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7割が下ネタだからキラリと光る言葉が刺さる「深爪式」という本

図書館には「なぜ、これが図書館にあるのだろう?」と疑問に思う本がたまにある。

例えば、広島中央図書館にある高田純次「適当日記」

面白いエッセイ本として紹介しているサイトがあったので、予備知識無しでインターネットで予約。司書さんから受け取るとき司書さんがジッとこの表紙を見つめた後、めっちゃ眉をひそめながら私に渡した。

受け取った本の表紙は、下半身丸出しの高田純次氏がパンツの代わりに天狗のお面をつけているではないか。そりゃ、眉もひそまるひそまる。

内容も内容で ”高田純次が書いた本” という前提がなければ、完読は難しいくらい中身がない。特に中盤からはやる気のなさは尋常ではなく、絵のない小学生の絵日記レベルの日記となり悪い意味でグダグダ。

なぜ、この本を図書館に置くことになったのか、疑問しかない。

こういう経験をしたにも関わらず、”人は同じ過ちを繰り返す” らしく、1年後にまた「面白いエッセイあるよ」というSNSの情報を信じ、またしても予備知識無しで本を借りた。

もっとも、今度は特に司書さんの眉もひそまることなく、にこやかに貸してくれた。

ところが、期待に胸を弾ませて、表紙をめくって目次をみて愕然。1章、2章ともここに書くのを控えさせるほどのエロいタイトルが並ぶ。

なにもエロを完全否定しているわけではない。

官能小説ならば文学のうちとわりきれるので、エロと文学を秤にかけて文学が少しでも重ければ図書館にあっても文句はない。

飛騨市図書館なんて、官能小説朗読ライブまでされている(しかも市長まで!)くらいだ。

ただ、エッセイに綴られているエロは、エロというより笑いを取るためのネタか単なる自慢である事が多く、非モテの私としては不快でしかない。エロ界でいえば、門番くらいの位置付けなのでエロに含めないで欲しいくらいだ。

とはいえ、著者はSNS界でカリン塔より上に住む人として位置付けられているそうなので、何かSNSのヒントを得ることもあるかもしれないとページをめくることにした。

その怪しげな本がこちら。
深爪『深爪式 声に出して読めない53の話』

目次のエロいタイトルどおり、第1章、2章は、いわゆる「そんなん知らんがな」という著者のエロ経験談が続く。ただ、第3章に入ってから趣がガラッと変わる。たまに入るエロや下ネタもアクセントくらいにしか感じられず、人間関係で悩む人にヒントになる言葉が並ぶ。

「好きならば相手のウ○コが食べられるはずだ。食えないのなら、それは本物の愛ではない」と主張されてムキになって反論する人は少ないと思う。それはスカトロマニアを別次元の人間と割りきっているからだ。

私は価値観の違う人間に批判されたときにはいつも「この人はウ○コを食うタイプの人なんだ」と思うようにしている。「ウ○コを食う人なら仕方ないか」と、みるみるうちに怒りが消えていくのだ(p.165より 一部伏せ字)

気の合わない上司がいる人には、ヤツとの付き合い方のいいヒントになりそう。

違う表現にしておけば名言なのに・・・と思うものの、インパクトが強いので印象に残りやすい。これはこれで良いのかも。

私も会社員の頃、昼休みになると汗だくでけん玉ばかりしてるせいか、部下の健康管理なんて気にもせず40度の熱があっても夜勤させる上司がいたけど、得体のしれない物質を食う人と思えばさほど腹も立たなかったかもしれない。

もし、何かの縁で仕事を依頼されることがあれば、この教えを胸に上手にお断りしよう。

他にもSNSでフォロワーを増やすちょっとしたツボなどが書かれている。それだけに、単なるエロエッセイではなく、図書館に置いておく価値のある本だと、完読すると思える不思議な本だ。

もっとも、こんなエロのなかにキラリと光る言葉が刺さる本があるせいで、図書館に置く置かないのボーダーラインが下がっているのかもしれない。


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