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よく来たねぇ

「あれ?来たかな?来たきたーっ!!」

都営アパートの角をまがると
直線道路の30mぐらい先から
小さなシルエットが一目散にかけてくる。
茶白猫のモドキだ。
しっぽをまっすぐピンとたてて
「よく来たねぇ」というように
出迎えてくれるようになった。
わたしも毎回、心の中では
両手を大きく広げてモドキにかけよった。
夜の公園で過ごすモドキとの時間は
かけがえのないものになっていた。

ちょうどその頃、都営アパートが
建て替えのために取り壊しになることを知った。
住人が引っ越していくまであと3ヶ月。
そのあと猫たちはどうなるの?
心配になったわたしに
お兄さんとサトウさんが教えてくれた。
「アパートはなくなるけど公園は残るし、
猫たちのご飯は近所の人にも協力をお願いして
当番制にするから大丈夫。
病気がちなボスと、あと数匹は保護してもらう」
ふたりは誰よりも猫たちを大切にしている。

モドキとは、これからも変わらずに
夜の公園で会い続けられる!
そのときは、ホッとしたのを覚えている。

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