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世の中の仕組みを知った寮行事・・・忘れられない「ビューティーコンテスト」!

 20年以上前の大学時代の寮生活の思い出である。

 今思うとよくあのペースで行事を運営していたものだ…と思うほどに、入学してからすぐに、いろんな行事があった。我々は就職氷河期、陰鬱世代だったが、バブル期に青春を過ごした方々が、やたらにイベントをやっていたということの余波として伝統になっていたのだということも、後でわかった。当時は全く由来など考えたこともなかったが、本当にイベントが多すぎて運営は大変だったと思う。仕事はお金がもらえるからありがたいのである。

 男子寮独自のイベントがいくつかあって、今もとても心に残っているのが、男子寮生が女装をしてその美しさを競う「ビューティーコンテスト」というイベントである。

 今の時代の文脈で考えると、LGBTQの人々への偏見というか蔑視のようなものが背後にあったかもしれず、若干問題のある行事ではあったのだが、当時はまだそういった発想がなく、純粋に楽しんでいた。

 男子寮生が女装をして、学食でコントのようなものを行い、投票で一位を決め、その後なぜか中央線に女装をしたまま乗り込み車両内を練り歩く。そして最後は神楽坂のディスコ(!)に行く、そしてなぜか飯田橋から四谷に行って、上智大学のキャンパス内に入って行って、男子寮独自の「エイトマン」という謎の集団掛け声?のようなものを突然やる、というようなイベントだったと記憶している。今だったら警備員に止められるかもしれないし、なんで上智大学に行ったんだろう?と不思議である。

SNSのある今だと炎上必至のようなイベントだったのだが、観客としては、ただただ楽しかったので、とても心に残っている。

そのイベントでは、社会の世知辛さを知ることもできたのだった。

自分が一年生の時、明らかに女装のクオリティの高い男性は、なぜか投票で、1位にならなかった。

英語のクラスの同級生に、自分に投票してくれと前もって言っていた男性が圧倒的大差をつけて、優勝したのである。

女子寮生は女装用の衣装を貸し出したり、出場者の顔にメイクを施すなどの重要な裏方の役割を担い、(私は一切貢献できなかったのでただただ、眺めていたが)自分の寮が衣装を提供し、応援した人が勝ったので、嬉しかったのだが、何となくその、前もって言っておいた出場者の友人たちがまとめて投票したという事実には、何やら非常に不公平な感じがすると思った。明らかに、もっと可愛い出場者は他にいたのである。寮として応援していた人が勝ったものの、何やら妙な後味の悪さが残った。そして、寮の友人が貸し出したお気に入りの赤いワンピース(!)が、男性の体格がゴツすぎて、ビヨンビヨンに、伸びてしまったのだった。そのことに、衣装を貸し出した友人はとてもとてもショックを受けていた。

男性にワンピースを貸し出したら、伸びるということを誰も知らなかったので、致し方ない。

そこで私は非常に重要なことを学んだと思う。質の高いものが勝つのではないのである。勝負は、「ネットワーク」の有無によって決まるのだ。

ビジネスの世界とは無縁のキャンパスライフであったが、受験勉強に邁進してスコア至上主義の世界から大学に進学した、ピュアな自分にとっては、勝敗は単なる優劣ではない事情で決まるという現場をありありと目撃したことは、今にして思うと、重要な経験であった(当時はそこまで考えてはいなかったが)。

今はその男子寮も神楽坂のディスコも、この世界に存在しない。2度とあのコンテストを見ることはできないのだ。そのことを思うと、とても切ない気持ちになる。あの頃一緒に寮の友人たちと、中央線に乗り込み、女装をした友人たちが電車内を練り歩く様を見ながら電車に乗ったことは、本当に貴重な経験だったと思う。非日常で、テンションが上がり、それまで経験したことのなかった神楽坂のディスコ(!)も、上智大学の四谷キャンパスで叫ぶ男子寮生たちを見るのも、ただただ、楽しかった。

今同じイベントをやったら…大学で警備員に止められたり、そのイベントそのものが問題視されて、炎上するかもしれないけれど…。あの頃は本当に牧歌的でした!

以上です。

 

 

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