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#44 ゆきこさんとの対談〜学びの多様化学校って?〜

今年度から学びの多様化学校(いわゆる不登校特例校)に勤務をしている。
先日、ゆきこさんと対談させていただく貴重な機会を頂いた。テーマは「学びの多様化学校について」。Voicy公開収録も兼ねて行わせていただいたので、興味がある方は聞いてみてもらえると嬉しい。
学びの多様化学校ってなんだ?ということや、今考えていることについて話したが、こちらにも少し書いておこうと思う。



学びの多様化学校(いわゆる不登校特例校)って?

学びの多様化学校とは、

不登校児童生徒を対象とする特別の教育課程を編成して教育を実施する学校

https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/seitoshidou/1387008.htm

のことである。これだけではイマイチ分かりづらいと思うので例を上げると、
・教科を新しく作る
・教科ごとの授業時数の組み替える
・内容を入れ替えたり移動したりする
・総授業時数を削減する
・1単位時間の授業時間を削減する
などのことが可能になる。

校種は小学校〜高校とさまざまで、実際の運用については学校によって大きく違う。見に行く機会があれば、ぜひ足を運んでみてほしい。

自分のクラスでどう対応する?

いわゆる不登校のお子さんは増え続けている。その数は2022年度の統計で29万9千人(児童生徒の問題行動・不登校調査/文部科学省)。少子化が進んでいることを考えると、とんでもない増加傾向である。コロナの影響がないとは言わないが、それまでも増え続けていたことを考えると、それだけで説明できることではないだろう。
不登校の原因を一括りに説明することはできないが、言えるのは「間違いなく増えている」ということであり、それを黙って見ていてはいけないということだ。学校は問題意識を強く持ち、変わるべきところは変わらなくてはならない。教室に入れる子にはいろいろな教育手法を、でも入れない子は別のところへ行ってもらうという教育のあり方は絶対に許されない。それは分離教育の考え方そのものであり、多様な人が共に生きる社会から離れていってしまう。

不登校児童生徒の人数がが減少に転じることを目指すことは間違っていないのだが、ここにも落とし穴がある。「不登校をなくそう」という思いが、「本人の意思に反して、不登校の子を学校に来させようと過剰に働きかけてしまう」という間違った方向に進んでしまうケースだ。極端に聞こえるだろうが、実際にこういうケースはかなり多い。

実態として「学校に来ること」をゴールにして子どもや保護者と関わってしまっていることが多いように感じる。しかし、不登校対応にそのようなゴールや目標を設定すべきではない。筑波大学医学医療系社会精神保健学研究室の齋藤環氏は、ひきこもりからの出口について「自分自身の状態を肯定的に受け入れ主体的にふるまえるようにようになること」と述べている。もちろん、「登校してほしい!」という気持ちはわかるが、むしろ安心して家にいられる環境を整えた方が良い場合も多いのだ。

私自身、不登校傾向のお子さんを担任した際、家庭訪問の中で、つい「明日、待っているね」という声かけをしてしまうこともあった。すると、次の日は頑張ってくるのだが、その反動も大きい。原因はさまざまだが、今考えてみれば、むしろ家に安心している時間を大切にしてあげればよかったと反省している。

年度替わりなどに頑張って学校に来ていたり、急に学校に来るペースが上がった時も気をつけて見る必要がある。教師は「頑張って来てるね!この調子で!」と前向きに捉えがちだか、一度立ち止まって考えることも必要だ。張り詰めた糸はプチンと切れる。ポジティブなブレーキをかけてあげるのも、教師の役目なのだと感じる。

ケースにもよるが、不登校のお子さんがいるときに登校刺激をむやみに与えることは避けた方が良い。むしろ、安心して家にいられるための環境調整をし、保護者とのつながり、子ども本人とのつながりを作ることを大切にしてほしい。

分ける・隔てるではない

文部科学省は学びの多様化学校を300校まで増やすことを目指している。それ自体を否定するつもりはないが、危惧しているのは「分ける・隔てる」ことが進んでしまわないかということだ。「いわゆる普通の学校に馴染めない子は学びの多様化学校へ」つまり、「適応できない人は排除して違うところでやってもらおうという考え方の社会になってしまうのではないか?そうなってはいけない。」というのが私の強い思いだ。

そう考えると、むしろ全ての学校が学びの多様化学校であるべきではないだろうか。同じように特例の教育課程を組むべきだというのではなく、全ての学校が、多様な全ての子どもに開かれていなくてはならないということだ。決して分ける・隔てるという考え方に傾いてはいけないと言うことを強く主張しておきたい。

ゆきこさんの“聞く”力

今回対談をさせていただき、ゆきこさんの“聞く力”を改めて感じた。“聞き方”という技術面だけでは語れないことだと思う。聞き方のポイントについて、「興味関心に正直に聞いている」とゆきこさんは言う。簡単そうに聞こえて、これが難しい。気をつかいすぎてきけなかったり、そもそも興味が湧かないなんてこともある。日頃からいろいろなことに興味を持って生きているからこそ、相手の言葉を引き出す聞き方ができるのだと思う。ゆきこさんは“私”の範囲が広い人なのだと感じた。

やはり、“何をするか”よりも“どうあるか”を大切にしていきたい(もちろん、その上で何をするかは大切)。素敵な生き方をしているゆきこさんとこうしてお話できたことを大変嬉しく思う。ゆきこさん、本当にありがとうございました。


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