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第1話<月曜日の昼>↓

真弓は昼ごはんを食べ終えると、早速仕事に取り掛かろうろした。今日は15:00から5人の生徒が家に来る。

真弓は自宅の一部屋を使って、補習塾の先生をしている。

亜紀が帰ってきた。小学生の亜紀は、真弓の補習塾に一緒に参加する。亜紀は、いつも真弓と過ごせるこの時間を楽しみにしてくれている。

玄関のチャイムがなった。真弓はドアを開いた。学校帰りの子供達は、ランドセルを背負ったまま真弓の家に直行する。

生徒たちのほとんどが、両親共働きの家族だ。

真弓はこの仕事に本当にやりがいを感じていた。うまくいっていない結婚生活も、息子との関係も、仕事をしている時だけは忘れることができる。

今日の補習は2時間。プリントをやったり、簡単な授業をしたり、宿題のサポートをする。

授業中に、生徒の親の一人から真弓の携帯に連絡が入った。
「今日もちゃんと来てますでしょうか?週末は塾の宿題も学校の宿題も全然やらず、ゲームばっかりしていて・・・。すみません。厳しくお願いします。」

隼人くんのママからだった。隼人くんのママからはラインによくメッセージが来る。

(あーまた、隼人くのママからだ。ちゃんと来てるって!厳しく!?宿題をしない原因の一部は、私の責任なんだろうか・・・)

隼人くんの様子をみると、明らかに課題をやってそうなそぶりを見せているだけで、他ごとを考えているのか、集中できていない。真弓は隼人くんのそばへ行き、声をかけた。

夕方になり、真弓は生徒たちを見送った。そして、真弓はすぐに、隼人くんのママに返信を書いた。

ちょうどその頃、生徒たちと入れ替わりに部活から終えた長男将也が家に帰ってきた。

「おかえり」
「うん。」

将也はあえてうつむいたままで、真弓と目を合わせようとはしなかった。

(また、「うん」ね・・・。)

夕食で再び顔を合わせるまで、将也と口を交わすのは、恐らくない。将也はいつも家に帰ると、逃げるように二階の自室にこもってしまう。

(私が何か話しても、いやな態度をとられるだけだし・・・。はあ。でも、一体、何様と思ってるのよ!)

真弓はがっかりした気持ちと同時に、ふとした時には、いつも怒りのようなものも湧いてくる。真弓は息子のことがあまり理解できない。これまでも良かれと思って、将也は色々と気にかけてきた。

それでも、将也とはいつも心がすれ違い、真弓を拒絶し、すべて突き返されるような態度に、何度も心が折れてきた。

何度も繰り返してきた息子とのバトルに疲れて、真弓は息子との距離感がつかめず、どう接すればいいのかわからなかった。

真弓は、階段の上を少し眺めて、小さくため息を着くと、キッチンに立って夕食の準備にとりかかった。


⭐️姉妹編「境界線を持つある家族の毎日」はこちらから
https://note.mu/kokoronoeiyo/n/nbf079b5ae3b6


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