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見つけてもらった?

スチールの玄関ドアが
ガチャッと音をたてて開くと
少し前から近くでスタンバイしていた猫たちは
待ってましたとばかりに
アパートの階段下に集合する。
スゴイ。猫の腹時計は正確だ。

2階からサトウさんがゆっくりと、
そして4階からお兄さんが
リズムよく小走りにおりてくる。
サトウさんが「まぁーって!」といいながら、
何枚もの白いプラスチック鉢皿に
猫たちのご飯を盛っていく。
お兄さんも猫たちに変わったところがないか
声をかけながら見てまわる。
毎晩、毎晩、必ず。

お兄さんによると
モドキは数年前から来ているらしい。
いまは誰かにご飯を横取りされそうになっても
ゆずってしまうような、やさしい性格だけど
以前はどこかでケンカして
顔中、血だらけにしていたとも聞いた。

わたしが出会ったモドキは
お兄さんにガシガシなでられるのが好きで、
サトウさんがカンカンカンカーンと
マタタビの容器をたたくと
遠くから走ってやってくる、
おだやかで、かしこい猫。

モドキはいつから、わたしのことを
わかってくれるようになったのか・・・
たぶん、わたしが思っているより
ずっと、ずっと早かったんだと思う。
いまはそうとしか思えない。
わたしが公園通いを初めて1ヶ月ほどしたある夜
モドキはヒョイッと膝にのってきた。
なかなか気づかないわたしに
モドキから「見つけた」とメッセージをくれた
最初の出来ごとだった。

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