性的人間

性的人間 大江健三郎
 
「性的人間」 
性的少数派の嗜好の追及を描いた作品。最初の妻を自殺に追い込んだ嗜虐的趣味のある青年が痴漢行為に傾倒する。孤独感を抱える退廃的な作風を更に冷めた目線で読んでしまうのは世代が異なるからか独り善がりな印象を受け好みではなかった。

「セブンティーン」
現代において確固たる主義や思想を持ち声高に発言する人は多くない。主人公の青年は最初左翼だが、彼の政治意識は観念的なものにすぎない。不安定な10代。ある日右翼の党首の演説を聞いて右翼活動にのめり込む。不吉な変身の瞬間。死を以て人を脅迫し自ら死に飛び込む右翼青年を形付けるのは右だけでなく左だけでもなく日本全体である。言わば万人の実存を見つめた作品。実存と言う深みでは、政治的な道徳的な価値判断は存在しない。

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