見出し画像

七盤勝負挑戦者向け入門書紹介

はじめに

 この記事は、七種目の二人用ボードゲームを同時に行う『七盤勝負』に挑戦すべく、筆者が書店や通販で集めた各種目の入門書について紹介します。紹介する七種目は以下の通りです。

1,将棋
2,囲碁
3,連珠
4,チェス
5,オセロ
6,どうぶつしょうぎ
7,バックギャモン

これら七種目につき基本的に1冊の入門者向け書籍を紹介します。選書基準はなるべく自分の足で複数の書店を巡りブラウジングし、書店になかった書籍に関してはamazonレビューなどネットの評価を参考にしました。『七番勝負』にこれから挑戦しようという人の参考にしていただければ幸いです。


1,将棋

浦野真彦(2009)『1手詰ハンドブック』日本将棋連盟

 七種目の中で将棋と囲碁は他種目と比べてかなり極端に関連書籍が多い。特に将棋は今年(2017年)活躍された藤井聡太四段(愛知県出身)のお陰で、私の地元名古屋では殆どどの書店でも将棋コーナーが設けられているほどにわかに将棋ブームが起こっている。これにより多くの将棋入門書が書店に並んぶこととなった。それら多くの将棋関連書籍から小生が選んだ入門書がこの本です。
 日本将棋連盟が発行するこの本には将棋の基礎がハンドブックという手軽な形で詰め込まれています。巻頭に駒の動きを始めとする将棋のルールと詰め将棋のルールについて簡潔に解説されており、ルールを押さえた上で将棋という競技を序盤~中盤の手筋や戦術からではなく終盤、つまりは詰め将棋から入門する書籍となっています。
 このハンドブックには300問の詰め将棋が収録されており、うち始めの80問には将棋で用いる駒それぞれの使い方、駒と駒が連携して詰める基本的な手法についての問題となっており、将棋における全ての詰まし方・詰み方が載っているといっても過言ではないでしょう。
 将棋入門者に対し最も難しいのは「どうやって相手を詰ませるのか」であり、そういう意味でこの本は将棋のゲーム性を覚えるうえで最低限の要素を纏めた非常に優れた本であると言えます。なお、この本は更に3手詰・5手詰などシリーズ化しており、この本から入門した方はそれらに読み進めるか、他の手筋や戦術を解説する書籍に移ってもいいでしょう。


2,囲碁

井山裕太(2016)『井山裕太のいちばん強くなる囲碁入門』成美堂出版

 全ページフルカラーで入門者向けに囲碁の基本的なルールとゲーム性について9路盤を用いて説明されている。これはどの本に関してもいえることですが、やはりルールを覚えるところから始める入門書においてはたくさんの図説で詳しく説明してくれるフルカラー本というのが理想であり、この本はその典型です。
 将棋の章でも触れましたが、将棋と囲碁は関連書籍が非常に多く、入門書も多数発刊されています。その中で小生がこの本を選んだのは上述の通りフルカラーでわかりやすいという理由が大きいですが、同時に9路盤に特化して解説されているという点も選んだ理由となっています。(七盤勝負の囲碁は9路盤で行われます)
 本書は、初めに囲碁を打つのに必要な道具から基本的なルールとマナーについて触れた後、石の取り方や生き死にの基本について解説するなど、全9章に章立てて丁寧に説明されている。理解を助けるために各章の章末には確認問題が掲載されており、囲碁の難解なルール(※個人的な見解です)を段階を踏んでゆっくりと確実に理解できる。
 惜しむらくは、副題の「いちばん強くなる」という表現が不適切である点。この本は上記の通り優れた入門書ですが、あくまで入門書であり初級者・中級者以上を対象にしていないため、この副題には疑問が残ります。この本を読んだ後は将棋同様、手筋や戦術を解説する書籍に移るか、詰碁の書籍に移るのがいいでしょう。


3,連珠

真野芳久(2015)『連珠(五目並べ)の基礎』東海連珠会

 テープ製本された全209ページのA5サイズ冊子です。私はとあるイベントでこちらの製本された冊子を(なんと真野五段のサイン入りで!)購入しましたが、実はこの冊子は東海連珠会さまのHPでPDFが無料公開されています。ISBNが付けられた連珠関連書籍は小生の知る限り2冊しかなく(この冊子は付いておりません)、そしてその2冊も書店では殆ど見かけないうえ、もしあったとしても大体は囲碁のコーナーにまぎれている始末。そのような連珠界隈の状況にあって、こちらの冊子はネット上で誰でも閲覧が可能であり大変有益だと思われます。
 内容は無料公開とは思えないほど親切な作りで、章番号と節番号で構造化された詳細な目次、五十音順の巻末索引に、関連URLと参考図書一覧とまるで専門書のような丁寧な構成。ただし、ページ数が多いうえ、図版による説明が豊富なのに反して少し文章量が多い印象です。
 将棋や囲碁と違い、関連書籍の少ない種目の書籍は概ね入門書が初級者向け・中級者向けの内容を含んでいることが多く、結果としてページ数などの問題で入門的内容に割く文章量が相対的に減る傾向にあります。この冊子も基礎と銘打たれておりますが、応用まで網羅的に言及している印象を受けます。これは避けがたい問題であり、この本の評価とはあまり関係がなく、小生はこの本が「持つ連珠を広める」という役割は充分果たしていると思います。なお、東海連珠会さまではこの冊子以外にも一手詰め連珠など有用な冊子をPDFで公開していただけているのでそちらも大変参考になります。


4,チェス

渡辺暁(2012)『ここからはじめるチェス』ナツメ社

 連珠やバックギャモン程ではありませんが、チェスの関連書籍はあまり世間に出回っていません。世界における普及度に対し日本でチェスが普及していない理由についてここで言及することはしませんが、チェスの関連書籍は圧倒的に海外が多くなっています。
 そんな中こちらの本は全ページフルカラーで図版による説明が多く、非常に優れた入門者向け書籍です。本の構成もシンプルで、基本ルール、攻めとまもりの基本、序盤戦、中盤戦、終盤戦とわかりやすい5章構成となっています。巻末には切り取って使う紙製のチェス盤とチェス駒が付属されており、この本さえあればチェスを入門することができるようになっている。
 各章の要所要所に練習問題が載っており、内容を覚える助けとなっています。ただし、個人的には入門書にしては少し練習問題が難しいのではないかと思いました。連珠の章でも触れましたが、関連書籍の少ない種目の書籍は入門書といえど内容が詰まっていて多少難解な部分もあります。
 チェスに関しては小生も目下研究中であり、この本の次に何を学べば良いのかはわかっていません。将棋の詰み将棋のように詰めチェスというものがあるそうですが現時点では書籍が見つかっていません。ネット上でいくつかチェスの問題集を公開しているサイトがありましたので、そういったサイトを学習の助けとするのもいいかもしれません。


5,オセロ

谷田邦彦(2010)『改訂版・図解 早わかりオセロ』

 連珠やチェスの章で、関連書籍の少ない種目の書籍は内容が濃いとお伝えしましたが、実はオセロに関しては例外なのです。オセロはおおよそチェスと同程度の書籍数が出回っていますが、オセロはそのようにあまり多くない書籍の中では特に入門者、初心者向けの書籍が大半を占めています。これは一重にオセロのルールが他種目に比べ簡単であり、子どもから大人まで幅広い人々がオセロで遊ぶ機会があるからと思われます。
 オセロの入門書は特に児童向けの漫画による説明が多い本がいくつか出回っていますが、この本はそういった児童向け書籍と比べると多少内容が堅く、高校生から社会人向けの内容になっています。章立てのもオセロの基礎知識、初心者になるには、入門者になるには、級位者になるにはと、学習進度と実力に沿った構成になっています。各章には練習問題と応用問題が掲載されており、巻末には総合問題と、総合問題の得点数によるおおよその級位・段位の目安が載っています。
 オセロはルールが簡単で誰でもすぐ初められるゲームですが、それに反して上達を目指すと非常に奥深いゲームとなっています。小生も未だ奥深いオセロの門戸を叩いたばかりですので、この本の次はどのように学習すればいいのかわかっていませんが、この本はかなり奥深い内容まで言及されており、この本で学習するだけでもかなりの研究をすることになるでしょう。


6,どうぶつしょうぎ

きたおかまどか・ふじたまいこ『どうぶつしょうぎのあそびかた』
《小学館(2017)『新装版 どうぶつしょうぎ』付属小冊子》

 どうぶつしょうぎの関連書籍は小生の知る限り4冊ほど出版されましたが、どの書籍も現在は中古以外ではほぼ入手出来ない状況となっており、関連書籍が2冊しか市場に出回っていないバックギャモンより入手難易度は高くなっています。つまりは七種目のなかで関連書籍の入手難易度は最大です。
しかし、どうぶつしょうぎはルールが簡単で理解しやすく、このどうぶつしょうぎに同梱されている付属小冊子は全文がひらがなで可愛い図版とともに誰でも理解できるように詳しくかつ丁寧に解説された、付属品といえども油断ならない素晴らしい仕上がりとなっています。ページ数こそすくないですが、巻末にはちからだめしもんだいも載っており、入門書としてはこの冊子が必要最低条件を満たしているかたちです。
 どうぶつしょうぎはシンプルなルールに反して勝とうと思うと大変難しい種目となっていますので、なんとか関連書籍を入手してそのレビューを今後書きたいと思っています。小生は現在、以下のサイトさまが入門者向け問題集を公開してくださっており、この問題集に取り組んでいます。オススメです。

ニャログ:【遊べる】 どうぶつしょうぎ1手詰め100問 http://cappuccino28.blog94.fc2.com/blog-entry-369.html


7,バックギャモン

望月正之・景山充人・桑門昌太郎著 日本バックギャモン協会編(2017)
『改訂新版 バックギャモン・ブック』河出書房新社

 バックギャモンは世界最古といわれ、世界的に人気があるボードゲームです。しかし日本での認知度はいまいち高くなく、関連書籍も海外は多いと聞きますが、日本には現状小生の知る限り、この本を含めて2冊しかありません。ということはつまり二者択一を迫られるわけですが、この本は上記の通り日本バックギャモン協会が編集し、バックギャモン世界選手権1位2位の選手の著作となっています。
 では内容はというと、これもやはり連珠・チェス・オセロの章で解説した通り、関連書籍が圧倒的に少ないせいで内容が濃密という問題を抱えています。実は入門者向けという点ではこの本ではないもう一冊のほうが図版も大きく優れています(それにしたところでそちらもあまり入門者に優しい内容ではありませんが)。
 バックギャモンは七種目の中でも囲碁と同じくらいルールとゲーム性が難解(※個人の見解です)で、この本による自習だけでバックギャモンを理解するのは難しいかもしれません。ですが、この本は難解な文内容が詰まっており初級者~中級者の実力アップには向いています。少し我慢してルールを覚え、実際にバックギャモンをプレイすればきっと先に進めることでしょう。
 余談ですが、現在書店でも入手可能なこの本は改定新版とのことですが、噂によるとこの本の改定前のほうが入門者に向けて親切な内容であったらしく、小生はそちらを入手したかったのですが、現在は中古でしか入手できないらしく断念しました。もし改定前をお持ちの方は内容や感想などを教えていただけると助かります。


最後に

 ここまで読んでいただけた皆さんは各種目毎の関連書籍数の偏りを理解していただけたかと思います。今回小生が選んだこれらの本はそのような現状を踏まえた上でお薦めしたい本を選んであります。場合によっては内容やコストパフォーマンスに差があるかもしれませんが、逆にいえばそれはマイナーなジャンルに投資することに繋がり、今後のボードゲーム界隈の活性化に繋がることでしょう。
 今後も小生は様々なボードゲームと本との出会いを求めていきます。七盤勝負に興味を持ち、新たなゲームの楽しさを知った皆様もどうかその楽しさを広め、同時に良書の普及を手助けしていただければ小生、これほど嬉しいことはありません。


ネロ造

サポートをするとネロ造にスシが供給され、新作がアップロードされるペースが上がるかもしれないというハイテックなシステムです。