた時間の枠に全部入れてしまうと何を伝えているのか分からなくなってしまう。どこに焦点を当て、どこを切り捨てるかが、ディレクターの個性であり、最も考えるところなのだそうだ。

「テレビはきっかけ。今の人は興味を持てばあとはネットで調べてくれる。きっかけと割り切っているところもある」と立山さんはいう。

また、

続きをみるには

残り 1,273字 / 1画像

¥ 100

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?