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夜中の
2022年11月13日 23:55
長い下り坂をFと歩いた。Fは学生時代からの友人で、何度か寝たこともある。最近は寝ない。私には恋人がいる。Fには寝るだけの友人がいる。また寝ることもあるかもしれないが、わからない。寝るか寝ないかはあまり重要ではない。かと言って他に重要なこともない。坂の途中の自販機で、Fはいちばん甘そうなジュースを買った。果汁は入っていない。ふた口ほど飲んで「あげる」と缶を差し出される。「嫌だよ」と言う。Fはしぶし
2022年9月11日 05:04
◆BABY, THE STARS SHINE BRIGHTと呟きピンクの煙になるの『それいぬ』はお守りだから持っていく黄泉比良坂歩きにくいなもし来世何になれるか選べたらエミキュのOPの柄になりたい幽霊になった貴方は淡色で前よりずっとモワティエ似合う藍白のトーションレースに絡まって呼吸は止まる願いが叶う仄暗いメゾンに佇むあのひとを押し花にした栞をはさむ今生は花になるための
2022年7月3日 01:36
月を齧って欠けた歯を埋めた植木鉢から、にょきりと緑青色の植物が生える。薔薇に似た鉱物のような白い花が咲き、夏のはじまりに朽ちる。やがて重たげな実が付き、はち切れそうに艶やかに実っていった。相変わらず宿無しのYがスーパーの半額の寿司と安酒とアイスキャンディーを持ってやって来たのは、風のない暑い夜だった。Yは以前よりも痩せ顔色も悪かったが、瞳には昔と変わらない、金星でも嵌め込んだかのような光があ
2022年2月6日 05:25
夕暮れにチャイムが鳴って、Aかと思ったらAによく似た鬼が立っていた。「Aかと思った」「よく言われます」「代わりに来たの?」「まあ、そうですね、あなたがカレーを用意してると言うので」「そっか」鬼を部屋にあげる。気がつかなかったが、Aよりもきちんとした良い服を着ている。なんだかそれがおかしかった。デパートのインドフェアで買った平たい銀色の皿にカレーを盛る。今日は本で読んだインド風の玉ねぎ