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カワサキワールドにて特別展示第1弾開催中!

兵庫県神戸市にある博物館「カワサキワールド」をご存知ですか?
神戸のランドマークとして有名な神戸海洋博物館内にあり、カワサキのバイクだけでなく鉄道や航空機など、様々な工業製品が展示されています。
カワサキ好きやバイク好きの方はもちろん、日本の歴史や機械が好きな人も楽しめる博物館で、お子様と一緒に家族で行くのもオススメです!

そんなカワサキワールドにて現在、モーターサイクル事業70周年特別展示が開催中です。その第1弾の企画展示が2024年3月末まで開催されているということで、取材に行ってきました!
今回は「カワサキの海外展開の歴史」に焦点を当てて、特別展示の見どころを紹介します!

カワサキワールドの入り口はこのような感じです。大空と飛行機が見えますね!
(Neoriders Project撮影)

※ カワサキのモーターサイクル事業は、長い歴史の中で複数回社名が変更されています。本記事では「カワサキ」と表記を統一しています。


カワサキワールドって何?

神戸のランドマーク「神戸海洋博物館」の中!

カワサキワールドは、神戸港の憩いの場「メリケンパーク」にある神戸海洋博物館の中にあります。神戸海洋博物館は、多くの方が「神戸」と聞いて思い浮かべることができるあの白くて尖った形の建物です。

帆船の帆と波をイメージした白いスペースフレームの大屋根が特徴です
(神戸海洋博物館[公式]Xより)

ちなみに、神戸のもう一つのシンボルである「ポートタワー」は、2024年1月現在で改修工事中です・・・。
2024年春には営業再開予定とのことなので、待ち遠しいですね!

バイク以外の展示もたくさん!

さて、話をカワサキワールドに戻しましょう!
カワサキワールドは、神戸にルーツを持つ川崎重工グループの企業ミュージアムとして、2006年にオープンしました。
その展示品は、川崎重工グループの120年以上の歴史の中で特に優れた最先端技術や社会発展に貢献してきたものです。また、昔の神戸を知る貴重な資料もあります。

カワサキワールドには、バイクだけでなく鉄道車両・船舶・航空機なども常設展示されています。バイクのイメージが強い「カワサキ」ブランドですが、バイク好き以外でも十分に楽しめること間違いなしです!
乗り物好き・機械好きにはたまりません!

バイク以外にも、様々な工業製品が展示されています
(Neoriders Project撮影)

モーターサイクル事業70周年特別展示

そんなカワサキワールドでは、2023年に70周年を迎えたカワサキのモーターサイクル事業の歩みを当時の代表的なモデルと共に紹介する、モーターサイクル事業70周年特別展示が開催中です!
現在は、1960-70年代にアメリカ市場をターゲットに開発・販売された貴重な車両が4台、2024年3月31日までの期間限定で展示されています
本記事では、カワサキワールドのスタッフやカワサキモータースの関係者から伺った詳しい説明も添えて、今回の特別展示の見どころをご紹介します!

【1953年〜】苦戦続きの黎明期

川崎重工は、1878年創業の川崎築地造船所をルーツに持つ歴史ある大企業で、戦前には造船だけでなく鉄鋼業や航空機産業、自動車製造なども幅広く手掛けていました。
カワサキのモーターサイクル事業の起源は、1953年にバイク用エンジンの製造を開始したことに遡ります
当時の日本では、戦後の二輪需要の高まりを受けてバイクメーカーが何十社も誕生し、熾烈な開発・販売競争を繰り広げていました。
黎明期のカワサキもすぐに軌道に乗ることは難しく、様々なモデルを発売し、吸収合併も経験しながら、他社との厳しい競争を耐え抜きます
その歴史については特別展示コーナーの解説パネルで説明されていますので、来館予定の方は是非お読みください。

1954年に200台のみ製造されたカワサキバイクスクーター「川崎号」
(カワサキモータース株式会社ウェブサイトより)

【1962年〜】ヒット車の誕生とレースでの大活躍 カワサキ125 B8

カワサキのモーターサイクル事業において初めての大ヒットモデルは、1962年に発売された名車「カワサキ125 B8」です。
B8はそれまでのモデルとは異なり、エンジンから車体まで一貫して製造・設計されました。また、カワサキとして初めて市場調査を行った結果「悪路に強い車両が欲しい」という顧客のニーズに対応することができました。
販売面では大成功を収め、カワサキのモーターサイクル事業の存続を力強く後押ししました。

さらに、もともと悪路に強いB8をベースにしたレース仕様車「カワサキ125 B8M」は、兵庫県の青野ヶ原で行われたモトクロスレースにて1位から6位までを独占する快挙を達成しました。
スポーツバイクメーカーとしてのカワサキのイメージは、このモデルから始まったのかもしれません。

レース仕様のカワサキ125 B8M。ノーマルのカワサキ125 B8と共に常設展示されています
(Neoriders Project撮影)

【1964年〜】国内の成功とアメリカ市場での苦難 J1

特別展示車両の1台目は、1964年に販売した小型モデル「J1」です。
J1は、当時の最新技術である「ロータリーディスクバルブ吸入方式」を採用したことで競合他社のバイクよりも性能が高性能を実現しました。
モトクロスレースで大活躍したことも相まって、カワサキにとって初めてバックオーダーを抱えるほどの人気車種となりました。

カワサキワールドでは期間限定で展示されており、黒いボディと銀のタンクの組み合わせが、小さいながらも圧倒的なオーラを放っています。美しい車体を是非映像でご覧ください。

当時の国産車として非常に完成度の高かったJ1は、カワサキが海外市場に挑戦するきっかけとなりました。
しかし、排気量がわずか82ccしかないJ1は、世界最大のバイク市場であるアメリカのライダーたちを満足させることはできませんでした
それでも、カワサキは諦めずにバイクの開発を続けました。

【1965年〜】大型車のカワサキの第一歩 650-W1

特別展示の2台目の展示車両は、大型バイクの「650-W1」です。バイク好きの方には「ダブワン」の愛称でも知られている、1960年代のカワサキを代表する1台ですね。
現代に続く「大型バイクが多い」というカワサキのイメージは、この650-W1が形作ったものです。

650-W1は、大型バイクの老舗メーカーである目黒製作所との業務提携後に製作した、カワサキ500メグロK2というバイクをベースに開発されました。カワサキでは初めての4ストローク・スポーツモデルでしたが、性能面で非常に優れており、J1で苦戦したアメリカ市場においても一定の評価を得ることができました。

モーターサイクル事業70周年特別展示特別展示の様子。手前の赤いバイクが650-W1
(Neoriders Project撮影)

650-W1は、メッキパーツを多用した美しいタンクやY字型の特徴的なクランクケースが魅力的で、世界中に愛好家がいます。
その美しく力強いデザインは、販売開始から50年以上経った今でも圧倒的な存在感があります。

さらに、現在販売されているW800や2023年のジャパンモビリティショーで発表されたW230は、650-W1の系譜を継ぐバイクです。
中型バイクのW230も、クラシカルな雰囲気が非常によく似ていますね。

ジャパンモビリティショー2023で発表された新型バイクW230
(カワサキモータースジャパンXより)

J1から圧倒的に進化した650-W1ですが、それでもまだ、当時のアメリカのライダーが求める水準を満たすことはできませんでした。
並列2気筒エンジンの強烈な振動が仇となり、日本より高速道路が多いアメリカ市場では高い評価を得られなかったのです

しかし、カワサキの開発者は諦めませんでした。

【1969年】世界一を目指した新技術 H1(MACHⅢ)

次に紹介する1台は、世界で一番速いバイクを目指して開発されたH1(MACHⅢ)です。
日本国内では「マッハ3」や「500-SS」の名称で知られています。

H1(MACHⅢ)には、メイン市場となるアメリカのライダーを満足させることが求められました。言い換えると、他のバイクを圧倒する究極の性能でした。
その実現のためにカワサキは、量産車初となる2ストローク3気筒エンジンを搭載しました。
その結果、当時としては驚異的な排気量1リットルあたり120馬力の高出力エンジンを搭載した超高性能マシンとなり、約200km/hの最高速度を記録しました。
H1(MACHⅢ)は、苦難が続いたカワサキの海外展開において、ようやく高い評価を獲得することに成功した、歴史的意義のある1台です。

カワサキワールドに展示中のH1(MACHⅢ)。タンクや金属部分がピカピカで、とても綺麗です

【1972年〜】「高性能車メーカー」としてのカワサキを確立した名車 Z1(Kawasaki 900 super4)

H1(MACHⅢ)の開発でアメリカ市場を満足させる超高性能マシンを実現したカワサキは、全く別のアプローチで高性能車を開発していました。
それが1972年に登場した4ストローク4気筒DOHCエンジン搭載のスポーツバイク「Kawasaki 900 super4」で、カワサキの「高性能バイクメーカー」という肩書きを揺るぎないものにしました。
Kawasaki 900 super4は「Z1」の愛称で親しまれています。

Z1が開発された頃、アメリカ市場では4ストロークエンジン車が人気となっており、2ストローク車の販売は低下していました。
しかし、当時のカワサキは4ストロークエンジンの開発経験が少なく、4気筒エンジンやDOHCエンジンの開発も手探りでした。
この社運をかけた開発にも、カワサキのエンジニアは一切妥協せずに取り組み続け、その結果、性能も耐久性も抜群に優れたZ1が誕生しました。

デザイン面では、4本出しのマフラーや、オレンジとブラウンの「火の玉カラー」と呼ばれるカラーリングも非常に人気となりました。
こちらも、カワサキらしさを象徴する特徴ですね。

特別展示中のZ1(Kawasaki 900 super4)。常設展示のZ1よりも近くで見ることができます

ちなみに、Z1は900ccの4気筒エンジンを搭載していましたが、日本国内では1980年代まで排気量の自主規制があったため、750ccバージョンのZ2が販売されました。両者ともに、現在でも熱狂的な人気を誇っています。
また、現在日本国内で販売されている人気大型バイクZ900RSは、Z1をルーツに持つバイクです。


まとめ

本記事では、カワサキの70年のモーターサイクル事業の歴史を、その黎明期からアメリカ市場で成功を掴むまで解説しました!
今や世界中で多くの方に愛されるバイクメーカーのカワサキですが、その歴史を辿ると、失敗しても諦めずに改良を積み重ねた先人たちの努力がありましたね!

実は、現在も使用されている「Let the Good Times Roll」という広告コピーは、アメリカ市場の開拓を通じて誕生しました。
海外市場に挑戦して、妥協を許さずに製品開発を続けた開発陣の考え方を知ると、ユーザーを満足させることを大切にするカワサキらしさを表す素敵な言葉だと実感しました。

Neoriders Project撮影

今回の展示車4台は、海外市場での失敗と挑戦の結果誕生し、今のカワサキを形作った名車たちです。歴史的な価値も高く、とても貴重な車両です。
この記事を読んで興味をお持ちになった方は、ぜひ実物を見に行ってみてください!
展示期間は、2024年3月31日までです。

また、カワサキワールドは、バイク好き以外の方も満足できる展示がたくさんあります。
バイク以外の展示品についてもnote記事にて紹介予定です!

さらに、今回の特別展示はモーターサイクル事業70周年特別展示の「第1弾」という位置付けです。次回は1980年代以降の様々な製品の展開が紹介されるのでしょうか。
今からとても楽しみですね!


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参考サイト

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