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気になる本たち「感性に従え!」

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2019年11月の記事一覧

中島岳志「保守と大東亜戦争」(集英社新書20180718)

中島岳志「保守と大東亜戦争」(集英社新書20180718)

人間にとっての普遍的なのは理性の無謬ではなくて理性の誤謬。

いきなり序章で思い切りびんたを張られたような気持ち、というのは少し大げさですが、ひとつの本書の方針が明示されます。

人間の営みなど完成されることはなく、常に不完全なまま昨日を今日に継ぎ、そして明日を迎える。それこそが社会であるとします。これって、似たような言葉を宮沢賢治も残していました。

永遠の未完成、すなわち完成である。

人間は

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東浩紀『一般意志2.0』を読む

東浩紀『一般意志2.0』を読む

このところ、国会で議論が始まるたびに政府や与党のアラ探しばかり。消費税は上がる、人口は減少する、景気はイマイチ。国民の不満は募る一方だが、国会で国を良くする話はされているのか、さっぱりわからない。

政治なんて面白くない。そりゃそのはずだ。

世の中は複雑になりすぎた。個々人の満足は至る方向にあり、今の政治体制では国民の満足を満たす制作は出てこない。

ルソーの『社会契約論』が今こそ、現代の行き詰

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今より少しだけ日本を良くするために考えること『日本社会のしくみ 雇用・教育・福祉の歴史社会学』◆書評′19#22

今より少しだけ日本を良くするために考えること『日本社会のしくみ 雇用・教育・福祉の歴史社会学』◆書評′19#22

2019年22冊目の書評は、小熊英二さんの『日本社会のしくみ 雇用・教育・福祉の歴史社会学』です。

この本は、「日本社会のしくみ」について、その特徴や歴史を多面的かつ客観的に解説した大衆向けの学術書である。

ここでいう「しくみ」とは何か。

それは、単に法律や制度を指すだけでなく、もっと広い意味で、
雇用や教育や福祉、政党や地域社会、さらには「生き方」までを規定している「慣習の束」であると著者

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