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キンの卵①

 小説というほど大袈裟なものを求めている訳ではありません。
 ただ、物語じゃないと伝わらない妙ってあるような気がします。
 ゴルフを愛する多くの人に、子どもを愛する多くの人に、何かが伝わることを願って、稚拙な試みに挑みたいと思います。



 かつて、2016年ゴルフ規則には、
 数あるスポーツの中でゴルフ競技の大きな特徴の1つは、通常、レフェリーが立ち会わないということです。それは、ゴルフがフェアプレーを重んじるスポーツであって、
「ゴルファーはみな誠実であり、故意に不正をおかす者はいない」
ということが基本的な考え方になっているからです。また、ゴルフゲームには、予測できない事態が生じたが適用できる規則がないときは、公正の理念に従って解決してきたという歴史的風土があり、そこにゴルフ規則の本質と精神をうかがい知ることができます。
 もちろん、ゴルフ規則書の中にも罰則はありますが、それはゴルフ規則を知らなかったり過失によってその処置を誤ったプレーヤーに対して、競技全体の公正をはかる観点から決められたものです。ですから、ゴルファーの一人ひとりがゴルフ規則を知って自主的に規則を守るようにすることが大切なのです。
と記されていた。
 1744年から13条の明文化された規則を備え、15世紀からさまざまな時代とともに愛され続けて来たゴルフ。
 ゴルフがもたらす恵みに私たちは愛を持って応えられているのだろうか。


 耳には大きく伝わる籠ったような
 ドックン、ドックン、ドックン
という三拍子。
静かにしててほしいミーヤの心とは裏腹に、大きなストロークの拍動が騒ぎ立てる。

 ダンロップパースリーコースの10番ホールは小学生女子が競技で使う白マークからはグリーンセンターまで80ヤードの打ち上げホール。 ティーイングエリア右側に設置された青い枠線で縁取られた白色の案内板には、
 5.6m(6ヤード)の打ち上げです
 90ヤードの積もりでプレー
 されると良いでしょう
と青字で書いてある。

 ミーヤが放ったピッチング・ウエッジでの第一打はグリーンセンターに力強く飛び出したが、少し左にカーブしながら勢いを弱めることなく、みんなの視界から消えた。
 その行方がカップに近付いたのか、グリーンからこぼれたのか、レッドペナルティーエリアまで行ってしまったのかは、ここからはそれぞれの経験知でしかわからない。
 同伴競技者のアンの球が右の木に当たってコース内に戻って来たので、アンはグリーン手前からプレーを続け、アンと仲良しのマーカーをつとめるレクシーはアンのプレーを見守り、ミーアだけがグリーンまで上がって来た。

 直径42.67ミリの白い球がそこに存在することを願いながら、グリーンや左ラフに何度も視線を向けたミーアだったが、アンとレクシーが仲良くグリーンに向かって上がって来るその前に、左のポケットから
 ダンロップZ-star ボールナンバー42
をグローブをして指紋が付かない左手で取り出し、風見鶏のようにかぶりを振った後、レイヤーがその存在価値を示すかのように卵を産んだ。

 ミーヤは本来4打目になるだろうそこからの少し長めのパットを難なくカップに寄せて「お先」と2人に言ってからホールアウトした。ミーアのマーカーのアンはミーアのスコアカードの10番ホールに
「3」
と青いペグシルで書き、「ナイスアプローチだったね」と言ってくれたレクシ―にサムアップで応えながら、切り取り線からこちら側が自分のものとなるマイスコアにも
「3」と書いた後、3人はグリーン左奥に置いていたキャディーバッグを担いで次のホールに向かった。

 ミーヤはそこからパープレーとして生き返ったはずなのに、その日参加したジュニアトライアルという小学生が参加できる月例競技で3位に入り、お父さんに「よく頑張ったな」と褒められたのに、ミーヤの心は晴れなかった。
 それどころか、
 あなた、ほんとにそれでいいの?
という声が聞こえ始めた。

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