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電子は水底へ 11

オリジナルの長編SF小説です。

~あらすじ~
近未来の世界で庭師として生きるアンドロイドが、ある日、巨大で奇妙な白い繭を見つけ、大事件に巻き込まれていく。逃亡中に重大な秘密を知り、苦悩からヒトを開放する手段を見つけるため、旅に出るが……

※週に1~2回ほどの頻度で更新いたします。
※少し残酷な描写がございます。苦手な方や、18歳以下の方の閲覧は推奨しません。
※14~17回ほどで完結する予定です。

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長い髪を高い位置で一つに結い上げる。きつく髪紐を締めた。華やかな芥子けしの花の姿が彫られた鏡台の前に立つ。この家で妻と娘が息絶えた時から、生前の2人と同じ長さにしている髪は、すっかり痛んでいる。

朝の仕事を終え、馬で家に帰っていると、いつも静かな俺のテントの近くに人だかりができていた。不審に思い遠くから見ていると、人の輪の中心から、ジャンプールが馬に乗ったまま駆けてきた。

久しく向けられてこなかった人間の満面の笑顔に、一瞬硬直した。

「顔を見にきたぞ。調子はどうだチューラン。大丈夫か?」

「わざわざ、来てくれたのか。ありがとう。何とかやってるさ」

「保存食を持ってきた。十分な量とは言えないだろうが、どうか受け取ってくれ。遅くなってすまない」

「それはありがたい。皆本当に喜ぶよ。恩に着る」

「殊勝だな、お前らしくない。もっと早く来いと怒るのかと」

「俺も歳を取った。もうそんなにはしゃげない」

ジャンプールが豪快に笑う。その声に、心に立ち込んでいる濃霧が少し薄くなった。

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