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[読書感想文]さよなら絵梨を読んで

読み終わった後にいろんな解釈ができる話って面白いですよね。
たまたま王様のブランチを観ていた際に紹介されていた「さよなら絵梨」がとても気になり、即買いしてしまいました。
読後感が良くとても面白かったので、なぜ面白いと感じたのか自分なりの考察を残しておきたいなと思います。(物語の紹介はしません。)

※ ここからはネタバレを含みますので、まだ読んでいない方はそっと閉じてください。また、ここで記載している内容は素人の勝手な考察ですので、あくまで一意見としてお楽しみください。

(気になった漫画・本はKindleでポチッと変えるので便利な時代ですね)

目次
・どこまでが(漫画内での)真実か
・爆発の意味
・構成の面白さ
・映画監督は誰か

どこまでが(漫画内での)真実か

この漫画の面白い点は「どこまでが事実か創作かわからない所」にあると思います。この点は、ヒロインの絵梨も漫画内で言及しており、読者(私)に良い混乱を与えてくれました。

事実か創作かで気になる点を列挙すると..

  • 母親が亡くなったのは事実か創作か

  • 絵梨が吸血鬼なのは事実か創作か

  • 大人になった主人公(優太)は事実か創作か

  • 最後の爆発は事実か創作か

他にも気になる点はありますが、ざっとこんな感じでしょうか。

繰り返しになりますが、この漫画の面白い所は「事実と創作の区別がわかりづらい所」にあると感じており、上記のそれぞれが事実だとしても創作だとしても物語として成立し得る点がすごいなと感じました。読んだ人それぞれに解釈が委ねられている感じがいいですね。

そんな中で、じゃあ私はどう思ったのかというと「全部創作(次点で母親の死以外創作)」と読ませていただきました。

爆発の意味

私は爆発を単純に「爆発オチ」、つまり「映画の終わり」という風に捉えました。
最初の爆発と最後の爆発って、爆発の迫力に大きな違いがあるんですよね。

  • 最初の爆発は中学生が頑張って作ったような手作り感。

  • 最後の爆発は仕事で映像制作やっている人が作れるようなハリウッド感。

この違いが、爆発オチが駄作にならない工夫だったのかなと思います。
この対比が時間の経過を感じさせ(優太は映像制作系の仕事をしていたんだろうなぁ)、絵梨が吸血鬼として生きていることに説得力を持たせているような気がします。(それによって読者は事実か創作か、余計混乱してしまう。)

普通は爆発オチで漫画が終わろうものなら大パッシングですが、爆発に味付けする事で2回目の爆発に様々な解釈の余地が生まれますよね。すごい。

構成の面白さ

悪口じゃないですが、この漫画内のストーリー自体って結構よくある話だと思うんです。

  • 前半:家族の死別まで

  • 後半:恋人との出会いから死別まで

家族や恋人との別れなんて、非常にベタなテーマじゃないですか。笑(ウエストランドほど文句言う意図はないです)

ですが、そこに爆発という創作要素(最初の爆破は流石に創作でしょう)を挟む事で(くどいですが)事実と創作が曖昧になり、ベタなストーリー物を読んでいる感覚はなくなっていきます。

加えて、この物語は生徒の登場も結構良い味だしていると思います。
私が読み進めた流れだと..

  • 最初の爆発まで:生徒視点

  • 生徒の登場~絵梨の死:優太視点

  •  暗転〜最後の爆発:漫画を読んでいる自分視点

読み進めていくうちに視点がどんどんメタになっていく感覚です。生徒の感想が入る事で読者の視点が切り替わるように感じ、面白いなあと思いました。

映画監督は誰か

最後にこれまでのまとめとして、この映画監督は誰かを考えたいと思います。
私の考察ではこの話は「全部創作」なので、この映画(冒頭から最後の爆発まで)
は「大人の映画監督(≒藤本タツキさん)」が作った映画と感じました。
作内では優太が映像を撮っていますが、優太は主演俳優である考えています。

(この漫画が終わった後にクランクアップで喜んでいる優太と絵梨がいてほしいという願望も込みですね。)

素人分析ですが..
長方形のコマが絵梨の死あたりまでは自撮りっぽいのに、最後の絵梨との再会は第三者視点っぽいんですよね..。ここで全部創作なのかな、じゃあ監督は別にいるのかなという風に感じました。

非常に解釈の余地がありつつもどの解釈でも面白いって素敵です。
良い作品に出会えました!


motoshiandromedaさんより「爆発」をテーマにした画像を使用させていただきました。

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