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かえで

私の大事な親友が二月いっぱいで寮を出ることになった。

その知らせを書いたお手紙をもらったのが1月半ば。やっと気持ちの整理ができたから、ここに私の気持ちを残そうと思う。

私は、もらった小さな手紙を読んで泣いた。彼女が私から離れる選択を選んだことが、ひたすら寂しかった。以前から、寮出ようか考えてるって話を聞いていたけど、まだ先の話だろうなあって勝手に安心してた。別れの時が静かに近づいてきているとも知らずに。

私は、ほぼ毎日彼女の部屋に遊びに行っていた。一緒にご飯を食べたり、一緒に筋トレをしたり、どうでもいいお話をたくさんしたり、毎日がとても楽しかった。彼女がいたから楽しかった。たまに真剣な話をするときは、どちらかが泣くとつられて一緒に泣いていた。泣いても最後は一緒に笑いあって「何も解決できなかったね」なんて言っていたあの夜も今ではとても懐かしく感じる。当たり前に今の日常が続くと思っていた。

とんだ勘違いだ。

あと一か月で彼女は寮を出る。一緒に過ごせる残りの期間をどう過ごしていくか考えてはいるものの、終わりを意識してしまうとどうしても寂しい気持ちになってしまって彼女の部屋に近づけなくなる。かれこれ1週間ぐらい一緒にご飯を食べていない。一週間、一緒に過ごしていないだけで、私は彼女との接し方を忘れてしまったみたい。自分の中に、不自然さと気まずさを持ち合わせて彼女に話しかける。何を意識しているんだろう、私は。「今まで通り」がこんなに難しいだなんて、誰からも教わってないよ。しんどい。息が詰まる。今まで通りに接したい。でもどうすればいいか分からない。なんとなく彼女からも壁を感じる。いや、私が彼女に対して、壁を作っているからそう感じるだけなのかもしれない。

彼女は、人間不信だけど愛情深い人。そんな彼女が、私には心をひらいてくれようとしていた。それも今ではもう過去の話なのかもしれない。振り出しに戻ったよな気もする。それでも私はしつこく彼女に信じてもらえるように接していきたい。よく彼女は、「めんどくさいって思われたくない」とか「全部を言って重いって思われたくない」っていうんだよね。でも私は、それですら、愛しいと思えるぐらいに彼女のことが大好きなんだ。彼女が不安になったら、しつこいぐらいの愛をあげたい。大切だから、大好きだから一緒にいたいから一緒にいる。私の意志で大切にしているってことが、彼女にもっと伝わればいいんだけどね。

私に愛されてるって自惚れていいんだよって。

ここまでいろいろ自分の想いをいっぱい連ねてみたけど、私は離れていようがやっぱり彼女が好きみたい。今の彼くんと付き合うときに、私は彼女を優先するって言った。最初は、圧倒的彼女を自分の意志で優先していた。でも、お手紙をもらって以降、彼女が私から離れる選択を選んだんだって思ったら寂しくて、私は彼くんを優先するようになった。結局、彼女を優先するだなんて口だけじゃんって、きっと思われている。

わかってる、彼女は私から離れるために寮を出る選択をしたわけじゃない。それを自分が一番わかってるはずなのに、自分の都合のいいように解釈して彼女を傷つけている。いや、彼女はもう心を閉ざして傷つかないようにバリアを張っているのかもしれない。

残り一か月。どこまで彼女の信頼を取り戻せるかは分かんないけど、私はやれるだけやってみる。自分の行動で大切な人をもう失いたくない。

三月からは、別々で生活することになる。その実感が湧くのはきっとまだまだ先のことだろう。扉を開けたら、いつもみたいに笑顔で嬉しいくせに、ちょっと迷惑そうに「また来たの」って言ってくれそうな気がしてならない。






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