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フリー編集者、同人誌のネームを読む

ハーイこんにちは!

漫画家の永田礼路さん(@nagatarj)による記事「兼業漫画家、編集さんを個人で頼む」にてご紹介いただきました、フリー編集者の根本です。

「同人誌で漫画を作るにあたり、個人的に編集者を依頼してみた」というお話なのですが、ありがたくもご指名いただき、楽しい経験をさせていただきました。

経緯は永田さんの記事 ↑ をお読みいただきたいのですが、このたび『螺旋じかけの海』完結巻(5巻)が本になるとのことで、このケースに関して編集サイドから感じたことを書いてみようと思います。

●ご依頼

永田さんからのオーダーは

  • 商業誌で連載していた『螺旋じかけの海』を、そのまま続けていく

  • ひとりで作っていて「この話、おもしろいのか…?」と迷ってしまう/止まってしまうことを防ぎたい

  • ちゃんと伝わるか、わかりづらいところはないか、ネームを読んで指摘してほしい

  • 校正

……ということなので、基本的にいつものお仕事と大差ない、ように見えると思います。


●漫画家さんにとってのメリットは?

永田さんが書かれていることと重なる部分もありますので、簡単に……

  • 「このネームはおもしろいのか?」と迷う時間が減る(永田さんが“最大の敵”とおっしゃるのがこの「迷い」です)

  • 他人に見せるつもりで、期限を切って作れる

  • 「大丈夫!」の反応をもらえたら、そのあとは背後を気にせず作れる、やる気ブーストできる

孤独じゃないと思える&客観的な意見をもらえることは、どんな場面でも喜ばしいですよね。


●編集側は、ふだんの仕事と違うの?

では編集者の仕事で、いつもと違う点を挙げてみます。

・読者が違う
商業誌では、どうしても「はじめましての人が読む」前提で作ろうという意識があります。「序盤から説明過多で引き込まれない」「このキャラ誰だっけ?」などを避けようとしますし、媒体の都合や論理、読者層なども影響します。

しかし、そもそもこの同人誌版『螺旋じかけの海』を読む方は、3巻以降ずっとここまで読んできた&コミティアや通販で買う意思のある読者です。つまり『螺旋じかけの海』の魅力である、複雑で微妙で不確かな心のゆらぎを愛している読者であるはず(わたしも商業版『螺旋じかけの海』に感動して、「いっしょにお仕事したいです」とお声がけした者ですし)。

なので、「わかりづらい」のジャッジラインは、商業とはまったく異なってきます。ほかの同人誌でも(二次創作でも)、おそらくは作者や題材、前提などに前向きどころか前のめりになっている方が読むはずなので、編集者としても意識を変えるポイントだと思います。


・編集長が違う
これがもっとも異なる点です。

「編集長が漫画家本人である」
……つまり最終決定権は100%漫画家さんにあって、編集者として指摘はするけど「永田さんがOKならOKです」で話がまとまる。上で述べた、読者や媒体の論理とは別のところで漫画を作れます。同人誌なのですから当たり前ですね。

気になったことを指摘するときも、「おそらくこういう意図で描いてますよね。(もし商業だったらこう直すかもしれないけど)読み慣れた読者には意図が伝わるので大丈夫だと思います」というスタンスになります。
編集者として「こう変えたほうがいいです」「このまま通すわけにはいきません」と主張することは、ほぼなくなると思います。オーダーにもよりますが……

※ときどきSNSで話題にのぼる“差別的とされる単語”なんかについても、商業での理屈や販売するときのリスクをふまえて相談して、最終的には背中を押す方向でジャッジラインを提示します。「版元が漫画家本人」でもあるわけですね。

・ちなみに
校正については、初手から誤字を見落としていた部分があり、「いくら確認しても、ミスを完全に消滅させることは難しい」という世界の真理のようなオチがついてしまいした(すみません)。この記事やツイートに誤字や脱字があっても許してください。


●同人誌に編集者、意味あるのか?

どんなことでも、「決断するまでの時間」って、無限にかかってしまうんですよね。
結婚式の二次会にはどの服を着たらいいのか、いまの恋人と別れてしまっていいのか、このメンバーでボスに挑んでいいのか。

ひとつ道を選ぶときは、それ以外の道を捨て去っているわけで、ある意味ではストレスでもあり。そこで「あなたの判断、いいと思うよ!」って言葉をもらえたら、自信を持って進めるんと思うんです。

だから、永田さんが迷いなく進められて、予定どおり新刊が出る。そのお役に立てたのだとすれば、じゅうぶんに価値のあることだと思っています。
この作品を好きで、ここまで読んできてくれた方にとっても。


●編集者、もっと活用してもいいんじゃないかしら

「同人誌に編集者をつける」って、面倒が増えるし嫌なことが多そう……って思うじゃないですか。せっかく同人なのになぜ、と。
 (編集者の残念なイメージがSNSで流布しがちですが、それは編集者たち自身の行いで覆していくしかないと思ってます)

でも同人誌の場合、あくまで個人間の依頼なので、編集のスタンスや深度を自由に設定できると思うんです。

「誤字だけチェックして!」とか
「なんでもいいから褒めて!」とか、

「わかりづらいところを挙げてほしい」
「やさ~しく指摘しろッ」
「改善案を聞くだけ聞いてみたい」とか、

「ネームづくりの段階から、意見を聞いて参考にしてみたい」
「もっとドラマチックにしたいけど、どうしたらいい?」
……などなど、関わり方はさまざまで。

内容によっては無料だっていいと思うけれど、500円でも支払うことで“仕事”としてご依頼いただくのが、お互いにとって健全なのかもしれません。

というわけで、編集者ねもとに「ネーム見て」を依頼してみませんか?

  • まずは相談無料。ご依頼は、おためし価格で500円から(一言コメント程度を想定)。ネームをしっかり読んでお返事する場合は、内容と分量などによってご相談いたします。

  • ご希望にあわせたスタンスで、提言を採用するもしないも自由。

  • 原則として、公開または頒布を目的としたものに限る。

  • 二次創作はちょっと自信がないです。

という設定でどうでしょう。
ご依頼はTwitter(X)からどうぞ→ https://twitter.com/nemonemu(DM開放してます)

Twitter(X)やってないよ、メールがいいよという方は、  nemonemunemonemu(あっとまーく)(gmailどっとこむ)
にメールをください。

※ありがたいことに、いくつかお問い合わせいただいております。それぞれ考えてお返事いたしますので、ゆったりお待ちください。

●2023.9/4追記
興味あるけど、ねもとがどんな編集か知らないよ〜という方のために、これまでに携わった商業作品から、いくつか書き出してみます。
(あくまで参考というか、取っかかりのひとつとして……)

・業田良家氏 『機械仕掛けの愛』シリーズ、『男の操』『神様物語』など
・小田扉氏 『フランチャイズ! つくだ☆マジカル』『じんちく以外』
・岡崎二郎氏 『アフター0 Neo』『宇宙家族ノベヤマ』など
・小日向まるこ氏 『塀の中の美容室』(原作小説/桜井美奈氏)、『アルティストは花を踏まない』など
・有永イネ氏 読み切りいくつか(のちにコミティアで頒布)

短編や読み切り連作が多いので、コミティア向き……かも?

サンプルの短編です↓

……お声がけ、お待ちしてます!!!!

●おしらせ

永田礼路さん『螺旋じかけの海』完結!
5巻はコミティア145にて頒布予定! 通販や電子版などもご確認ください~

永田さんと作ったお話のひとつが、短編集『君の薫る星』の表題作です。ほんとすてきなので読んで!

“爆買神”でおなじみ、医総会マンガシリーズでも想定外のご活躍を…!

記事の内容などは、永田礼路さんの承諾をいただいております。
永田礼路さん(@nagatarj)の応援、よろしくお願いします!

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