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常務理事就任にあたって:ブロックチェーンの適用拡大に向けてのNEXCHAINへの期待

この度、企業間情報連携推進コンソーシアム、NEXCHAINの常務理事を拝命致しました日立製作所の長 稔也です。これまでの私のブロックチェーンへの取り組みを踏まえて、NEXCHAINの更なる拡大に向けての今後の対応について考えを述べたいと思います。


これまでのブロックチェーンへの取り組み

私は2016年にLinux Foundationが組成したブロックチェーンのOSSプロジェクトであるHyperledgerに、その立ち上げ期から関わってきました。日立製作所はPremier MemberとしてHyperledgerに参画しており、私はGoverning Board(理事会)メンバーとして、Hyperledgerの活動をサポートしてきました。当時からブロックチェーン技術への期待値は非常に高く、日立でもHyperledger Fabricの開発コミュニティへの貢献を通じて、ブロックチェーンの適用拡大に取り組んできました。

それと並行して、ISOにおいてもブロックチェーン/分散台帳技術についてはTC307委員会が組成され、標準化に向けての議論が行われており、私はその国内審議委員も務めてきました。

一方、私は企業内定年を控えておりましたので、それらの役割は2021年3月を以って退任しましたが、長年の活動を通じて、ブロックチェーンに対する期待だけでなく、課題についても理解してきたつもりです。ブロックチェーンは金融業界を皮切りに、徐々にその適用範囲を広げてきています。しかしながら、技術的に発展途上にあることもあり、ブロックチェーンに関連するプロジェクトには、その期待値に比べると、決定的な成功事例は決して多いとは言えません。安全性を担保しながら、情報の透明性を高めるブロックチェーン技術の価値は誰しもが認めているにもかかわらずです。

図1:ブロックチェーンの適用範囲の拡大

NEXCHAINとのこれまでの関わり

そうした中で、ブロックチェーン技術を活用するNEXCHAINについては、その組成時から活動に関心を寄せるだけでなく、今後の異業種連携を進める上で有効な仕組みとして、陰ながらバックアップもしてきました。今回、常務理事就任により、より表立った活動の中で、今後のNEXCHAINの拡大に寄与していきたいと考えています。

図2:ブロックチェーンで実現する異業種連携例

ブロックチェーン関連プロジェクトの共通的な課題

ご承知の通り、ブロックチェーン技術は中央集権を排し、情報を分散保持するということが特徴ですが、それを実ビジネスで利用していくためには、ステークホルダー間の意思疎通と、事前の合意形成が不可欠です。特にそれが業種をまたがるものであれば尚更です。

ブロックチェーンのプロジェクトを成功に導いていくためには、最初から大々的な仕組みを実現しようとすると、そうした合意形成が十分に行われていなかったり、あるいは思わぬ法的な規制が存在することが見逃されてしまう場合があります。よって、最終的なTo Be像を描いておくことは重要だとしても、どのように段階的な機能拡張を図っていくかをちゃんと描いておくことは極めて重要です。即ち、合意形成は将来像、そこへ至る道筋についても行われていなければならないということになります。

NEXCHAINが果たすべき役割

では、そこでNEXCHAINが果たすべき役割は何でしょうか。企業間情報連携を推進するプラットフォームの提供はもちろんですが、それに加えて、企業間の合意形成のファシリテーターとしての役割も重要だと考えています。参加企業間のコミュニケーションを活発化させることで、新しいビジネスのアイデアが生まれるだけでなく、見逃されがちな制約事項の把握が可能となり、機能実現に向けた道筋は形成されやすくなるはずです。

既にNEXCHAINではさまざまな活動を通じて、参加企業間のコミュニケーションの活性化を推進していますが、更なる発展のためには、参加される企業のより積極的な取り組みと、その前提となるタイムリーで効果的な情報の受発信が求められると思います。私としては、これまでのブロックチェーンに関して様々な情報の発信を行ってきた経験を活かし、微力ながら皆さんが「これはいい」、「これは面白そうだ」と思える案件をコンソーシアムとして生み出していくお手伝いができればと思っています。

今後ともよろしくお願い致します。


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