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この世は国が悪いのが9割~給付金が闇に消えた日~

もう1週間で8月が、夏休みが終わる。

今年は7月から職業:無職をやっているので、急に北海道へフェリーで放浪の旅に出たり、家でゆっくり過ごしたり、柄にもなく料理や家事をがんばったりした。柄にもなく頑張れているのは、やっぱり旅での出逢いで刺激を受けたのが大きい。その旅行については、以下に全四編の記事でまとめている。

夏休みの思い出といえば、4年前、8月末ごろだったと思うが、10万円をもらい損ねたことが記憶にあたらしい。当時まだ生まれていなかった方に向けて説明するが、正式には「特別定額給付金」といい、コロナ対策として10万円が国民全員に配られたのである。

その給付金の申請書をパソコンデスクの横に置いて、「明日やろう」「明日書こう」と先延ばしにしていたら、8月末に期限切れを迎えてしまい、もらうことができなかった。今では無職になり、貯金が10万だ、15万だの騒いでいる生活レベルを考えるとかなりの高額だ。

今では、「ぼく給付金の10万円もらえなかったんですよー」という話しのタネを買ったと思って忘れることにしている。給付金という分岐点で、より少数派の道を選んだだけである。

ちなみに、給付金をもらえなかったことは、友人2人以外には話していない。上司にも同僚にも家族にも、話さなかった。当時、ローンの返済(と散在)で電気やガスが定期的に止まっていたため、周囲はけっこう心配してくれていた。「給付金の申請したか?」「早めに出せよ~期限切れになるぞ」「何に使うの?」「おにぎり作ってきたよ、昼飯代浮いたね」

そんな彼らの気遣いや心配を、むげにできなかった。いや、実際はむげにしているのだが、それでも傷つけたくなかった。「10万もらいましたよ!ローンの返済に使いました!」仕事終わりにそんな雑談をして別れ、車のキーを回すとやるせなくなった。なんのためにこんな嘘を……。国が悪い。国がもっとしっかりしていれば、わたしが給付金を、10万円をもらいそびれることなんてなかったんだ。帰り道、信号を待ちながら、夕陽が沈んでいくのを両目いっぱいに眺めた。やりばのない気持ちを、どうにか夕陽といっしょに沈めたいという、身体の側の力を感じた。

夕陽といっしょに沈もうとした日からしばらく経って、仕事終わり、散らかった家に帰ると電気がつかなかった。あー、電気代引き落としかからなかったか。コンビニに行って指定通り払い込み、入金したことを電話で伝える。そうすると1時間程度で電気が復旧する。待ち時間、家に帰っても電気もエアコンもつかないので、コンビニの駐車場で弁当を食べる。なんでこんなことに……。国が悪い。国がもっとしっかりしていれば……。

当時の貯金はゼロ(今は15万)。奨学金や車、ゲーミングパソコンのローンを払いながら、外食ばかりで、気まぐれに買い物をしてお金がなくなる。もうすこしだけ、自分がしっかりしていれば。ちょっとだけ節約を意識して、給付金の申請期限を確認して、ローンや公共料金の引き落としのスケジュールを踏まえた行動できていたら、もしかしたら穏やかな生活を送れていたのかもしれない。電気や水道も止まらずに、10万円をすぐゲットして、YouTubeで観るていねいな暮らしにすこしは近づけていたのかもしれない。

でも、国が悪い。国がもっとしっかりしていれば、わたしが給付金をもらいそびれることなんてなかったんだ。国がもっとしっかりしていれば、今わたしが無職でこまることもなかったんだ。国が、国が、国が、国が、国が、国が、国が、国が、国が、国が、国が、すこしは自分が、でも9割国が悪い。




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