スタートアップで求められるエンジニアの大企業経験とそれを活かすためのマインドを探る
大企業やスタートアップを経てNew Innovationsに入社した奥・漆山と、新卒入社の高林が、スタートアップで働くエンジニアの本音を語り合いました。
会社のカルチャーと自分のビジョンがマッチする
―まず、みなさんがNew Innovationsにジョインするまでの経歴を教えてください
奥:私の仕事選びは「たくさんの人に喜んでもらえる製品づくり」が軸になっています。大学卒業後は地元和歌山の写真処理機器メーカーに入社し、27年ほど勤めましたが、会社方針で開発体制が縮小されることになってしまい、退職を決意しました。
その後、行政の調査業務に携わったものの、ものづくりの現場に戻りたい想いが強く、ロボット関係の会社に就職しました。New Innovationsを知ったのは、和歌山に拠点をつくるニュースを知ったのがきっかけです。会社の問い合わせフォームから直接メールを送りました。創業間もないスタートアップに60歳を超えている自分なんかが…と思っていたのですが、中尾さんから話を聞きたいと返信をもらいました。前職と並行して働きはじめ、しばらく経ってから入社してくれないかとお誘いをいただいて今に至ります。
漆山:私は元々自動車系のエンジニアをしていて、自動車の車体やパーツの設計をしていました。ただ、車が好きすぎて仕事にならなくなってしまったんです。今だったらわかるのですが、製造コストも製品スペックの一つだと当時は理解できていなくて、機能だけをずっと追求していました。そこに深く深くのめり込んでいくという、エンジニアにありがちな罠に陥ってしまって、このままじゃだめだと思い、キャリアチェンジを決意しました。
ひょんなことから人型ロボットの開発に関わることになって、それからずっとロボット畑にいます。大企業に勤めたり、スマートロボットを扱うスタートアップのCTOやメルカリの研究開発組織「mercariR4D」などに携わった後、New Innovationsに入社しました。
高林:私は新卒でNew Innovationsに入社しました。それまでは京都大学の博士課程でワイヤレス給電というニッチな技術領域の研究をしていました。
ニッチな領域って、世の中にものを生み出すところとだいぶ遠くにいきがちなんです。就活では、身近な開発に携わりたいと思ってスタートアップをメインに探しました。ソフトウェア系の企業は多いのですがハードウェアまで作っている企業があまりなくて。その中でみつけたNew Innovationsに応募して入社が決まったという経緯です。
漆山:学生でインターンをせずに入社するのは珍しいパターンでしたよね。それに、誰もが知っているような外資コンサルを断ってNew Innovationsに来ると聞いて、かなり変わっているなと思った記憶があります(笑)
高林:いわゆるITコンサルと悩んでいたのですが、ハードウェア開発のバックグラウンドを活かせる環境がよかったんです。面接をしているなかで開発にもビジネスにも両方携わることができると感じたので、こちらに入社を決めました。
―New Innovationsに入社後、ギャップはありましたか
高林:思っていた通り、ビジネス・開発の両方に携わることができています。唯一あるとすれば「root Cはすごい製品だ!」と思っていたのですが、実はまだ発展途上で、自分のやれる余白が思った以上にあったことです。
漆山:私は2社ほどスタートアップでの経験があるので、なんとなく外から見える企業像とその実際の乖離があることは想像がついていました。それでも入社を決めたのは「ご縁」があるなと直感的に思ったのがひとつ。
あとは、最初の面接時に中尾さんと2〜3時間くらい「スタートアップとはこうあるべきだ」「会社はこうありたい」みたいな話をしたのですが、自分の中での優先順位と中尾さんの思想がマッチしたんです。これが入社の理由なので、いわゆる入社後ギャップみたいなものはなかったですね。
奥:正直に言葉を選ばず言うと「思ったよりもひどい」でしたね(笑)前職は出自がスタートアップだったので全く想像できてなかったわけではないのですが、驚きました。それでも何かやってみたい、一緒にやりたいという魅力を感じました。
―具体的にどんな状況だったのでしょう
奥:開発体制や意思決定の仕組みが思ったより属人的になっていました。スタートアップの社長が大きな意思決定をするのは必然なのですが、そこを自分の経験で補完していきたいなと。
私は「自分の仕事でたくさんの人に喜んでもらいたい」という想いを強く持っていて、この会社を上場企業にするまで一緒に頑張りたいと思っています。前職で自分がその経験をしたので、今いるメンバーにも味わってほしいという思いもあります。
漆山:スタートアップで働くにあたって、スキルマッチも大事ですけど、カルチャーマッチするかがすごく重要ですよね。ここを事前に調べたり、話を聞きに行ったり、自分で解像度を上げずに決めるのは、挑戦ではなくてただのギャンブルです。
奥:たしかに面接にいく前、いろんな記事を探して読みましたね。ビジョンへの共感ができて、働き始めてからも会社の成長を確信したので、自信を持って入社する意思決定ができました。
高林:今思えば、経営陣と連日会話をして違和感がなかったんです。これがフィーリングが合うということなんですね。
今、スタートアップに必要な大企業経験
―複数の企業を経験されてきた奥さんと漆山さんにお伺いしたいのですが、スタートアップに対する勘違いから、フィットせずに早期退職してしまう人は業界を見渡しても少なくありません。何故それは生まれてしまうのでしょうか
漆山:成熟した産業では仕事のやり方がきっちり整理されていて、製品を世の中に出すときにやらねばならないことが順番に決められています。
スタートアップの場合はそういうノウハウや知識を持っている人がおらず、必要な工程がごっそり抜けていることも往々にしてあるので、ギャップの元になるのではないでしょうか。しかも、大企業であれば専門部署がありますが全部自分たちでどうにかしないとならない。
そういうフェーズに飛び込んでくると「これはやらないの?」「これはどうするの?」と疑問が湧いても、誰も知らないし、自分もゼロからやったことはない。あれ?困ったぞ。ということになるわけです。
奥:良くも悪くも成熟産業でビジネスをしてきた人たちには、最低限の「こうあるべき」が叩き込まれているんですよね。そういう状態に直面したとき、どうしたらいいかと考えて行動できる人と、文句ばかりいう人に分かれます。自分の実力で仕事をしてきた人と会社の看板で仕事をしてきた人の違いです。
―なんでも自分たちでやり方から決めていく力が求められると
漆山:ただ、大企業が悪いという話ではなくて、特にハードウェア開発において大企業規模のビジネスサイズになっていくには必要な仕組みなんです。
例えば、試作と量産には大きな違いがあります。一度成功すればいいのが試作なのですが、一回成功したのでこれをそのまま量産して世の中に広めましょう、というのは筋違いなんです。10万個製品をつくって10万回動かしたときに失敗できるのが1回、という世界観で戦う場合、何を整える必要があるか知っているかどうか。
こういう経験とノウハウがある奥さんみたいな人がいないと、ハードウェアスタートアップでたくさんの製品を作って、不具合なく広めていくことはとても難しいでしょう。
―とはいえ、大企業経験があればスタートアップで活躍できるわけではないですよね
奥:大企業のやり方を教えてあげるというスタンスの方は合わないのだと思います。もう一度初心に返ってものづくりがしたいとか、持っている知識を次の世代に繋げて一緒に新しいチャレンジをしたいとか、そういう意欲がある人がスタートアップに向いているのではないでしょうか。
高林:ただ、そういうマインドを持っていて、かつ実行できる方はきっと大企業でもポジションをもっていると思いますし、不安定なスタートアップに飛び込んで給料も下がって…となると、なかなか興味を持ってもらうのって難しいのではないですか?
漆山:日本の大企業に勤めていると、自分のキャリアや産業の行先がだいたい見えてしまうんです。今の40〜50代は日本の急成長を肌で見てきた経験もあるはずなので、またそういう経験をしたいと思う人は少なくないと思いますね。
奥:それに会社都合で突然部署がなくなってしまうこともありますからね。「もっとやりたい」と思う方には、よりハードになりますが、魅力的な環境なのではないでしょうか。
―高いスキルと豊富な経験に加えて、マインドが決定打になりそうですね
漆山:そうですね。産業として成立してない中で、ルールを守るにはどうしたらいいか、時にはビジネスを成功させるためにどうしたら新しいルールにできるのかさえも考えて実行していく必要があります。システムや体制の枠組みが組まれている中で創意工夫していく大企業とは真逆ですよね。
高林:新卒でも同じことが言えますね。新卒は知識や経験がないからこそ、自己学習能力が高く、それ自体を楽しむことができるかどうかで発揮できる能力の差が開いていくのだと思います。
奥:「このやり方でうまくいったから、これにすべし」ではなく、時と場合に応じて方向修正ができることですよね。
漆山:大企業のやり方はハードウェア開発において正攻法なのですが、それは大企業の潤沢なリソースを前提にしています。それがないスタートアップでどうやっていくかを考えていくことが重要です。
経験とノウハウを日本の産業と次の世代に再循環させる
ースタートアップの成長に貢献するうえで欠かせない要素は他にありますか?
漆山:「お客さまのためになっているのか?」「誰のためにつくった機能なのか?」といった自問自答は常に続けていますね。会社の利益都合とか、エンジニアのエゴとか、そういうのをゴリ押しするものづくりだけは絶対にやらないと決めています。
高林:開発者として自分たちのビジネスモデルを理解していることです。このプロダクトは何のために作っているのか理解できていないと、作るものにズレが出てきてしまいます。
就活のときにコンサルも受けていたので、ビジネスに興味があってよかったなと思います。自分でアクセスできる会社や事業についての情報は、積極的に取りに行って理解しようとしていますね。
奥:高林さんは大企業にいっていたら浮いていたかもしれないですね。起業は視野にあるんですか?
高林:そうかもしれません(笑)学生時代にスタートアップブームがきたので起業にも興味はあるのですが、自分が考えたことはだいたい他の人がやっていたりして。なので、まずはスタートアップを作るのではなく、働いてみるのも面白そうだと思ったんです。いつかは起業する時がくるかもしれないです。
それもあって、いまの環境は本当にありがたいです。2人のように引き出しの数が多い技術者がすぐそばにいると、自分の学習意欲も刺激されます。
漆山:高林さんみたいな若い世代の人は、みんな本当に優秀ですよね。その中で、枠をとっぱらって頭抜けていく中尾さんみたいな存在もいる。どんどん好きなように人生を自分で選んでいける人が増えるといいなと思います。
奥:ここが私の範囲ですって線引をしない人が伸びていくし、会社の成長を引っ張っていくんです。これは年代問わず言えることです。
スタートアップではいろいろなことをやらないといけない。しかも時にはこっちの立場で、時にはまた反対側の立場でと、さまざまな立ち位置を理解した振る舞いや思考が求められます。若いうちからこの経験を積んで当たり前にできると、今後活かせる貴重なスキルになっていくはずですよね。
漆山:若い世代だけではなく、ハードウェア開発のノウハウとスキルを新しい環境で腕試ししたい、変化を楽しんでいきたいと思う僕らくらいの世代には、スタートアップを次のキャリアの選択肢にいれてみてほしいなと思います。会社のベクトルに合ってさえいれば、今よりも自由に、かつ責任も大きく活躍することができる環境です。
奥:自由だからこそ、自分の軸と会社の方向性が合っていることが重要だというカルチャーマッチの大切さに通じますね。
高林:私としてはぜひビビらずに新卒の方にも来てほしいです。自分が飛び込んでやり切ると決めるだけで、こんなに楽しい環境を手に入れられるんですから。
奥:最初は誰しも不安を感じますよね。自分は大企業の看板がなくても生きていけるのだろうかと。組織を出てしまうと意外とできるものだったりするのですが、その一歩を踏み出せる人がそもそも素養のある人なんだと思います。
漆山さんのような40代くらいの方はこの一歩踏み出す勇気を持ってほしいです。私と同世代の皆さんには、自分の技術に蓋をしないでもう一回チャレンジしようと言いたいですね。自分の技術やノウハウを、これまでお世話になってきた日本の産業に再度還元できる最後のチャンスになるんじゃないかと、私は思っています。
●採用情報
New Innovations は、OMO領域における事業企画及び技術者を積極採用しています。人型ロボットをはじめ様々な開発に携わってきたシニアエンジニアや、幼少期からロボット製作に携わり国内外のロボットコンテストで優勝した若手人財まで、幅広いメンバーが活躍している開発組織です。
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