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ホワイエで体に良さそうなパンを食べる

ざわつく劇場のホワイエは、既に老若男女が集まっている。
夜からの「あれ」に備えて空腹を満たすため、食べ物を扱っているブースをまず探す。

コーヒーブース、お土産ブース、関連商品のブースを通り過ぎた。
食べ物のブースは、小さなパン屋と果物屋だけだ。

本当はおにぎり等の腹持ちの良いものが食べたかったが、生憎この場にはない。近くにコンビニもない。限られた選択肢の中から私は、いかにも体に良さそうな米粉のカレーパンとココナッツクリームパンを購入した。


音楽を奏でて踊る人々、お喋りを楽しむ人々、写真を撮り合う人々、展示されている新聞アートをマジマジと鑑賞する人々。まるでお祭り会場の様なその場所で各々好みの過ごし方をしている。馴染みのないその空間にアウェイ感を感じつつ、私は新聞アートの裏でこっそりとパンを食べることにした。

いつもの様に騒音をBGMに変換し、ココナッツクリームパンにかぶりつく。

おや?これは恐らく、甘酒クリームを使っているな。

社会人になり財布に余裕ができてからというもの、体に良いとされる食べ物は大抵試してきた。甘酒クリームも、砂糖不使用で植物性だということで試したことがあったのだ。そう、私は重度の健康オタクなのだ。体に優しい素材で作られたパンとういうだけで、自然と口角があがってしまう部類の人間だ。


そうこうしている内に、人々の流れができはじめた。
ホールが開いたのだ。

今日はこれから「あれ」がはじまる。都心の学生なら一度は参加したことがあるという噂だが、青春時代を地方で過ごした私にとっては初めてで、死ぬまでに一度は体験してみたかった「あれ」だ。


どのような流れで、どのような段取りで、どのようなコミュニケーションで進むのだろうか。もしかしたら近くで芸能人を拝めるかもしれない!

そんな期待と一緒に最後の一口を頬張り、口の中を水分で潤した。
さぁ、準備はできた。
ドキドキしながら人の流れに交じり、私もホールへと向かいはじめた。


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