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南米冒険記。~ボリビア①~

「ポーン。」

シートベルト着用サインが消え、小さな機体のドアが開く。

薄々感づいている。正面からゆっくりと迫りくる違和感は、少しずつだが着実に、知識と感覚の差を埋め合わせていく。

死ぬまでに行きたい場所”の常連、ウユニ。その魅力は、はたして分かりやすいまでの「絶景」なのだろうか。

僕はそれだけではないと思っている。ウユニをウユニたらしめるものは何か。今から8年前の2012年、友人4人と雨期のボリビアを訪れた時のことを、少しだけ書き留めておきたい。

日本出国から、まるっと2日間。貧乏学生が手にした格安航空券は、たやすく目的地へ誘ってはくれない。日本⇒アメリカ⇒メキシコ⇒ペルー⇒ボリビアと、計4カ国、3回のトランジット。60Lのバックパックを最終目的地で受け取る身体は、既に疲労困憊だ。

移動疲れだけではない。入国審査を終え、タクシーに乗り込む前に呼吸を整える。友人4名のうち、女性2名は軽い高山病にかかっているようだ。南米最貧国、ボリビアのエル・アルト国際空港。標高4,000mは伊達ではない。

空港からタクシーで移動すること30分。事実上の首都、高山都市「ラパス」は、山に囲まれた独特の雰囲気を醸す。

ホテルに着くと、男3人は現地のビールで乾杯。(身体が慣れるまで、アルコール類の摂取は控えたほうが良いのだが。)2名は横になり休憩。

ここは2つ星ホテル。シャワーからの温水は期待できない。温いビールを流し込みながら、日中乗ったバスの、銃痕らしきガラス穴を想い出す。夜中は”怪しいパーティー"が各所で行われているようで、ガイドブックやHPには外出厳禁の文字がおどる。まあ、扉に鉄格子があるだけマシだろう。人の意思に左右されない無機質さが、見慣れぬ地では逆に頼りになる。

翌実。賑やかなラパスの街を、バス乗り場に向かって歩く。ウユニ行きのチケットを手に入れなくては。寄り道しながらぶらぶら歩いていると、

「アミーゴ!」

と威勢のいい行商。うーん、この人に取り、人類70億人、皆ともだちなのだろうか。そういう”いぶかしい”気持ちを、意識的に切り替えてゆく。これも記念だ。せっかくなので”原色ニットの被り物”を買おう。

「地球の歩き方」なんて読まなくても、相手が吹っ掛けてきていることはよくわかる。日本人の悪い性分だが、1/30まで値切った所で終わりにした。未知の大陸を闊歩する体力は、まだまだ残しておかなくてはならない。そうでなくても、身体が重い。

(ニットを被る友人。)

バス停に着く。こちらも威勢のいい声で売り込みをやっている。

ウユニ行きのバスはどれだろう。変なバスに乗って、どこか僻地に連れていかれやしないか、なんて不安に思えてくる。目的地に向かうにはバスに乗らなくてはならないので(※)、出来るだけ信頼できそうな人物を見極めて価格交渉をする。日本の学校では教えてくれない、商いの原理。ああ、南米に来たのだ、と実感する。

バスのチケットを購入するも、タイミングが悪く出発は明日。それに、何だか熱っぽい。持参した体温計は38℃を示している。何だかな。黄色の常備薬(ベン●ブロック)を流し込みながらホテルへ引き返す。やれやれ、先が思いやられる。

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※2012年頃から、飛行機でも行けるようになったみたいです。

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