おへそ。

以前から冗談まじりで計画していたが実際に来ることになるとは正直思っていなかった。



初めて2人で割といいホテルに来た。

和モダンな、旅館のテイストもあるホテルだった。

僕らは恋人同士じゃない。

バイト先の後輩であるこの子が楽しそうにしているところは正直SNS以外で見たことがなかった。


けど仲はそれなりに良かった。


じゃないとこんな良い宿泊はしないどうやら温泉も有名らしい。

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僕たちは温泉を出た後に

部屋で好きな音楽について話した。

高校生の時に聴いていた音楽がなんとなくルーツになるよねと話した後

僕が高校生の時に洋楽のR&Bになんとなくハマっていた話をする

その中でも一番好きな曲の和訳をその子はしてくれた。

そういや英語が堪能だったな。

歌詞の中に

「おへその上で眠る」という和訳があった。

僕たちはよく理解できなかった。

するとその子がこっちを見て

「一回私のおへそで眠ってみます?」

と言った。

一瞬焦った。

けど恥ずかしさや謎の倫理観に襲われる前に彼女は寝転んで待っていた。



僕はそこに頭を乗せて目を瞑ってみた、
頭を両手で抱き抱えられながら。

「どうですか?」

「わかんないけど意外と良いかも」

「私も今いい感じなんでもう少しそこにいてもらえませんか?」

「わかったなんかごめんね」

そして僕らはそれなりに良い宿に泊まったのに温泉以外何も満喫せずそのまま早めに眠っていた。

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頭を抱えた彼女と相変わらず腰に抱きついた体制で「おへそで眠っていた」僕は、朝早く目覚めた。しかし居心地が良くて寝たふりをしたまま午後を迎える。

「流石に起きてますか?」

そう言われた俺は目覚めたフリをする、どうやら彼女も随分前に起きていた。

「…おはよう。」

入念に目を擦る仕草をしながらお腹のところから顔を上げて彼女を見ると

割とよく寝て目が覚めた顔でこっちを見て無言で彼女は悪戯っぽく微笑んだ。

「今何時かわかる?」

「14時過ぎです。お昼にしますか?」

うん、そうしようと言って2人は立ち上がり準備を進める。

といっても軽く着替えるくらいだ。

ちょっと気まずくなってる俺を余所に彼女は坦々と準備をしている。

部屋を出て、以前からここに泊まるならこの店に行こうと2人で一応決めていた屋台に到着した。

そこではアスパラガスを乾燥させて硬化させたものを立てて、上からやすりでうまく削り

その粉を何かしらにかけて食べるというSNS等メディアで大流行している食べ物だった。

時間が遅くなっても、その屋台は少し混んでいた。

僕らは待とうとした。

部屋からここに到着する間

僕は彼女を見れなかった。

昨晩のことを思い出すと、顔を見て話せないくらいには恥ずかしかった。

にもかかわらず彼女は相変わらずだった。

「どうします?並びます?」

僕は前を向いたまま小さい声で「そうしようか」

と言いながらアスパラガスを見ていた。

彼女は

「え、なんて言いました?」

と少し笑いながら聞き返してきた。

僕は耐えれずに

「並ぼう」

彼女の方を向いて片手で両方の頬をつまんだ。

何故かは全くわからないけど、そんなことをしないとこの恥ずかしい空気感に耐えれなかった。

彼女の笑顔は見たことがあるのだが

いつものそれは笑顔であって、ただの笑った顔だったのだが

頬をつまんだ瞬間

彼女は目を細めて

嬉しそうに

はにかんだ。

「もう少しこのままにしててもいい?」

と聞いたら

「わかりました。」

と言って嬉しそうにしていた。

(7/4に見た夢に少しだけ脚色しました)

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