本好きです。となかなか言えなかった話


学生時代、地元の大型書店でアルバイトを始めたのをきっかけに、ずっと離れていた本が、ふたたび身近なものになった。

幼少期のころは、母が毎月絵本を注文していたので家にある大量の絵本をたくさん読んでいた。小学校に上がっても、物語を読むことが大好きで授業中に空想したことを紙に書いて母に読んでもらっていた記憶もある。

小学校半ばくらいから、ゲームサイトのようなところに今でいう二次創作みたいなものを書いていたし、どこに出すわけでもないけど物語をワープロに打ち込んでいた。(なかなかに黒歴史である)

そんな空想大好き、物語大好きだった小学校時代。

中学にあがると、「本を読む=真面目でダサい」みたいな空気があって、ほとんど読むことはなくなった。それは大学まで続いた。

ひょんなことに書店でのバイトが決まって、一回のお会計で何十冊ものビジネス本や小説を買っていく人たちを見ると「はて、本ってそんなに面白いものなんだろうか」と、過去のわたしは何処へやら。そんなことを思った。

試しに、その日お客さんが買っていった本でPOPの帯文に面白そうなことが書いてあった本を一冊だけ買って読んでみた。それが伊坂幸太郎の「首切り男の協奏曲」。あまり興奮するほど面白いとは思えなかったけど、それをきっかけに再び物語の面白さにのめり込むになった。

それからしばらくは伊坂幸太郎の小説ばかりを読み、伊坂幸太郎の小説全部読むぞ!なんて意気込んでいたが、あれから3、4年は立った今も達成されてはいない。

とはいえ当時のわたしはK-POPオタクであり、三度の飯よりライブのお金が最優先だったので、800円の化粧水を買うことすら躊躇していた。だから、本を買うことにあまりお金を割けずにいた。しばらくして「大学の図書館があるじゃん」と気づき、無料で本を借りれることから今まで手は出していなかった新書なども読むようになった。

その頃、卒業後どうするのかという友達との会話で「東京にある大型の書店で働いてみたいな」と言った時、「ああゆう場所で働く人って、本当に本が好きな人じゃないと無理そう。専門書とかそうゆうの読んでそう」と言われて、「確かに・・・」となったのを覚えてる。

その頃のわたしは、周りよりは本を読む人ではあったけど、本が好きです!とか読書家です!とは言えなかった。書店に置いてある2000円以上もするものを買って読むことはなかったし、わたしが普段読んでいたものは誰もが知っているようなものばかりで珍しさもないもので、なぜかそれに対してすごく「こんなレベルで本好きと言ってはいけない」なんて思っていた。

卒業して手にするお金が得たのと同時にK-POPから離れたことや旅行になかなか行けない環境になったことをきっかけに、本にかけるお金が大学生の頃とは比べ物にならなくなった。本屋にいき、本を選び、それを読む。その行為が当たり前になっていった。今までなら、「高いから」と思っていた文芸書も「高くても、読みたいから」買うようになった。

本を読めば読むほど、自分の世界が広がる感覚があった。恥ずかしながら、小中高と真剣に勉強をした記憶がなく、別のこと(ゲームや音楽など)に情熱と時間を注いでいたので、この頃にようやく「何かを学ぶ楽しさ」を知り始めた。

自分の中で「本好き」な人たちや「読書家」な人たちは、分厚い難しそうな本を読んでいて、平台に何冊も陳列されているような本ではなく、あまり知られていないような本を読む人たちだと思っていた。実際、そうゆう人たちがごまんといるし、そうした人たちが読んだ本の情報を流してくれるおかげで新たな本を知ることもできる。

でも、だからといって、自分が本好きではないのかとなると、違う。今ならはっきり、自分は本が好きだと言える。自分の赴くままに本を手に取って、それを読む。そしてその時間がなにより幸せな時間で、本屋にいる時間が至福のひと時。十分すぎるくらい、本が好きじゃないか。

ご飯を食べるみたいに、本を読む。

その本がどんなものであっても、そこに優劣はないんじゃないか。

本を読むことにさえ、私は他人の目を気にしていたんだな、と今思う。

他人がどうであれ、自分が楽しくそれに熱中できているなら、それでいい。それがいい。好きって気持ちは、何よりも強い。


本が好きで、本屋が好きだから、

もっともっと、本を読むひとたちが増えていってほしいと思う。本を読む楽しさを知ってほしいと思う。わたしのように、なにか一つのきっかけがあればいい。物事は、「きっかけ」があるかないか、な気がする。いろんな「きっかけ」に出逢いたい。いろんな世界を知りたい。自分が見ることのできる世界を、広げたい。だから、本でその「きっかけ」を作っていく。


もっともっと、この業界が盛り上がってくれることを、願う。


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