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国別建機メーカーの製品戦略と調達戦略

建設機械 業界のトレンド

・自動運転・リモート操作、効率的な作業のためのプログラム開発
・排気ガス規制クリア、ハイブリッド車両開発、電動化車両の研究
・GPSを使った稼働管理、予防的なメンテナンス
・循環型リサイクル・環境対策
・中古建機ビジネス
・グローバルサプライチェーン

中国でトップの建機メーカー 三一重工の概要

・中国で初めてフォーチュン500に入った民間企業
・製品は、コンクリートポンプ車、油圧ショベル、道路工事・路面機械、ダンプカー、コンテナを吊り上げる特殊車両(港湾機械)、クレーン車・クローラー式大型クレーン車、風力発電設備、住宅用コンクリートパネルとその生産設備
・工場は長沙、寧郷、常徳、婁底、北京、上海、昆山、湖州、珠海、瀋陽、烏魯木斉
・海外は、アメリカ・アトランタ、ブラジル、インド・プネー、ドイツ・シュツットガルトに生産拠点がある
・中国ではトップ企業であるが、建設機械のトップはCaterpillar社、2位はコマツ、3位は日立建機で三一重工はその次。
・コンクリートポンプ車のシェアは世界トップ。
・福島の原子力発電所の爆発事故で放水作業を行ったのは、三一重工のコンクリートポンプ車。
但し、90mの高さまで放水できる技術を支えているのは、日本の川崎重工の高圧バルブ。
・三一重工は、世界に追いつくために、Caterpillar社、コマツ、日立建機出身の技術者を採用して様々な研究開発、生産技術を学んでいる。
・購買部門は私が約5年をかけて指導し、そのサプライヤーも含めたコスト管理、品質向上、生産性の向上に取り組んでいる。

③関連画像 三一重工

中国企業が日本企業から学んだこと

・コムトラックス GPSを使った稼働のデータ取得と予防的なメンテナンス
・スマートコンストラクション 半自動運転で効率的で最適な掘削作業を行うシステム
・顧客へのアフターサービス、故障修理・保守点検、消耗品の供給、部品の交換などの考え方
・無償修理、保証対象範囲と期間、耐久性・耐用年数
・グローバルな原材料部品の調達と加工・組み立て、サプライチェーンマネジメント
・循環型リサイクルであるリマン事業・環境対策
・コマツみどり会:サプライヤーの育成指導や技術・財務支援
・安全に対する考え方
・人材の育成
・製品仕様の標準化による生産効率
・ 組織における情報システム、データの共有
・データだけに頼り過ぎない、情報の最大限活用
・生産ラインの設計における効率化
・中国における日立建機との部品の共同購買でコスト競争力をつける
・サプライヤーに値下げ交渉をしない、発注した部品をキャンセルしない調達方針

④関連画像 三一重工

日本企業と中国企業の大きな違い

・ アフターサービスの重要度、補修部品の供給体制と利益の比率
・耐久性・耐用年数の大きな差
・販売先、リース・レンタルが少ない中国
・サプライヤーの選定方針と育成・指導に対する考え方(サプライヤーを育てない、相互信頼関係が薄い)
・研究開発費、品質を保証するための生産設備への投資の差が販売価格の差になっている
・コアな技術を自社開発か、外部の技術を借りてくるかの違いは大きい
・故障率・不良率に圧倒的な格差がある
・ 中国の人材はかなりの比率において4~5年で転職してしまうので、人を育てるという意識が低い
・中国企業は、基礎研究は積極的でない、時間のかかる継続的な開発はやりたがらない
*新製品は最初に販売したがらない、2番手として、トップに立つリスクを避けることを重視する
・中国企業は利益の出ない事業からの撤退は速い
・中国企業は組織力が弱く、個人のKPIは明確だが、チームワークや協力はしづらい
・中国は面子(メンツ)の文化であるため、知らないことでも知っているふりをすることが多いため、改善指導をしても実行しない、ないしは長続きしない傾向にある
・地道な努力の積み重ねを重視する日本企業に対して中国では楽をすることを優先する傾向
・中国の企業は、急速な自働車社会、スマートフォンの普及によるチャットのコミュニケーションの弊害が進んでおり、直接話さない結果として、断片的、誤った情報、メールしても相手が読まないためにおこる

⑤関連画像 建機メーカー

日本とアメリカ、中国の建機メーカー 概要と特徴

<キャタピラー社>
・建設機械では世界トップシェア、技術力・製品開発力がある
・アメリカでは環境対策、株主の意見が強く反映されることから、排気ガス規制だけでなく工場の再生可能エネルギーへの切替などを行わざるをえない状況にある
・グローバルな製品の供給、メンテナンスサービス体制を確立
・日本では兵庫県明石と神奈川県相模原に生産拠点、国内に試乗できる広い施設もある
・サプライヤー管理については、専用のサイトがあり、パスワードを入力してアクセスし、サプライヤーが必要な図面・仕様書・発注数量・納期・在庫情報を取りにいく
・オンライン化、ペーパーレスが進んでいるとともに、情報管理・セキュリティ管理も進んでいる

<コマツ>
・建設機械では世界2位、コムトラックスというGPSを使った稼働チェック、予防的メンテナンスシステムでアフターサービス充実、スマートコンストラクションでは建設機械の操作をコンサルティング、免許取得支援、日々の運行管理・保守点検の管理業務サービスも行い、製品の販売以外にも顧客をサポートするプログラムが豊富
・石川県小松に本社を移し、管理業務や人材育成を行っている
・エンジンは自社で製造しておらず、カミンズから調達
・情報システムネットワークは外部に委託しており、コムトラックスの情報収集管理はトプコン社の協力を得ている
・中国では山東省に生産拠点を持つ
・中国の部品供給は中国みどり会を主体にしている
・約1000社あるサプライヤーのうち、主要な部品はみどり会に加盟しているサプライヤーが全体の約80%の取引額を占める

<日立建機>
・建設機械では世界3位、インドではタタグループと組みシェアはインドでトップ
・売上高・利益、販売台数はコマツの半分程度
・日立グループから外れることが決まっている
・茨城県土浦市のほか滋賀県にも生産拠点を持つ
・常磐会、筑峰会というサプライヤーを管理する組織がある
・これまで日立グループ内の系列企業を中心に原材料・部品を調達
・地元の茨城県常陸那珂、土浦を中心にサプライヤーのネットワークを構築
・中国の生産拠点は複数の工場を統合して生産規模を縮小した

<コベルコ建機>
・日本では3位、神戸製鋼のグループ企業
・ハイブリッド油圧ショベルの開発では先端を行っていたが、コスト面で厳しい状況にあり販売数量は増えていない
・中国では重慶に生産拠点を持つ
・中国のマーケットでは生産・販売を中規模車両に絞って事業戦略を展開

<住友重機>
・住友グループの重機メーカー
・関西が地盤の企業だが千葉県千葉市にも生産拠点を持つ

<クボタ>
・農業機械がメイン、小型油圧ショベルも生産
・トラクターの自動運転技術は製品化されている

<ヤンマー>
・ディーゼルエンジンから始まった農機メーカー、小型油圧ショベルも生産
・中国では無錫に生産拠点を持つ

<三一重工(民間企業)>
・中国ではトップシェア、ミニショベルの生産は年間3万台(コンクリートポンプ車、油圧ショベル、ダンプカー)
トレーラーの先頭部分、消防車、港湾作業車、風力発電設備、コンクリートパネル

<徐工>
・クレーン車、油圧ショベル、コンクリートポンプ車、清掃車などの特殊車両
・中国国内だけでなく、インドにも組立工場を建設している

<中聯(国営企業)>
・クレーン車、油圧ショベル、コンクリートポンプ車、清掃車などの特殊車両
・主要生産拠点は、湖南省・長沙にある

建機メーカーまとめ

・アメリカ、日本、中国の格差は、性能、耐久性にある
・アメリカと日本がアフターサービスで先行、中国企業は遅れている
・原材料の調達における環境対策、排気ガス規制、温暖化対策はアメリカ、日本、中国の格差は少しずつ縮まりつつある
・中古ビジネス、循環型リサイクル、スクラップ処理は、アメリカと日本が進んでいる
・中国の建機市場はまだ性能、耐久性より価格重視の顧客が多い
・建機市場は、発展途上国が中心、インド、中国の市場規模も大きい
・中国企業のグローバル調達は発展途上、三一重工は中国以外の海外にも生産拠点がある
・サービス、メンテナンス、補修部品供給はアメリカ、日本が中国に先行している
・製品の標準化、部品の共通化が進んでいるのは、Caterpillar、コマツ、日立建機
・中国の建機メーカーが日本に進出できない理由は、型式認定、サービス工場、補修部品供給体制が整っていないため
・発展途上国への輸出においては中国のメーカーは日本にとって脅威となりつつある
・中国の建機メーカーで重要な部品、特に高品質が求められる部品は日本製や欧米の部品メーカーが提供している


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