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魂の重さは何グラム?

今回も、この世界の真の法則を知る、その全てを理解する、外界の全てを知ることは己の内面世界を知ることでもある、ということで純粋な知性の世界、形而上学/形而下学の世界を探究する瞑想を行なっていきましょう。

これまで“存在しているはず”なのに全く見えない・観測できない「ダークマター」というものがある、そしてそれは遠くの銀河から我々のいる天の川銀河まで正体不明の質量が存在しているということを紹介しました(*1, *2)。今回は「こんなものに重さがあるのか」というような意外な研究を紹介します。

タイトルにもありますが読者の皆さんは“魂の重さ”についてどう思いますか?何らかの情報を知っている人もいるかと思いますが、一般的には“魂の重さ”とは聞いたことのない話です。

まず“魂”というものが存在するかどうかについては明確な科学的根拠は今のところ示されていません。多くの人は“あるだろう”と思っている、但し直接“見たり・触れたり・話したり”したことはない、というところが一般的な概念でしょうか。もちろん中には人の魂を見たり、話をしたりできる能力者もいるかもしれませんが。

“魂”とは一般的に目に見えず、形も定まらず、存在すらも認識できない、“形のない世界で知覚できるもの”つまり“形而上学”で扱われる事象と言えます。そして“重さ”とは皆さんもよく知っているもので、グラム・キログラム・トンといった明確な単位が存在し、宇宙の何処へ行っても“質量”は不変であり、誰が測定しても同じである科学的な単位、つまり“形而下学”的な属性を持つものです。今回は“形而上学”と“形而下学(自然科学)”をつなぐ研究の紹介となります。

・医学的な“魂”の位置付けとは?
まず医学的な観点でお話しすると、“魂”とは明確に定義されていません。当然ながら教科書においても“魂の重さ”や“魂の大きさ”など記述されているのは見たことがありません。
魂に関する記述があるとしたら“死に直面した人”と対面するに当たり、“その人の魂/尊厳/スピリチュアルな側面を尊重し、受け入れて接しましょう”というやや漠然とした表現で記載されるくらいです(*3)。

・医学的に“魂”の研究に踏み込めない理由
まず第一に“科学的根拠が示せない”ということが挙げられます。例えば「レントゲンで撮影できたり」、「超音波で画像を描出できたり」、「心電図のような波形を観測できたり」したならば医学的研究も盛んに行われたかもしれませんが、残念ながら「再現性のある客観的な観測方法が無い」というのが大きな理由と考えられます。「形而下学が主体の西洋医学」では「形而上学的な領域にある魂」を扱うのは難しいということです。

もう一点は宗教・思想的な通説が混在してしまうことが問題点として挙げられます。これは各宗教の宗派や個人間でも思想が異なり、「話し合ってまとまるものではない」上に「誰もが納得するような科学的客観的証拠も示せない」という問題点は多くの人の想像に難くないと思います。これらの観点から、「医学的には魂についての探究はあまり進んでいない」と言っても良いでしょう。

・“魂”の計測に挑戦した医師
18世紀〜19世紀にかけてアメリカ・マサチューセッツ州にダンカン・マクドゥーガル(Duncan MacDougall)という一人の医師がいました。この医師がたった6人ではありますが、臨死の患者の状態を詳細に観察し“奇妙な体重変化”を発見した研究を紹介します。

タイトルは“Hypothesis Concerning Soul Substance Together with Experimental Evidence of The Existence of Such Substance(魂の物質的側面に関する仮説とその存在の実験的証拠, *4)”で1907年に確固とした学術雑誌に掲載されたものです(図1)。

マクドゥーガル医師がどのような手法を用いたかというと、図2のような天秤のような秤(正確な秤の図はありませんが、用語からこのタイプと推測)を用いてベッドごと被験者の体重をグラム単位で正確に計測したと思われます。1907年頃なので精密機器は無い時代ですがこのタイプの天秤でもシンプルな分、非常に高精度に重さの変化を検出可能であることは知られています。以下にマクドゥーガル医師による詳細なレポートを記載します。

・1例目(引用符の部分はほぼ原文意訳)
“結核で臨死状態の男性、死の3時間40分前から天秤で重量の観察が行われ、臨終の瞬間までほとんど体動はなかった。呼吸や汗による水分の蒸発は1時間に1オンス(約28.4グラム/時間)の体重減少で検出された。それまではゆっくりと一定の速度で体重が減少(約0.5g/分)していたが、男性が死亡した瞬間、数秒のうちに3/4オンス(約21グラム)の体重減少がみられた。腸の動きは無く、膀胱からの尿の排泄は1〜2ドラム(約1.8〜3.5グラム)ほどあった。しかしこれらがゆっくり蒸発したとしても数秒のうちに21グラム減少したことを説明することはできなかった。呼吸も検証したが21グラムの体重減少を説明することはできなかった。魂の物質?それ以外に説明できるものがあるでしょうか?”

・2例目
“同じく結核で瀕死の男性。彼は臨死の4時間15分前から計測が開始された。最初の4時間は1時間に3/4オンス(約21グラム/時間)の割合で体重が減っていった。1例目より呼吸がゆっくりであったことが体重減少速度の違いと考えられた。最後の15分間一部の顔の筋肉が痙攣していたが、死が訪れると筋収縮は止まり、そのとき体重が0.5オンス(約14.2g)減少した。最後の約15分で体重は約46グラム減少した。それまでの4時間は約0.35グラム/分の減少であったのに、最後の15分では約3グラム/分と大きな差があった。”

・3例目
“3番目の症例である結核で死亡した男性は、死亡と同時に 0.5 オンス(約14.2グラム)の体重が減少し、数分後にさらに 1 オンス(約28.4g)の減少が見られた。”

・4例目
“4番目のケースでは、糖尿病性昏睡で亡くなった女性だったが、残念ながら私たちの体重計は微調整されておらず、私たちの研究に反対する人々によるかなりの干渉があった. 死の前の時点に戻すのに 0.5 オンス(約14.2グラム)の重りを必要とした。しかし私はこのケースの測定結果にはあまり価値がないと考えている。”

・5例目
“5 番目の症例は結核で死亡した男性、説明できない約8分の3オンス(約10.6g)を必要とする秤の傾きを示した。これは死と正確に同時に発生した。減少した分の重りを乗せて釣り合わせると、奇妙なことに、15分間釣り合ったまま動かなかった. 8分の3オンス(約10.6g)の低下を説明することは不可能だった。その減少は非常に突然ではっきりとしたもので、秤は大きな音で下のバーに当たった。ケースのスケールは非常に敏感にバランスが取れていた状態だった。”

・6例目
“6番目で最後のケースは公正なテストではなかった。 患者はベッドに寝かされてからほぼ 5 分以内に死亡し、私が秤を調整している間に死亡した。実験時にとった私のメモは、1.5オンス(約42.5グラム)の損失を示していたが、さらに実験は非常に急いでいたと言われるべきだった。体重計の振動は完全には止まらなかった。他のテストでこのようなことは無かったが、この1.5オンス(約42.5グラム)の見かけの体重減少は、秤の重りの偶発的な移動によるものかもしれない。”

・6例のまとめ
ここまで得られたデータをまとめると図3の表のようになります。6例のデータの中でマクドゥーガル医師自身が「正確ではない」と言っている4例目と6例目は参考値として括弧書きで記載しています。
彼の実験は当時ながらも細部まで検討されており、“排尿/排便”はもちろんのこと、“呼吸による水分蒸泄”、“体動/筋収縮の影響”、といった重量に関与しそうな要素はほぼ考慮に入れられています。秤の精度も1〜2gの感度であったとのことなので、10g以上の変化は誤差とは言えないでしょう。

彼の考察では“あらゆる体重減少の経路を網羅したが、既知のものでは説明できない。何らかの計測可能な物質が死の瞬間に人体を離れることをこの実験は示している”と説明しており、やはり“魂”あるいは“肉体の死後も人格を継続または持続させるもの”と定義しています。

・“魂の重さ”の平均値の真の値の統計学的推測
これらから臨死の際に身体から離れるものが“魂”である前提で、 “魂の重さ”の平均値は「15グラム」という計算結果になります(図3)。これは大変興味深い結果です。ただしかし、科学者らからは「たったの4例で断言すべきではない」という反論も得られるかもしれません。そこで、統計学的解析を行ってみました(図4)。

図4に記載されているようにサンプル/母集団の標準偏差/分散を求めて“魂の重さの真の平均値”を求めてみました。結果として魂の重さの平均値の95%信頼区間は7.6〜22.4グラムである(95%の確さでこの範囲に真の値がある)ことが言えます。

もし魂の重さを信用しない科学主義者がいたとしたら「魂の重さの観測値は平均15グラムで95%信頼区間は7.6〜22.4グラムです。もし異論があるのなら減少した重さの正体や反証データを示してください」と言えばおそらく反論できる人はいないと思われます。なぜなら、私も数百例の方々を看取った経験がありますが“臨終の瞬間に精密に体重を測ったことは無い”ですし、“現代においてそういう経験がある医師はまずいない”、つまり“誰も経験が無いから議論できない”からです。

・この研究の反響
この研究はなんと当時のニューヨークタイムズ紙に取り上げられました(図5)。やはり一般市民にとっても興味を惹きつけるような題材であったのでしょう。エビデンスレベルという概念も無い100年以上前の実験ではありますが、一流紙の記事に取り上げられるということは驚くべき注目度であったと考えられます。

・その後の解析について
マクドゥーガル医師の研究の後は、残念ながら調べる限り同様の実験の報告は見られませんでした。技術的な面での難しさは全く無いのですが、やはり亡くなる瞬間の人の体重を計測する実験というのは倫理面、遺族感情の面で実行が難しいことが予想されます。

人の代わりに羊を用いて臨死の際の体重変化を観測した興味深い研究もあります(*8)。羊の場合は“予想に反して体重が増加した”とされています。図6に示すのがその一例ですが、矢印に示したように“不自然に”体重が増加しているのが分かります。しかも、“6秒間だけ74グラム増加してまた直後に戻った”とのことです。

この研究では計12体の動物を用いて実験を行っていますが、“1〜6秒間の一過性の、18〜780グラムの体重増加”が見られたと記しています。もちろん、“呼吸・排泄・体動・蒸発等では説明できない現象”とされています。

まとめると以下のようになります。
・人間が死亡する瞬間、原因不明の体重減少が起こる
・減少の平均値は15グラム(95%信頼区間:7.6〜22.4グラム)
・人の場合は数秒のうちに急に10〜20グラム軽くなり、戻らない
・この減少は医学的に既知の原因(呼吸/排泄/蒸発等)では説明できない

・羊の場合も死の瞬間原因不明の体重変化が起こる
・羊の場合は “1〜6秒”、“18〜780gの体重増加”が起こりすぐに戻る
・人間と動物では起こる現象が異なっていた

死の瞬間、水分や排泄物などの影響を全て除外した上で、肉体から離れたものは何だったのでしょうか。“魂”というもの以外に何か考えられるでしょうか。“魂”が重さを持つのなら何で出来ているのでしょうか。我々がこの世界の全てと考えている“標準模型(*9)”の素粒子である電子、クォーク、ニュートリノ、これらで魂を合成できるのでしょうか。それともこのモデルに無い科学的に知られてない“何か”があるのでしょうかこれらの答えは科学を超えた“形而上学”にありそうです。“魂”の栄養でもあり、“魂”の運動でもある“瞑想”をしながら人間の秘密を探究していきましょう。

(著者:野宮琢磨)

野宮琢磨 Takuma Nomiya  医師・医学博士
臨床医として20年以上様々な疾患と患者に接し、身体的問題と同時に精神的問題にも取り組む。基礎研究と臨床研究で数々の英文研究論文を執筆。業績は海外でも評価され、自身が学術論文を執筆するだけではなく、海外の医学学術雑誌から研究論文の査読の依頼も引き受けている。エビデンス偏重主義にならないよう、未開拓の研究分野にも注目。医療の未来を探り続けている。

引用:
*1. 存在しているはずなのに科学的に観測できないもの
https://note.com/newlifemagazine/n/n594654ee1eb3 
*2. 私達の周りにもあった、未知の物質:ダークマター(2)
https://note.com/newlifemagazine/n/ned28052f0b6b 
*3. トータルペイン(全人的苦痛)~心のケア~
https://ganclass.jp/treatment/pain/pain02.php 
*4. Duncan MacDougall, Hypothesis Concerning Soul Substance Together with Experimental Evidence of The Existence of Such Substance. Journal of the American Society for Physical Research, Vol1-5, 237-275, 1907
*5. miniwebtool 標準偏差電卓(高精度)
https://miniwebtool.com/ja/standard-deviation-calculator/ 
*6. ke!san 平均値と標準偏差から真の値を推計
https://keisan.casio.jp/exec/system/1184294688 
*7. Soul has weight, physician thinks. Dr. Macdougall of Haverhill Tells of Experiments at Death. The New York Times, March 11, 1907.
*8. Hollander LE Jr. Unexplained Weight Gain Transients at the Moment of Death. Journal of Scientific Exploration, Vol. 15, No. 4, pp. 495–500, 2001
*9. 標準模型−Wikipedia. https://ja.wikipedia.org/wiki/標準模型 

画像引用
https://filmymantra.com
https://www.pngwing.com
https://www.wallpaperflare.com

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