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あなたの知らないブルーノメンデス騒動。あの時の彼女の心境とは。

PHOTO by Nishina Taka





「私からしたらそんな炎上くらいでスタジアムから離れるかって感じでした。」



画面の奥では、軽快なリズムに合わせて踊る4人のサポーターの姿。セレ女が一躍ブームになり、他クラブとは違ったカルチャーを持つようにも思えるセレッソ大阪のファンコミュニティ。2019年、夏。そんなセレッソ大阪のサポーターの行動がきっかけとなり、Jリーグのサポーター内に大きな議論をもたらした。

2020年3月下旬。新型コロナウィルスの感染拡大の影響でフットボールが日常からなくなっている最中、議論のタネの動画投稿を行なったぽみさんに話を伺った。メディアには語ってこなかったブルーノメンデス騒動の真相。ソーシャルメディアとサポーターカルチャーの関係性。あの時、彼女は何を思っていたのだろうか。








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■フォロワーの増加はスタジアムで会う人と比例していた。

ー中略ー

▽フットボールとの出会いはいつ頃だったんですか。

もともと親がフットボール好き、弟も選手としてプレイしていました。そんな中、セレッソ大阪にハマったのは小学5年生のシーズンでした。家がセレッソとガンバ(ガンバ大阪)の中間くらいの地区だったので、どっちのサポーターにもなれる状況でした。昔はガンバがJ1でしたし、招待券もいっぱい貰っていたので何度かガンバの試合に行っていたんです。スタジアムに行くたび、ゴール裏に興味こそ持っていたのですが、やはりガンバのゴール裏ってちょっと怖いイメージがあって。ただセレッソだったらいけるかな、よし行ってみようと思ったんです。実際セレッソのゴール裏はアットホームな雰囲気で、これなら女の子でも楽しめるなと思っていたら、とあるブームがきました。セレ女です。メディアに報じられるようになってから、女の子の数は爆発的に増えましたよね。

▽ということはセレ女のブームが来る前に
ゴール裏にはすでにいたということですよね。
やはりその数は膨大に増えたと。

本当に増えました。やっぱりその女の子たちはフットボールの内容というよりは選手のファンなんですよね。曜一郎(柿谷曜一朗)とか蛍(山口蛍)とか拓実(南野拓実)のファン。私とは違ったセレッソの楽しみ方でした。もちろん当時はセレ女に対して批判もかなりありました。ただ私は女の子の友達が増えて嬉しかったですね。そのブームのときにできた友達は今でも仲がいいですし、ゴール裏に残ってる子たちも多いです。

▽まだまだ男性がマジョリティのゴール裏で、
女の子サポーターの数が他クラブより目立っていた
稀有なクラブだった。

そうだと思います。みんなインスタグラムをやってたし、ソーシャルメディアで知り合った子と週末にスタジアムで会うサイクルができました。

▽おそらくその当時は
まだ発言が注目されるまでではなかった
と思うのですが、
そこから注目されるきっかけがあったのですか?

その当時はほとんどのセレッソの試合に行っていました。もちろんそういった女の子は他にもいたと思いますが、私は応援団体に所属をしていて、いろいろな活動をさせていただいていたんですね。そんな女の子は珍しくて、ひとつのポジションというか、目に止まる要因だったのかなと思っています。あとゲーフラ(※ゲートフラッグ:スタジアムでサポーターが掲げるメッセージフラッグ)を作っていたんですよ。拓実くん(南野拓実)とかカカウとかのものです。次第にそのゲーフラの写真がサッカーメディアに取り上げられたり、スタジアムの知り合いが増えていくにつれてフォロワーが増えていったんだと思います。そこからとんとん拍子でしたね。爆発的に増えていきました。


■サポーターの声が届くクラブ。変化。そして、

▽あくまでオフラインからオンラインのフォロワーが
増えていく構図な訳ですね。

ただ2年くらい前にセレッソ公式が実施した、イベント企画ミーティングが転機だった気がします。その取り組みはセレッソのスタッフと一緒にサポーターがイベントを考えるものでした。企画案では、ソーシャルメディアを使ったセレッソガールズデイのようなものが多くて。なにが転機だったかというと、その企画は一般の応募制だったんです。ただ私は呼んでいただいて。そこでスタッフさんも私のソーシャルメディアを見ていることがわかりました。そういう機会に直面して、ちょっといろいろ考えなきゃなと。

▽そこから具体的な変化が、

たとえば言葉遣いを変える、批判的なことを書かない。そういった変化はありましたね。当然その変化は自分に対しての制限でもありました。例の件よりももっと前の話です。

▽そういう変化がソーシャルと向き合うためには
必要なのかもしれないですね。
あと聞いていて感じたのは、本当にセレッソの雰囲気は
他のクラブとは違うんだなぁということです。

それこそブルーノメンデスの件もセレッソだからあの動画を出すことができたと思っています。あの時も批判をしていたのはいわゆる熱いクラブのサポーターだったです。こんなのは応援じゃない、そもそも選手が来ているのになにしてんの?なんて声ばかりでした。私もさすがにそのクラブのサポーターだったらやらないですし、そのような行為をセレッソ以外では受け入れられないともわかっています。実際世間で話題になっていた期間も、セレッソサポからの批判はほぼなかったんです。つまり他クラブのサポーターから見たらTHE・セレ女のミーハーな女の子の動画だったと思うんですけど、スタジアムにいるセレッソサポーターは私が現地でいつも応援していることを知ってたので、スタジアムでは何も言われなかったです。



■批判に集まる批判。リアルとネットのギャップに、

▽この話って聞いてよかったんですね(笑)
あの騒動、ネットにもしっかりまとめられていた
と思うんですが、どういう経緯だったんですか?

実はあの話題になった動画は第3弾だったんです。その前に2本撮っていて。1本目の動画は同じ構図で、セレッソサポーターの中で少しだけバズりました。友達のセレッソサポーターの中でそれが話題になり、メンデスが決めたら恒例にしようと。で、2本目はコールリーダーや太鼓を叩いているお兄ちゃんも混ぜてやったんですよ。実はそんな流れがあの動画の前にあったんです。

▽なんと、知らなかった。

そしてその次に撮った動画が、ホームジュビロ戦の例の動画だったというわけです。ただそれも最初はそんなに広まらなくて。体感でいうと1本目の動画と大差ない感覚でした。

▽なにが要因だったんですかね。

実はその試合、ジュビロがすごく調子の悪かった試合だったんです。結果はもちろん内容もサポーターにとって満足のいくものではなかった。その結果、とあるジュビロサポーターが選手挨拶の際にジュビロの選手に罵声を浴びせる動画が拡散されたんです。


▽同じ試合の同じスタジアムの反対側で
対極に近いサポーター動画が広まったわけですか。

そうなんです。そして誰かが私たちの動画とジュビロサポーターの動画を交互に編集した動画(上リンク参照)をネットにあげたんです。それがすごい数で拡散されました。もうそれはすごい速度で。その編集された動画が出回ったと同時に、元ネタを探るように他クラブのサポーターが、私たちのアカウントにアクセスしてきた。ざっくり当日起こった流れはこんな感じです。最初はみんなかわいいとか面白いとかのリアクションだったんですけど、次第に熱いクラブのサポーターに見つかりまして。応援はこうだ!とかこんなのは面白くないとネガティブな意見で埋まりました。私は全然誹謗中傷に対して反応していなかったんですけど、私ではない別の人たちがその批判している人たちを批判する構図ができたんです、気がついたら。

▽その批判を批判している人たちは誰かっていうのは、

全然知らない(笑)


■「もうなにもないですよね。」

▽ただ途中から
「こういうサポーターを受け入れないと
Jリーグはダメだ」
などの議論も出てきていた。

マニアがマニアを潰すみたいな。途中から私関係なく、その議論でタイムラインが埋め尽くされていましたよね。その議論が加速するたびに動画も伸びてました。


▽おそらくその議論に
なにか意見を言ったりはしていない
と思いますが、その議論自体は見ていましたか?

見ていました。ただその動画の中には、議論のなかにあったJリーグに取り込まなければいけないとされるミーハー女子はいないわけです。さらに批判している人たちは私のことをスタジアムで知らない。もうなんにもないですよね。傷つく言葉も多くあったんですけど、知らない人に言われてるなら別にいいかなと思っていました。

▽批判しているひとも援護しているひとも
一体なにと戦っていたんですかね。

それはすごく感じていました。私が関係ないところで、私の知らない人が、私を使って各々の主張をしている感覚。ただ困ったなと思ったのは、その動画の後にスタジアムでの行動やソーシャルメディアでの過去の発言や行動を掘り起こされて叩かれるようになってしまいました。それはさすがにまずいと思い、急に消したんです。渦中にいるアカウントを。私は別に有名になりたかったわけではなかったので、数万人のフォロワーが消えても特に問題はなかったんです。

▽その削除がまた大きな話題になった。

そしたらそのアカウント削除に対してソーシャルメディア上で「ほら女の子が叩かれて潰れちゃったじゃん」みたいな議論がまた発生したんです。実際そのあとにソーシャルメディア上で繋がりのあった方々は、スタジアムで平然と応援している私を見かけると心配の声をかけてくれるようになりました。仲のいい人たちは私のスタンスを知ってるので、全然心配してくれませんでしたが(笑)私からしたらそんな炎上くらいでスタジアムから離れるかって感じでした。


▽その異常な炎上の仕方とアカウント削除が相まって
ソーシャルメディア上の知り合いは
フットボールすら嫌いになってしまったと
心配したんでしょうね。

正直私は活発化する議論のなかで、私の援護を求めたわけでは全くありませんでした。ただ界隈では著名な方や業界のスタッフの方が意見をしていたり、DAZNにも試合前に抜かれるようになりはじめたときに、もう何もできないよ!とは思いました。

▽ということはアカウントを消した後は
そういった現象に疲れて情報は追ってなかった。

いや、全然見てましたよ(笑)

▽見てたんですね(笑)
今回話していてすごく興味深いなぁと思ったのは、
ソーシャルメディアとリアルの反応のギャップですよね。
スタジアムに行けば叩く人は誰もいない。
ただ画面の向こうはたくさんの目が向けられていると。

スタジアムではみんな心配してくれるし、そもそも仲のいいサポーターはそもそも心配すらしてくれない(笑)叩くのはみんなネットの人だけだなぁとはこの件でよくわかりました。そしてリアルではあったこともない人がほとんどです。

(完全版に続く)

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