トルストイの日露戦争論/エピグラフの機械翻訳 第八章分
第八章エピグラフ
(1)
《汝の良心が非難することを行ってはならず、真実に反することを言ってはならない。この最も重要なことを守れば、汝は人生の全課題を果たしたことになる……。》
《誰も汝の意志を強制することはできない。そこには泥棒も強盗も入れない;不合理なことを望まず、一般的な善を望め、だが個人的にではなく、多数派の人々のように。人生の課題は多数派の側につくことではなく、非常識な者たちの仲間に嵌りこまないようにすることだ……。》
《銘記せよ、神はいまし、しかし彼は称賛も、自らに似せて創造したところの人間から受ける人間的な栄光も望んでおられない。人間が、神がお与えになったところの知性に導かれ、その行動において神のようになることを望んでおられるのだ。いったい、イチジクの木は自らの仕事に忠実であり、犬も蜜蜂も同様ではないか。一方、人は果たして自らの使命を満たさないのだろうか? しかし悲しいかな、これらの偉大な聖なる真理は汝の記憶から消え去っていく:日常生活の空虚、戦争、不合理な恐怖、精神的虚弱、そして奴隷としての習慣がそれをかき消してしまう……。》
《元の枝から切り落とされた枝は、それによって樹木全体からも切り離される。人が他の人々と反目すると、全人類から隔絶される。しかし、枝は外部の手によって切り落とされるのだが、人は自ら自分を憎しみと悪意によって己れの隣人から遠ざけ、まことに、それによって自らを全人類から隔絶するのであることを自覚しない。だが、人々を兄弟として共同生活に招いた神は、反目の後に再び互いに和解する自由を彼らに恵み与えた。》
マルクス・アウレリウス
(2)
啓蒙とは、人が自分自身で扶持している幼稚さからの出口である。幼稚さとは、人が他者の指導なしに自分の知性を使うことができないことである。その幼稚さの原因が、知性の欠如にあるのではなく、他者の指導なしに知性を使う決断力と勇気の欠如にある、そのような時は、彼自身がこの幼稚さを扶持しているのである。Sapere aude。自分の知性を使う勇気を持て。それが啓蒙のモットーである。
カント
【(3) は準備中】
【(4) はカントの引用。註釈部分に出典のみ紹介。】
(5)
神を敬う手段は、本質的にはただ一つである — それは自らの義務を果たし、理性の法則に則って振る舞うことである。
リヒテンベルク
(1)マルクス・アウレリウスはローマ帝国の皇帝。五賢帝の一人。著書『自省録』は有名で、この引用もそこから採ったものです。
と言っても、この文を書いている時点では、出典を探しきれていません(そのうち見つけられればとは思っています)。
見つけた部分だけは、例によって(?)「国会図書館デジタルコレクション」にある古めかしい資料から文字起こししました。参考用に貼り付けておきます。
訳の問題なのかどうか、結構ニュアンスの違いを感じる部分もあるような気がします。
(2)出典はカントの『啓蒙とは何か』。その冒頭です。ネタ本で56ページ、112番。なお、カント(と、トルストイのネタ本)についてはエピグラフ第7章分の註釈を参照。
いささかズルい手のようには思うのですが、この引用部分だけなら、最新の邦訳を試し読みできてしまいます。
↑ここの(ちょっと小さい)「試し読み」ボタンを押して、あとは『啓蒙とは何か』の冒頭を見るのみです。
ドイツ語の原文は以下で読めます。
下は該当箇所の抜き出しです。
【(3) は準備中】
(4)《現在は註釈のみ》
この章2つ目のカントの引用。出典は7-5と同じ『たんなる理性の限界内の宗教』。その第4編第2章 § 2(だと思います)にある次の文でしょう。ネタ本で125ページ、241番。
機械翻訳とは書きましたが。ここに出てくる "Afterdienst" という単語は独特の意味があるカント哲学の用語のようで、「偽奉仕」という定訳があるようなので、そのように手直ししました。意味がよく飲み込めていませんが、「実際には相手の意図をぶち壊しにするようなやり方で、相手に仕えること」??
ロシア語訳では「迷信」(суеверие)となっていますが、それが適訳なのかも、確認が必要そうだと思っています。
(5)リヒテンベルクは次の人。解説中に、トルストイが高く評価していたというようなことも書いてあります。
(なお、この人の引用は第11章のエピグラフにも出てきます。)
この人の著作としては「Sudelbücher」が有名だということです(タイトルに定番訳はないようです。訳書では「雑記帳」など)。
さて、トルストイ全集の解説によると、ここの引用の出典は "Vermischte-Schriften", Band. 1-4. Göttingen, 1800-1802. 。
これは基本的に Sudelbücher と同じものであるようだ、ということで、少し調べてみたら、当該の文章に行き当たりました。
次のサイトは、正直、広告とかゴテゴテ表示されて見づらいのですが、中身はしっかりしているよう。
(クッキー云々の表示が出ますが、一旦戻ったりするとやり過ごせるようです……多分。)
このページから「L」のところに行き、[L 275] という番号のついている文章(の一部)です。