「あれ?来たかな?来たきたーっ!!」 都営アパートの角をまがると 直線道路の30mぐらい先から 小さなシルエットが一目散にかけてくる。 茶白猫のモドキだ。 しっぽをまっすぐピンとたてて 「よく来たねぇ」というように 出迎えてくれるようになった。 わたしも毎回、心の中では 両手を大きく広げてモドキにかけよった。 夜の公園で過ごすモドキとの時間は かけがえのないものになっていた。 ちょうどその頃、都営アパートが 建て替えのために取り壊しになることを知った。 住人が引っ越してい
わたしは毎晩20時すぎからの1〜2時間を 夜の公園で過ごした。 モドキが夜ごはんをもらうのは19時半。 わたしが公園に到着する頃には既に食べ終わっている。 公園を寝床にしているわけではないので 食べるためにわざわざ 車が通る4m道路を横切ってやってくる。 どこからきて、どこへ帰っていくのか。 何度か後をついて行ったけど 同じ民家の駐車場から暗闇に消えていった。 もしかしたら違うところでも 違う名前で可愛がられているのかもしれない。 そんな風に思うことも、最初のうちはあった。
スチールの玄関ドアが ガチャッと音をたてて開くと 少し前から近くでスタンバイしていた猫たちは 待ってましたとばかりに アパートの階段下に集合する。 スゴイ。猫の腹時計は正確だ。 2階からサトウさんがゆっくりと、 そして4階からお兄さんが リズムよく小走りにおりてくる。 サトウさんが「まぁーって!」といいながら、 何枚もの白いプラスチック鉢皿に 猫たちのご飯を盛っていく。 お兄さんも猫たちに変わったところがないか 声をかけながら見てまわる。 毎晩、毎晩、必ず。 お兄さんによ
小さなころから動物は得意ではなかった。 動物好きな母がどこかで撮ってくれた うさぎを抱くわたしの表情は、とても険しい。 たぶん3、4歳くらいのことだけど うさぎを渡された時の感覚は思い出せる。 怖かった。 その後も犬や猫と一緒に暮らすことなく育ち、 遊びにいった友人宅や 仕事でお邪魔したお客様宅でも 苦手を悟られないよう うまく乗り切ってきた。 そんななのに、あの夜の公園で たくさんの猫にあったあとは 毎晩、家と公園を往復するようになっていた。 猫たちはみな地域猫で そ
その公園にたどり着いたのは 夕食後に散歩するようになって2〜3週間たったころ。 「外出を自粛してください」というニュースのおかげで もしかして運動不足なんじゃないかと気になったわたしは 家の近所だけど、ふだんは歩かない道を歩くようになっていた。 その公園は都営アパートに隣接して細長いかたちで 子どもの代わりにリラックスした感じの大人が3人立っていた。 暗くても、遠目でも、なんとなくウェルカムの空気を感じて近づくと 「こんばんは〜」とお兄さん。(よかった!) そして、猫。一目
はじめまして。モドキといいます。 モドキはわたしの人生をかえた猫の名前。 noteを始めるきっかけをくれた彼は 推定5、6歳の茶白猫。 大胆に水平カットされた右耳がトレードマークで 顔はほっかむりした昔の泥棒みたい。 もちろんモドキは泥棒なんかじゃないけど、 わたしの心はがっしりとつかまれて、うばわれてしまった。 これから、モドキのことはもちろん 日常のこと、仕事のこと、旅のこと 素直な気持ちを書いていきます。 よろしくおねがいします。