クリスマスにはベートーヴェンの第九を(前編)
すっかり寒くなり、クリスマスも近くなりましたので、クリスマスエピソードをエッセイにします。
タイトルは「ティファニーで朝食を」的なノリで付けました。全然そんな事はない?😅
ではでは、どうぞ!
突然のうつ病発症
私が人材派遣会社で営業をしていた頃、派遣していたスタッフが無断欠勤で急に派遣先に来なくなった事があった。
もともと凄く明るくて人柄もよく、仕事ができるスタッフだっただけにとても驚いた。
本人への電話は出なかったが、メールでなんとか本人と連絡を取ることができ、カフェで話をする事になった。
会うと、とても明るい人だったのに、信じられない程に暗い顔をしている。
その日はとても会話ができる状況ではなかったので、私が一方的に話しかけ、少し元気を取り戻して貰って終わった。
派遣スタッフが無断欠勤した場合、契約が終了になる場合が多いのだが、その派遣先は回復を待つとおっしゃってくれたので、私は引き続きそのスタッフのフォローを行う事になった。
そのスタッフは仮に山口さんとしよう。
2回目に会った時、山口さんは少し元気を取り戻し、ある程度会話ができるようになっていた。
会社に行けなくなった理由としては、みんなが期待してくれるのは嬉しかったけれども、それが凄いプレッシャーになっていたからだったとの事。
彼女を労い、自身の仕事の失敗エピソードや最近彼女にフラれて辛かったというエピソードを話し、自虐ネタで必死に励ました。
すると山口さんも自身の事をカミングアウトした。
山「実は、仕事の事だけではなく、プライベートでも辛いことがありまして、、、」
ニ「何があったんですか?」
山「私には婚約者がいたのですが、結婚寸前で婚約破棄になってしまったのです。それもあって辛い事が重なって、糸がプツンと切れてしまったんです。」
ニ「そうでしたか。それは辛かったですね。」
どうやらプライベートでの辛い事と仕事のストレスが重なり、鬱状態になってしまったようなのだ。
できる限り山口さんの話に共感をして、ひたすら傾聴して励ました。
すると山口さんはかなり心を開いてくれたのか、ある質問を私にして来た。
山「ニューノマンさんは、音楽好きですか?」
二「音楽好きですよ。」
山「もし良かったら、日本フィルハーモニーのコンサートがあってベートーヴェンの第九やるんですけど、一緒に来てくれませんか?その彼と行く予定だったんですが、こんなことになってしまったので、、、」
ベートーヴェンの第九と言えば、その演奏時間がCDアルバムのMAXの録音尺になった事で有名な楽曲だ。
演奏時間は74分。
確かに私は音楽は好きだが、それはJ-POPとかでクラシックにはさほど興味はない。そして、コンサート日は12月23日。
いくら彼女いなくて予定が無いとは言え、興味のないコンサートに、病んでいる人と一緒に行きたくはない。私は断ることにした。
「いやー、せっかくのお誘い有難いんですが、そんな大切なコンサートに行くわけにはいかないですよ。是非別のお友達をお誘い下さい。」
そういうと、山口さんはうつ向き始め、今にも死にそうな顔をし始めた。
沈黙が続く、、、
まずい、、もうこりゃ腹を括るしかないか、、、
「分かりました!それなら行きましょう!ベートーヴェン!いいじゃないですか!楽しそう!」
「本当ですか?嬉しい!ありがとうございます!」
山口さんは笑顔を見せた。
こうして私は、人殺しにはなりたくなかったので、一緒にベートーヴェンのコンサートを鑑賞しに行くことになった。
しかも、クリスマスイブイブの日に。
こいつに小銭でもめぐんでやろうか。そう思われた神のようなあなた!大変ありがとうございます(ノ∀`*)