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「数」の瞑想

今回は前回までの量子力学のテーマから少し変わって「数」を扱います。数も日常の領域を超えてスケールの大きな数を想像することで、宇宙や銀河を想像する瞑想と同様に「脳のキャパシティを広げる」効果があります。「数字が苦手」「自分は文系」と思っている人にとっては大変かもしれませんが、「普段使うのを避けている脳の領域を活性化する」という効果があるので最後まで読んでみると良いと思います。

皆さんが普段扱う「数」はどのくらいでしょうか。例えば、整理券の番号は30くらい、電車代は300円くらい、1日歩く歩数が1万歩くらい、新車を買ったら数百万円くらい、世界人口がもうすぐ80億人、近年のハードディスクのメモリは数テラ(数兆)バイト、というところが一般的に日常で触れる数でしょうか。

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我々が知っている、あるいは一度くらいは聞いたことがある範囲で大きな数の単位は次のようなものが挙げられます:一(10^0:10の0乗)、十(10^1:10の1乗)、百(10^2乗)、千(10^3)、万(10^4)、億(10^8)、兆(10^12)、京(10^16)、垓:がい(10^20)、秭:じょ(10^24)、穣:じょう(10^28)、溝:こう(10^32)、澗:かん(10^36)、正:せい(10^40)、載:さい(10^44)、極:ごく(10^48)、恒河沙:ごうがしゃ(10^52)、阿僧祇:あそうぎ(10^56)、那由他:なゆた(10^60)、不可思議:ふかしぎ(10^64)、無量大数:むりょうたいすう(10^68)

我々が一番大きな数は?と聞かれてとりあえず挙げる単位は「無量大数(10^68=10の68乗)」ですが、無量大数がどのくらいの大きさなのか想像できるでしょうか。地球に無量大数という数は存在するのでしょうか?さらに巨大な太陽やより大きな恒星に無量大数を超えるものは存在するのでしょうか。今回はそのような疑問を追求しながら途方もなく大きな「数」について考えていこうと思います。

・1cm^3(1立方センチメートル=1ml)の水に水分子は何個含まれるのか?
まずは中学高校レベルの理科を思い出しながら復習していきます。
水の分子量=18 なので1モル(mol, *1)の水は18g(グラム)、
1モル(mol) = 6.02×10^23 個の分子を含みます。

よって、1gの水は6.02×10^23÷18 = 3.34×10^22個の水分子から成ります。
1gの水には水分子が約334垓:がい(10^20乗)個含まれていると言えます。この「垓:がい(10^20)」という単位も既に日常レベルを超えていますが、まだ全然無量大数には届かないですね。

では次に地球の大きさや体積を考えてみましょう。
地球は何立方センチメートルでしょうか?地球の半径は約6400km(*2)です。
6400km=6400×1000m=6400×1000×100cm=6.4x10^8 cm
球体の体積は4/3 ×π(3.14)×(半径)^3 なので、
地球の体積(単純計算)は4/3 ×π×(6.4x10^8)^3 =1.1×10^27 となります。
つまり地球の体積は約1.1×10^27 cm^3、約1100秭:じょ(10^24乗)立方センチメートルということになります。まだ全然無量大数には届かないですね。

では「仮に地球が全て水だとしたら構成する分子の数は何個になるか?
1g(1 cm^3)の水は3.34×10^22個の水分子から成り、
地球の体積は約1.1×10^27 cm^3なので、
地球は3.67×10^49個=36.7極:ごく(10^48乗)個の分子から成ると概算されます。極:ごく(10^48)の単位まで来ましたがまだまだ無量大数(10^68)には届きません。

太陽にはいくつ原子が含まれるか?
まず太陽の基本データは以下のように知られています。
・太陽の半径は約70万km、地球の半径の109倍、体積は地球の約130万倍(*3)。
・太陽の質量は約2.0×10^30kg、大部分が水素(*3, *4)。
水素の原子量は1なので、1g(グラム)の水素には6.02×10^23 個の水素原子が含まれます。
太陽の質量は2.0×10^30kg=2.0×10^33g(グラム)、
よって単純計算すると“太陽を構成する水素原子の数”=
2.0×10^33g×6.02×10^23 個=約1.2×10^57 個
となります。
約12阿僧祇:あそうぎ(10^56乗)という数になります。少しずつ近づいてはきていますが、「地球の130万倍もの体積の太陽を構成する水素原子の数」でもまだ無量大数には届きません。

銀河系に含まれる星の数は?
次に思考をより拡大して銀河レベルで考えてみます。
我々の地球や太陽系が所属する銀河(*5)は「天の川銀河」とも呼ばれています。我々がその一部なので銀河全体を見ることはできませんが、我々の地球から銀河の中心方向を見た時に、その星々が密集して帯のように見える様が「天の川」と呼ばれています。このような現象からもこの銀河系が厚みのある円盤状の形であることがわかっています。
ちなみに天の川銀河の直径は約10万光年(端から端まで行くのに光の速さで10万年ほどかかる距離)という途方もない距離です。

銀河の画像で見えている光の粒は太陽クラスの“恒星(こうせい:自ら光を放つ星)”であり、最初の画像のように地球や火星のような惑星(わくせい)に比べると段違いに大きいです。質量も太陽が地球の約130万倍であり、太陽系惑星全てを足しても太陽の質量からすると誤差範囲程度の大きさです。このような太陽クラスの恒星が銀河系には約2000億個あると言われています(*5, *6)。

銀河系を構成する原子の数は?
もちろん、恒星の大きさは様々ですが「恒星の平均的なサイズや原子組成がほぼ太陽と同じと仮定」して「その周囲の惑星の質量は誤差範囲と仮定」して「銀河系を構成する原子の数」を概算してみます。(ブラックホールやダークマターはここでは考えないこととします。)
・太陽の質量=2.0×10^33g(グラム)、
・1g(グラム)の水素中の原子の数=6.02×10^23 個
・銀河系の恒星の数=2000億個=2.0×10^11 個
これらから、銀河を構成する原子の数=2.0×10^33g(グラム)×6.02×10^23 個×2.0×10^11 個=2.4×10^68 個
ここでようやく無量大数:むりょうたいすう(10^68: 10の68乗)という単位に到達しました。
「銀河に存在する恒星をほぼ太陽と同じと仮定」「恒星の周囲の惑星の質量は恒星と比べて誤差範囲と仮定」した上で非常に大雑把に計算すると、「銀河系を構成する原子の数を全て合わせると約2.4無量大数個(2.4×10^68 個)」と言えます。

ほとんどの人は「思いつく最も大きな数の単位は?」と聞かれると「無量大数」と答えるのではないかと思います。しかしそれが「砂漠の砂粒全て数えるほど」なのか「地球上の全ての雨粒/水滴の数ほど」なのかと想像していましたが、それを遥かに超える「この直径10万光年の天の川銀河中の星全てを原子レベルに分解して到達できるほどの膨大な数」ということがようやく分かりました。

さて、では「この宇宙に銀河はいくつある?」のでしょうか。
天の川銀河以外で最も有名な銀河は「アンドロメダ銀河(*7)」だと思いますが、下の画像のようにこの宇宙には我々の所属する「天の川銀河」以外にも数多くの銀河が存在しています。

最近の研究では「この宇宙における銀河の数は約2兆個」とされています(*8, *9, *10)。我々の銀河が1万個集まった集団を1万個集め、さらにそれを2万以上集めたものがこの宇宙全ての銀河の数に等しい、ということが言えます。

非常に大雑把な概算で「天の川銀河に含まれる原子の数は約2.4無量大数個」というのを先ほど試算しました。
では「宇宙の銀河の平均サイズを天の川銀河と仮定」した上で「全銀河を含めた宇宙に含まれる原子の数」を非常に大雑把に計算してみます。
”全銀河を含めた宇宙に含まれる原子の数”=
2.4無量大数個(銀河系の原子の数)×2兆(銀河の数)=
4,8000,0000,0000無量大数個(4.8×10^80 個)

さすがに今度は単位の方が追いつかなくなってきました。

無量大数より大きな単位は?
無量大数よりも大きな数の定義は実は古来から存在しています。
それは華厳経(けごんきょう):(正式名称『大方広仏華厳経』だいほうこうぶつけごんきょう、サンスクリット語でブッダーヴァタンサカ・ナーマ・マハーヴァイプリヤ・スートラ)という大乗仏教仏典の一つに数に関して記されています(*11、*12)。

その中で頻波羅(びんばら、*13)という単位が10^56 を表します。この時点では無量大数にはまだ及びませんが、次の単位が矜羯羅(こんがら、*14)という単位で10^112 を表します。急に無量大数を飛び越えてとんでもない桁になりましたが、昔から既にこの途方もない巨大な単位が定義されていました。

つまり、「全宇宙、すなわち太陽が2千億個集まった銀河を2兆個集めた宇宙全体の全ての原子を数えた数=約4,8000,0000,0000無量大数個(4.8×10^80 個)」をもってしても「1矜羯羅(こんがら:10の112乗)の1兆分の1のさらに1兆分の1にも及ばない」というほど巨大な単位が実は古代インドの経典から存在していたということになります。

まとめ
・地球を全て原子にすると極:ごく(10^48乗)個のオーダー
(オーダーとは概ねその周辺の桁で表されるという意味)
・太陽は地球の約130万倍の質量
・太陽に含まれる水素原子の数は阿僧祇:あそうぎ(10^56)個のオーダー
・天の川銀河の大きさは直径約10万光年
・銀河系に含まれる恒星は約2000億個
・銀河系の星全ての原子の数を表すと無量大数(10^68)のオーダー
・全宇宙にある銀河の数は約2兆個
・全宇宙の全ての星の原子を数えると10^80 個のオーダー
・全宇宙の原子の総量でも1矜羯羅(こんがら:10^112)には及ばない

今回は「数」というテーマで宇宙を見てみましたが如何だったでしょうか。「無量大数」がどのくらいの量なのか想像したことはあまりないと思いますが、「思っていた以上に膨大なスケール」とも言えますし、「思っていたほど無限の大きさでもなかった」と思う人もいるかもしれません。ただ「2000億個の恒星を持つ銀河系、その銀河を2兆個含む全宇宙」を想像したのは初めての人も多かったのではないでしょうか。そして、「現代の我々の観測できる宇宙を全て原子で数えても遥かに凌ぐ数の単位:矜羯羅(こんがら:10の112乗)が既に古代インドで伝えられていた」ということは驚愕の事実に値します。途方もない大きさの宇宙ですが、上のような手掛かりは全宇宙を瞑想することに役立つと思います。

(著者:野宮琢磨)

野宮琢磨 Takuma Nomiya  医師・医学博士
臨床医として20年以上様々な疾患と患者に接し、身体的問題と同時に精神的問題にも取り組む。基礎研究と臨床研究で数々の英文研究論文を執筆。業績は海外でも評価され、自身が学術論文を執筆するだけではなく、海外の医学学術雑誌から研究論文の査読の依頼も引き受けている。エビデンス偏重主義にならないよう、未開拓の研究分野にも注目。医療の未来を探り続けている。

引用:
*1. モルーWikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/モル
*2. 地球ーWikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/地球
*3. 太陽ーWikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/太陽
*4. 太陽質量ーWikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/太陽質量
*5. 銀河系ーWikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/銀河系
*6. 「星の数」の話ーJST 日本宇宙フォーラム
https://www.pr.jsforum.or.jp/blog_20200519/
*7. アンドロメダ銀河ーWikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/アンドロメダ銀河
*8. Christopher J et al. THE EVOLUTION OF GALAXY NUMBER DENSITY AT Z < 8 AND ITS IMPLICATIONS The Astrophysical Journal, 830:83 (17pp), 2016
https://iopscience.iop.org/article/10.3847/0004-637X/830/2/83/pdf
*9. A universe of 2 trillion galaxiesーPhys.org
https://phys.org/news/2017-01-universe-trillion-galaxies.html
*10. 宇宙に存在する銀河は2兆個、従来の見積もりの10倍ーAstroArts
https://www.astroarts.co.jp/article/hl/a/8745_galaxies
*11. 華厳経ーWikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/華厳経
*12. 命数法ーWikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/命数法
*13. 頻波羅(びんばら)ーWikpedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/頻波羅
*14. 矜羯羅(こんがら)ーWikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/矜羯羅

画像引用
https://www.ac-illust.com/main/detail.php?id=23157634&word=デジタル背景%E3%80%80マトリクス%E3%80%8004
https://www.freepik.com/free-photo/hydrogen-molecule_26317262.htm#query=molecules%20molecular&position=4&from_view=keyword
http://www.textures4photoshop.com/tex/water-and-liquid/isometric-water-cube-3d-cross-section-png-stock-photo.aspx
https://pixabay.com/illustrations/world-earth-globe-sphere-planet-1348808/
https://grapee.jp/52032
https://ja.wikipedia.org/wiki/ファイル:Artist%27s_impression_of_the_Milky_Way_(updated_-_annotated).jpg
https://en.wikipedia.org/wiki/List_of_galaxies
https://ras.ac.uk/media/1176
https://unsplash.com/ja/写真/qtRF_RxCAo0

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