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nekonomimi1026
2023年9月11日 22:19
題名: 連綿と続け(あらすじ)東京都八王子市で生まれ育った一ノ瀬侑芽は大学を卒業し、富山県の南砺市役所に就職が決まった。南砺市では人口と観光客が年々減少し、その回復が急務となっていた。その為には地域の人々の協力が必要となり、その間に入る担当者として新人の侑芽が選ばれる。様々なことに苦戦する侑芽であったが、足を運ぶうちに地域の人々の暮らしぶりやそれぞれの思いを知り、観光だけに頼らず地域の
2023年9月13日 02:09
侑芽は一抹の不安を覚えながら車窓から流れる景色を見つめていた。そこには日本の原風景とも言うべき風景が広がっている。砺波平野は庄川と小矢部川に挟まれた扇状地で、そこかしこに水路がひかれ田畑を潤している。その水田に点在するのが農家の屋敷で、屋敷を囲む木々の事を"カイニョ“または"カイナ”と言う。スギやアスナロ、ケヤキといった大木や柿の木やカエデ、ツバキなども植えられている。
2023年9月13日 23:15
侑芽と高岡は富樫に連れられ八日町通りにある純喫茶「あいの風」に入った。席に着くと店主の庄司礼子が声をかけてくる。礼子)おっ、富樫くん!いらっしゃい。久しぶりやね〜富樫)ご無沙汰しとります!もう、くたびれてしもたさかい、ちょっこし休憩させて〜礼子)ええに決まっとるちゃ!それよりこちらのかいらしい(可愛らしい)お嬢さんらは?富樫)あぁ、そやった!この2人はね、今日から入った新人さん
2023年9月14日 20:41
侑芽は航に睨まれたまま目を逸らすことができない。西川と航は小中学校の同級生なのだが、性格が合わず、昔からあまり口をきかなかった。だから大人になった今も、さして話すこともない。だが歌子は子供の頃から知っている西川を可愛がっており、親しく話し込んでいる。すると玄関先まで航がドンドンと大きな足音をたててやってき来た。そしてものすごい剣幕で怒鳴りつける。航)やかましい!何しに来た
2023年9月17日 00:13
侑芽の噂が街中に広まっている頃、当の本人は、よいやさ祭りの打ち合わせで井波八幡宮に来ていた。ここはかつて井波城という中世の城があったという。戦国時代、越中一向一揆が勃発し一向宗の総本山となったのが瑞泉寺でその目と鼻の先にあるこちらが彼らの拠点となった。今ではその動乱が嘘のように静まり返り城の痕跡は土塁や枡形など僅かに残っている遺構だけである。緩い石段を上がっていくと参道から
2023年9月18日 00:56
それから数日間、侑芽は井波よいやさ祭りのパンフレット作りに取り掛かっていた。デスクワークをしていると、外回りから戻ってきた高岡が隣の席にどかっと座り大きな溜め息を吐いた。高岡)はぁ……そりゃあ誰かさんはやる気になるよねー。あんなイケメンと一緒に仕事できるんだからさー。あたしなんて自転車で走り回って、爺さん婆さんの話を延々と聞かされたり、富樫さんから雑用任されたり…ほんっと不公平だわー
2023年9月25日 23:58
侑芽が航に飴玉を渡す。それを受け取ろうと航が手のひらを差し出したその時、侑芽が航の手に触れる。航)え?…な、何!?「父と同じ手」と呟き懐かしそうに航の手に触れる侑芽。航)……!?航は驚きつつも拒むこともせず、それを受け入れた。航)親父さん…何の仕事しとるが?侑芽)自動車の修理をする町工場で働いています。子供の頃、父と手を繋ぐと分厚くて繋ぎにくくて(笑)ちょうど、こんな
2023年10月25日 13:50
祭りの準備が進む中、富樫から電話で思いもよらぬ知らせを受ける。富樫)急で悪いがやけど…上からの提案で連休中に市内で"街コン“することになったさかい、その準備も宜しゅうね〜侑芽)街コン!?街コンとは街ぐるみで行われる大型コンパイベントである。イベント会社と地域がタックを組み、男女の出会いの場を設けるもので、参加者は開催地区の定められた複数の飲食店を廻るため、地域振興にも役立てられて
2023年10月25日 16:00
侑芽は早退したが、結局家で仕事をしている。そこへインターホンが鳴り、部屋着のまま出ていくと西川が心配そうにして立っていた。西川)急に来てしもてかんにん!倒れたて聞いて…ちょっこし心配になってしもてな。あっ、良かったらこれ食べて?そう言って侑芽に何かを渡してくる。それは富山県産イチゴ「かおり野」であった。その名の通り、ふわっとイチゴの香りが漂ってくる。侑芽)わぁ…いい香り!でも、わ
2023年10月25日 21:01
市役所に到着した航は、意を決した様子で歌子から渡された差し入れを持って中に入っていく。ところが侑芽が在籍している観光推進課の場所がわからずキョロキョロとあたりを見回していると、たまたま通りかかった高岡が駆け寄ってくる。高岡)あれ?確か昨日お会いしましたよね?どうされたんですか〜?まさか私に会いに来てくれたんですかぁ!?勘違い甚だしい高岡はいつもより声のトーンが高い。航)いや、ちょ
2023年10月25日 21:38
航)あの…侑芽)え…どうかされましたか?侑芽は驚きつつも首を傾げている。航は掴んだ手を慌てて引き航)か、かんにん!あんな、この前もろた飴…あれ、けっこう美味かったさかい…その…侑芽)あぁ。飴ならまだありますよ?そう言ってバックの中から飴玉を取り出している。航はあの時のように片手を広げ深呼吸をしてから航)こんな手で落ち着くんやったら…、その…いつでも貸すさかい侑芽)
2023年10月28日 01:16
侑芽に恋心を抱いていることに気がついた航は、項垂れながらベッドに寝っ転がった。脳裏に浮かぶのは侑芽の笑顔とあの言葉だ。"お兄ちゃんだと思ってもいいですか?”枕に顔を伏せ「あ〜っ!!」と行き場のない感情を叫んだ。一方、侑芽は体調が回復し祭りの関係先を回っていた。侑芽)ご心配とご迷惑をおかけしました西川)な〜ん。元気になって良かった。ほんま無理せんと、僕も手伝うさかい何でも
2024年1月8日 12:47
皆藤家で出会った春子と武史。2人は時が止まったように見つめ合っている。その様子を皆で不思議そうに見守っていたが、侑芽が申し訳なさそうに侑芽)あのぉ…。私そろそろ、となみ荘にいかないと…親が待ってるので…歌子)そ、そうちゃね!早う行ってあげて!正也)久しぶりやろうから家族水入らずでゆっくりしてこられ!航)おい武史、やわやわ行くぞ武史)おぉ…。そうやったな侑芽、航、武史
2024年2月13日 16:49
航)せっかくやし…このままデートせん?侑芽)デートですか!?嬉しい〜!侑芽は思いがけない誘いに心が躍る。二人にとって初めてのデートだ。空港を出発し、富山市内を見渡す小高い丘の上に到着した。そこは立山連峰も一望できる眺めの良い公園だ。航)ここは呉羽山やちゃ。侑芽)ここが呉羽山かぁ!聞いたことはあります!航)立山見るがはここが1番ええ思う。今日は天気が最高やさかい、よう見