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キラリと光る個性が生まれる瞬間

長男ゲンが2、3才くらいの頃
人気のパン屋さんで、当時大好きだった、アンパンマンのパンを買った。
朝食のテーブルに並べ、みんなでいただきますをし
おいしいねぇと言いながら、ゲンを見ると
ゲンは食べずにじっとパンを見つめたまま、動かない。

「どうしたの?食べないの?」
と聞くと
「だって、アンパンマンがかわいそう」と言ってポロポロ泣き出した。

大好きなアンパンマンだから食べることができない
しかも、かわいそうという言葉に驚いた。

なんて、繊細な感受性を持っている子だろう。
すごい、素直に感動した。

「アンパンマンはお腹が空いている人に食べてもらうことで
アンパンマンも一緒に元気になるんだよ。
ゲンが食べてくれると、アンパンマンはうれしいんだよ」と言ったら
しばらく泣いた後、ようやく食べてくれた。

パンとアニメが異なることがそれで理解できたのかどうかは不明だけれども
それ以来、アンパンマンパンで泣くことはなかったと記憶している。
けれど、好んでは食べなかった。

ひとしきり泣くゲンを横目に、
お構いなしの次男ショウは、パクパク食べて、ニコニコ満面の笑顔になっている。
ショウもアンパンマンが大好きだ。

面白すぎる!
正反対の二人だ。

子育ては難しい、けれど面白い!
マニュアル通りにいくわけないし、マニュアルなんてない。
一人一人違うし、大人も毎回冷静に対応できる訳ではない。
子どもが発することを見逃さず、そばにいる大人が面白いと感じ取る能力が重要だと思う。

夫も私も、単純だ。
だからか、超個性派ゲンを面白く見守れる、親でいられたのではないだろうか。

ゲンはその後も、あらゆる場面で事件を起こしていく。
その度に、周りの大人もゲンの言動に感動したり、泣いたり、大笑いすることになる。

キラキラ光る個性が、また一つ誕生した瞬間に立ち会えた。
子育てはゆっくり楽しい仕事となっていく。

新堂きりこ






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