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【公開記念連載コラム】<『新しい街 ヴィル・ヌーヴ』はどんな作品?> (1)「着想から完成までの長い道のり」

ニューディアー配給で9月公開となる『新しい街 ヴィル・ヌーヴ』。公開まで2ヶ月弱の本作について、コラムとして不定期に作品紹介をしていきたいと思います。第一弾は、「着想から完成までの長い道のり」です。


『新しい街 ヴィル・ヌーヴ』の制作は、フェリックス・デュフール゠ラペリエール監督がレイモンド・カーヴァーの名作短編「シェフの家』に感銘を受けたところから始まります。別れた中年男女の再会の物語が、監督の暮らすケベック州の状況を雄弁に語っているように思われたのです。

監督は、それまで短編アニメーションやドキュメンタリー、実験映画を作ってきた経験を活かし、「革新的な文法による」長編アニメーションを作ろうと考えました。(ニューディアーの過去配給作品も、そういった志で作られたものばかりです。世界的な動向であると言えます。)

「短編作品のように長編を作る」――その目標のもと、監督は1年半のあいだたった一人で制作の準備を行います。脚本を仕上げ、さらには全ての原画を一人で描きました。少ない予算で最大限の効果を出そうという試みのもとでした。原画のサイズは、ポストカードよりも少し大きいくらいの小さな紙です。

墨絵を使った絵は、一般的にはカラフルなものとなりがちなアニメーションの世界で「目立つ」ための方法論でありつつ、色数を極限まで抑える省力化の意図もあったようです。白と黒、そしてそのあいだのグレーの陰影は、想像力を喚起する豊かさを持つこととなりました。

他にもカットのつなぎ方、大胆な省略が可能なアニメーションならではのユニークなヴィジュアル・アプローチ、様々な手法で映画内の現実が展開されます。モノクロームで描かれる美しい光と影のドラマは、誰しもが驚きを禁じ得ないはず。

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アニメーターとしては、監督と同じくカナダのモントリオールを拠点とするマルコム・サザランドやエヴァ・ツヴァアノヴィッチら世界的に高い評価を受けるアニメーション作家たちが集結しました。それらの作家については、また別の機会に紹介したいと思います。

2018年、本作は、三大映画祭のひとつヴェネツィア映画祭の「ヴェニス・デイズ」部門でプレミア上映されました。脚本の1ページ目が書かれたのは2012年。実に6年もの期間を経て、このユニークな長編アニメーション作品はようやく完成したわけです。

2019年には、ザグレブ、アヌシー、オタワ、新千歳といった名だたるアニメーション映画祭にも選出されています。カナダやフランスといった国で劇場公開もされています。そして2020年9月、ついに日本公開となりました。

実写・アニメーション問わず世界中の映画ファンを魅了した本作は、シアター・イメージフォーラム、テアトル梅田を皮切りに、全国順次公開です! 改めて予告編をご覧ください。

本作の最新情報は、公式ツイッターアカウントをチェック!

https://twitter.com/ND_distribution

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