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2022年 マスターズ・トーナメントのチャンピオンズ・ディナーで日本酒古酒・熟成酒が提供されたこと

2022年が終わるまでにまとめておきたかったテーマ、それは、ゴルフの四大メジャー、マスターズ・トーナメントのチャンピオンズ・ディナーで、昨年の覇者、松山英樹プロが、晩餐会のメニューに和食を選んだんですが、ペアリングされたドリンクが、日本酒の熟成酒だったことです。

チャンピオンズ・ディナーとは

ゴルフやマスターズ・トーナメントに馴染みのない方も多いかもしれませんので、最初に少しお話をいたします。
毎年、世界中でさまざまな男子プロ・ゴルフの試合が開催されていますが、四大メジャーと呼ばれている大会は、全英オープン(7月)、全米オープン(6月)、全米プロ選手権(5月)、そして、マスターズ・トーナメント(4月)です。
ちなみに、マスターズ・トーナメントのみが、毎年同じゴルフ・コース(米国アトランタ州オーガスタ市のオーガスタ・ナショナル・ゴルフクラブ)で開催されています。

2021年4月にこのトーナメントを松山英樹プロが制覇するまで、日本男子プロが優勝したことはなく、それどころか四大メジャーで日本男子選手が優勝したのも初めてでした。
もっと申し上げると、日本男子のみならず、アジア男子でも初。
実況・解説していた中島常幸プロが、優勝が決まった瞬間、泣いていらっしゃったくらいの偉業です。

今年2022年はついこの間までサッカーで盛り上がっていましたが、松山プロ優勝の時はゴルフの話題で持ちきりでしたよね。
これをきっかけに、ゴルフを始めた人や、ゴルフやゴルフ以外のことでも一層「頑張ろう!」と思った人も多いはず。
実は私も、「頑張ろう!」組の一人でした。

さて、このマスターズ・トーナメント、毎年試合前に、歴代王者が出席する晩餐会「チャンピオンズ・ディナー」が開催されるのです。
前年優勝者が主催者として、晩餐会のメニューを考案することになっているため、今年は松山英樹プロの番。
そこで供されたメニューは以下の通りでした。

前菜
寿司と刺身の盛り合わせ
サーモン/サーモンの腹身、メバチマグロ、ブリ、海老、鰻
焼き鳥

メイン
タラの西京焼 だし汁を添えて
宮崎和牛
A5ランク和牛リブアイ マッシュルームと野菜添え
山椒とおろしポン酢

デザート
ストロベリーショートケーキ
あまおうとホイップクリームのスポンジケーキ

特に、外国人が喜びそうなお料理がばかりですよね。
私は、日本人ですが、もちろん食べてみたいです。
ちなみに、タイガー・ウッズさんが主催した時は、チーズバーガーやフライドポテトだったそうですw

そして、この美味しそうなお食事のメニューもさることながら、何に一番感激したかって、振る舞われたアルコールなんです。
なんと、日本酒「純米大吟醸 八海山」の、それも熟成酒!
「雪室貯蔵三年」だったんですよ!!!

Yes! 日本酒のしかも、3年貯蔵なので、古酒・熟成酒に分類されるものです。
これは、すごいことです‼︎

なぜって、以前も書いた通り、日本は、海外から大切なお客様が来日しても、和食にワインを出してしまう国なんです。

ところがそんな中、日本酒の、しかも古酒・熟成酒を松山英樹プロが選んだんです。

日本製のワインやウイスキーもあるし、その方が外国人には受け入れられやすいかも知れません。
特に、ジャパニーズ・ウイスキーは、世界的にも非常に高い評価を得ています。
それでも、彼は日本酒を選んだ。
業界としては、誇りに思うべきではないでしょうか。
そのうえ、三年貯蔵のお酒ですよ。
古酒・熟成酒業界は、大喜びするべきだと思います。

なのに、残念ながら、今のところ、このニュースを知っている業界の方々には会ったことがなく(もちろん、八海山の方々はご存知だと思いますが)、かえって一部のワインやウイスキー好きの方々が少し知っていらっしゃる程度です。

プロ・ゴルファーと松山英樹プロについて

もしかしたら、ゴルフはおじさんが趣味でする遊び的なもので、プロ・ゴルファーと言っても大したことない、と思っている人が多いのでしょうか。

だから、松山英樹プロが何を選んでも、騒ぐことはないと。

しかし、史上最も稼いだアスリートは、プロ・ゴルファーのタイガー・ウッズなんですよ。

サッカーのリオネル・メッシでも、テニスのロジャー・フェデラーでも、バスケットのマイケル・ジョーダンでも、ボクシングのマイク・タイソンでもないんです。

もちろん、稼ぎが評価の全てではないです。
でも、プロである以上、重要な指標のひとつであることも確か。
そんなに稼げるプロ・ゴルフの世界で、世界のトップ・クラスで活躍し続けているほぼ唯一の日本男子選手、松山英樹プロ。
さまざまな若手男子も世界進出しそうな雰囲気はありますが、今のところ、彼に匹敵する人は出てきていように思います。
そう考えれば、ゴルフに興味がない方も、松山プロのファンでない方も、彼がいかに貴重な存在なのかがよく分かるはず。

そんな方が、日本酒の、しかも古酒・熟成酒を選ばれたんですよ。
もしかしたら、一生で一番大事かもしれない晩餐会の席で!
みんなもっと騒がなくっちゃ‼︎

「純米大吟醸 八海山 雪室貯蔵三年」について

まずは、味わいやお米・酵母などについて。

「純米大吟醸 八海山 雪室貯蔵三年」(新潟県魚沼市 八海醸造株式会社)
アルコール度数 17.0%
日本酒度 -1.0
酸度 1.5
アミノ酸度 1.5
精米歩合 50%
麹米 山田錦
掛米 ゆきの精、五百万石
使用酵母 協会1001号、M301

この「雪室貯蔵三年」は、チャンピオンズ・ディナーのために特別に造られた日本酒ではありません。
以前からあって、私もたまたまいただいたことがありました。
お値段はそんなに高くなく、四合瓶(720ml)で3,000円から4,000円くらいなので、「少し高級」という程度です。

ですがお値段以上に特徴的なのは、香味の絶妙なポジションです。

日本酒には星の数ほどの銘柄があり、好みもそれぞれ。
新酒でスッキリしたのが好きな人もいれば、お米がたくさん磨いてある華やかな日本酒が良い人、全く逆に、熟成酒が好きな人、お米はあまり磨いていない方が良い人、などなど。
そんな中、「雪室貯蔵三年」は、どんな好みの人にも比較的受け入れられやすい日本酒だと思います。

アルコール度数は17%と、日本酒としては少し高めですが、3年熟成なので、アルコール感が抑えられ、まろやかに仕上がっています。
華やかな香りがする酵母が使われており、精米歩合50%で、比較的よく磨かれていますが、やはり熟成されているため、ある程度やわらいでいます。

日本酒度が-1ということは、少し甘めですが、±0が真ん中なので、基本的には、甘くも辛くもありません。
酸度もアミノ酸度も1.5で、大体平均くらいです。

そして、低温3年熟成というのは、熟成感はさほどないけれど、酒質はまろなかになっていて、熟成酒がそれほど好きでない人にとっても飲みやすいでしょう。

そもそも、「熟成酒」と謳ってなくても、数年熟成されてから出荷されている日本酒はたくさんあります。

なので、このお酒も「貯蔵三年」となっていなければ、熟成酒と気づかない人も多いと思います。

このように、「純米大吟醸 八海山 雪室貯蔵三年」は、香味のバランスが抜群な日本酒なので、どんなお料理にも程よく合うんです。

念のため、日本酒の熟成酒をたくさん扱っている居酒屋のマスターにこのお酒について尋ねてみたところ、「うちでも置いてる、欠かしたことないです」とのことでした。
また、主にウィスキーを扱っているバーのマスターにこの日本酒を試してもらったところ、「うんっ!これは嫌いな人いないね」と即答でした。

まとめ

松山英樹プロが、数多ある日本酒の中から、どうやって「純米大吟醸 八海山 雪室貯蔵三年」を選ばれたのかは分かりませんが、このチョイスはさすがだなと思います。
米国にしばらくお住まいのようですが、もしかしたら、日本酒にとてもお詳しいのではないでしょうか。

もし、松山英樹プロが選んだのが、日本製のワインやウイスキーなら、みんながもっと話題にしていたのではないかな、という気もします。
もしかしたら、焼酎だったとしても。

日本酒は、ワインやウイスキーとゴルフに比べて、ゴルフとの親和性が低いのでしょうか。
それにしても、この状況は寂しい……
どこかで、もっと話題になっているならいいのですが、微力ながら私も少し騒いでみることにいたしました。





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