見出し画像

ヘルムート・ニュートンは好きか?

写真を見て、感想を求められる時。自身の語彙力の無さに嫌気がさす。好きか嫌いかならすぐ言えるのに。

例えば好きな場合、それはモデルが美人だからかもしれないし、ライティングが洒落てるからかもしれない。モノクロがクールなのかもしれないし、構図が精緻なのかもしれない。専門的なことは分からないが、それらの要素のどこかに惹かれ、ぼくはその写真のことが好きなのだと思う。それらの要素のどこかに惹かれ、ぼくは写真を見ることが好きなのだと思う。

昨年生誕100周年を迎えた、ヘルムート・ニュートン。彼のドキュメンタリー映画が公開されている。好きか嫌いか。自身の感情の確認に、映画館へ向かった。

「ヘルムート・ニュートンと12人の女たち」
Helmut Newton - The Bad and the Beautiful
2020/ドイツ

画像1


好きだった。

モデルが、ライティングが、モノクロが、構図が、好きだった。そして何より、ヘルムート・ニュートン本人がとても魅力的なおじさまだったことに好感を持った。

彼に撮られるモデルの多くは、服を着ていない。服を着ていないのに、いや、服を着ていないから、彼女たちは、誰よりも堂々とカメラの前に立っていた。シャーロット・ランプリングが、イザベラ・ロッセリーニが、マリアンヌ・フェイスフルが、グレイス・ジョーンズが、彼との思い出を楽しげに語り、彼を手放しで褒め称えた。それもそのはずだ。彼による彼女たちの写真を、彼女たちが撮られるさまを見て欲しい。

ヘルムート・ニュートンは言う。

「写真家にとって汚い言葉が2つある。一つは、”アート”。もう一つは”センスがいい”。」

写真を見て、感想を求められる時。自身の語彙力の無さに嫌気がさす。好きか嫌いかならすぐ言えるのに。


でも、これでよいのかもしれない。


同時刻、鑑賞していたのはぼくを入れて5人だった。鑑賞後、パンフレットを買いに行ったら売り切れていた。「これはシンプルに発注の不足では?」という不満を押し殺し、渋谷の坂を急いで下った。下っている途中、ばったり昔の恋人に会った。お互いにさっきまで映画を観ていたことが分かり、「ポケモン?ねえねえポケモン?」と聞かれた。「ポケモンではない」と答えて、僕たちは別れた。2度目の別れだった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?