見出し画像

作り手側の"狙い"と、ユーザーの"目的"が噛み合ってなかった話

11月の頭に開催されていたオンライン頒布イベント(オンラインで行うコミケのようなもの)に、別名義で出展をして来ました。
それに関して、制作過程のお話やクリエイターに仕事を外注した話などを投稿していたのですが

今回はそれらの記事を踏まえた上で、今回頒布イベントで新作を出してみて気が付いた事を書いていこうと思います。

新作を出すと決めた理由

まず、何でその頒布イベントで新作を出そうと思ったの?という前提からお話しましょう。
去年も同じイベントが開催されていた時、その様子を見ていたのですが、同業者の方々の多くがその頒布イベントに合わせて新作を発売していました。
その為、当時の私は深く考えておらず「皆もやってるし自分もやるか」ぐらいの感覚で新作を出す事に決めました。
「注目されている企画イベントや、頒布イベントに参加しとけば、いつもより売れるだろう」と、あまり深く考えず新作を出していたんですね。


企画イベントとは

ここで、今回の記事にて重要になる「企画イベント」と呼ばれているものについて、説明していきましょう。
これは私がゲームを制作し、販売している界隈で行われている催しです。
内容は「お題に沿って作ったゲームを発売する」というもの。

同じタイトルのゲームを皆で作ろうだったり、この要素を含んだゲームを皆で発表しようだったり。
Xでそれ専用のタグをつけて、ショップページのURLと一緒にツイートし、ユーザー達はそのタグを巡回する…といったものです。

この企画イベントには、販売する側も買う側も多くの人が集まります。
お題が魅力的なものだと注目度が高まり、企画の開催を予告しているツイートが3000以上RTされていたりと、開催前から期待を持たれている事が多いです。
私も初めてゲームを販売したのは、界隈の中でも1位2位を争う程有名な企画イベントへ参加した時でした。

ビジュアル出来たしツイートしとくか…と、特に時間も気にせず軽い気持ちで投稿したものが、19万インプレッションにもなりました。
フォロワー数が100人にも満たないような、全くの無名なアカウントだったにも関わらずです。

企画イベントにはそれだけのパワーがある。
初作品がこれだけ伸びた事に対し、私は強くそれを感じました。
「企画イベントの時に新作を出せば伸びる」という、今思えば非常に安易な考えを持ちながら、これまで新作を出して来ました。


問題発生

話を戻しましょう。
9月頃の私は、初めて頒布イベントに参加する事になり、制作は順調に進んでいきました。
そして、イベント開催の1週間前。
体験版のリリースと一緒に、ビジュアルを初お披露目した発売告知のツイートをしました。

そこでハプニングが発生します。
このツイートが、思うように伸びなかった。

最初は、ゲームの内容が悪かったか?と落ち込みました。
「ユーザーの興味をそそるような要素を盛り込めていなかったのかもしれない」と私は考え込みました。
そこの部分には、多少の自信があったのも大きかったです。

しかし、同様に告知ツイートをしている他の出展者を見ていて、とある事実に気が付きます。
そもそも、うち以外が出している新作への反応も少ないのです。
普段は3000いいね、2000RTぐらい行ってそうなツイートでも、半分ぐらいの数字に落ち着いている状況。
そう、イベントで発売される新作への注目度がそもそも低かったのです。


予感は確信に変わる

実際ログインして、うちのブースに(有難いことに)来てくださる方を見ていて、その予感は確信に変わりました。
新作目当てで来てる人は殆ど居ない。
私の界隈の頒布イベントは少々特殊で、開催場所はあるのですが、販売自体は別のショップページを使って行います。
会場からそのショップページへ飛び、買い物をするという形になりますね。
そして重要なのが、ショップページはその会場に入らずともアクセスできる。という部分です。

つまり、会場に訪れずともショップページを見て、買い物する事自体は出来るんですね。
なので、新作のみ購入したい人は、そもそもイベントに来ていなかったんだと思います。
恐らく、Xからショップページに飛び、買っていた。
寧ろ会場を訪れるユーザーは、目当ての新作のゲームのみを買う訳ではなく、会場をふらついてオンライン上のブースを見る。
その中で惹かれたショップのページへ飛び、気になったゲームをまとめ買いする、といった動きが多かったです。


まとめ

いつも参加しているような企画イベントは、分かりやすいお題が用意されているので、ユーザー側もそのお題に沿ったゲームが欲しくてタグ検索して巡回をしているんだと思います。
なんか面白いの無いかな、ではなく「この要素が入ったゲームが欲しい」という明確な理由を持っている人が多いから、巡回する人も多く、購入率も高い。
一方でイベントに来ている人は、明確なこういうのが欲しい!という目的は無いようで「なんか良いの無いかな〜」と一個ずつショップを見ていく、という楽しみ方をしているようでした。
ショップを見ていく行為自体を楽しんでいるのでしょう。
例えるなら、ウィンドウショッピングに似ていると思います。

今回に関しては、新作出してめっちゃ売るぞ!というこちらの狙いと、ユーザー側のイベントを楽しむ姿勢が噛み合っていなかったんだと思います。
だとしても1個前の作品がかなりヒットして、その作品を知って覗いてくれたユーザーの方々も多かったです。
なので、単純にブースに来てくれる方を増やすのであれば、普段から知名度を上げておかなきゃいけないんだろう、と思いました。
後はブースのデザインで、面白そうなの売ってる!と思わせられるかどうか。
そこで「新作出ました!」は情報として強いんですけど、どちらにせよ、うちの事を知っていてくれないと、ただ知らない人が新作を出しているんだなぁだけで終わってしまう。
それに、企画ではなくイベントで発売開始をする為に制作するのであれば、コストと成果があまり見合わないんじゃないかな、と今回思いました。
もっと低コストで作れるものを使い、注目してもらう事は出来るんじゃないか、これは来年出展する時の課題ですね。

新作を出したのは間違いだったのか?

マイナスな事をかなり書いてしまっていますが、新作を出したのが失敗だったのでは無いです。
初動の売上もよく、うちのチームへの注目度も、フォロワーもかなり増えました。
ですが、新作を出すにはコストがかかりすぎる、という問題をどうしても避けては通れないのです。
中身をどれだけ私が急いで作ったとしても、ビジュアルの制作やテストプレイの時間を踏まえれば、少なくとも1ヶ月は必要になるので時間も必要になります。
そうなると、頒布イベントではなく、ユーザーの新作への注目度が集まっている企画イベントに発売するのが、一番効率が良いのだろう、という事が今回新たに分かりました。

参考までに、企画に出して今までに一番伸びた告知ツイートがこちら。
勿論パッケージのデザインや、要素によって変わるのでしょうが、企画イベントだとこのインプレッション数をたたき出すことだって難しくないのです。
そう考えると、やはりじっくり時間も費用もかけて新作を出すのであれば企画イベントでだな…と感じます。
私は新作を出すのであれば全てヒットさせたい、と思って作っているので尚更ですね。

こういう事を身をもって知る事が出来るので、自分でコンテンツ販売をするのは楽しい。
売上が直接私への利益に関わるので、苦しい時も勿論ありますが、学べる事が無い瞬間は存在していないし、ヒットが出たら純粋に嬉しいです。

次回は2月に大きな企画が行われるので、そこに合わせて新作を発売する予定です。
またどうなったかは、記事にしようと思います。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?