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私立夜宵★図書館【2024/1】

夜宵★の読書は図書館の本と決まってる。

貧乏だったから、本が読みたかったら図書館で借りなさい、って母に言われて育って、図書館は行きつけだった。

だけどこのところ読書量が激減。

今年は意識的に読もうと決意した。

図書館で借りて、夜宵★の心の図書館に入った本をいざご紹介!!




✦ 『悪口と幸せ』姫野カオルコ

他者と自己の比較から、さまざまな感情が派生するのだと感じた。

生まれて初めての、しかも極めて密な関わりをもつ他者が家族だ。

そこから生まれる感情が、複雑でこじれやすくなるのは道理である。

筆者は、それを丁寧に腑分けしてみせてくれる。


✦ 『小説 火の鳥 大地編 (上)(下)』桜庭一樹

『かつて三田村要造は言った。人間とは記憶だ、と。それなら、わしが覚えている限り、それぞれに戦い、苦しみ、愛した、あの時間もけっしてどこにも消えはしないだろう。』

本文より

アニメ『東京リベンジャーズ』みたいなタイムリープ物かと思いきや、「人間とは」という深いテーマが潜んでいた。

『人間とは記憶だ』というのはわかる気がした。

忘れてしまった人はいないも同然だ。

『キミを愛し、キミの命を助けるために行動した人間がいた。そのことだけ、覚えててくれないか。すべては時の狭間に消えていったが、人と人の愛は残る。けして消えやしない。』

本文より

死んだおじいちゃん、おばあちゃんの声や眼差し、かけてくれた言葉、今でも覚えている。

だから彼らは私の心に生きている。

そして、彼らから愛された記憶はこれからも私を生かしてくれる。


✦ 『極楽征夷大将軍』垣根涼介

足利尊氏像の解釈が新鮮で痛快。

武士として駄目だからこそ軍神になれたという。

『自他の利害を微塵も考えぬ無責任かつ優柔不断な優しさこそが、人がついかまってやりたくもなり、見る者を惹きつけて止まない要因なのかも知れない。』
『兄はその持ち前の愛想の良さと奇妙な優しさで、一時は闘犬のように猛り狂っていた坂東武者たちを瞬くうちに心服させ、従順な犬ころ、、、同然に飼い転がした。』
『この権力欲への恬淡さよ、自己肥大感覚の皆無さよ、と師直はこの時も妙に感心してしまうやら、呆れてしまうやらであった。』

本文より

『自他の利害を微塵も考えぬ無責任かつ優柔不断な優しさ』、『持ち前の愛想の良さと奇妙な優しさ』、『権力欲への恬淡さ』『自己肥大感覚の皆無さ』が「人徳」につながるとは誰が思おうか。

この作品を通して、尊氏を歴史上の人物ではなく、血の通った一人の人間として捉えることができた。

「極楽」の意味が終盤で覆される。

やられた。

『世に恐るべきは悪人に非ず。己の正義を譲らぬ頑固者である。』

本文より
(夜宵★の単なる備忘録)


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