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西加奈子『うつくしい人』を読んで

ものすごく、嫌なことがあったとき。

後から考えてみたら、その時自分は途方もなく傷ついていたんだと思う時。

私にもあります、誰にだってあります。

事件が起こっている最中は、そのことを「事件」として認識できない、というのが私の持論です。

その「事件」が終わった後、なんだか苦しい気持ちになって、ずーん、と、どよーん、とした気分になる。

その心を晴れ渡らせるきっかけになったのがこの本です。

会社でハラスメントをされて逃げ出した女性、冴えないバーテンダー、そしてうつくしい日本語を話すマティアス。

彼らの瀬戸内海での日々は、本当にそういった「悲しみのはぐれもの」の日々だったようにさえ、思うんです。

そんなはぐれものだって、いいんですよ。

悲しみはいつか結晶化して、思い出となってきれいなかたちになります。

いつか笑える時が、来ますよ。

きれいに風化していく時が、来ますよ。

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