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【詩人の読書記録日記】栞の代わりに 3月13日~3月19日

はじめに

こんにちは。長尾早苗です。
今週から本格的にもろもろスタートします!
今週もどうぞよろしくお願いいたします。

3月13日
昨日のこともあり、だいぶ夜遅くまで起きていたのですが、聞けなかった礫の楽音を聞きました。
昨日は、ツイッターのスペースでリアルタイムで問題が起こっている地域の方と絶対につながっていたかったので、彼女のシェルターでの手記と日本語訳を聞いていました。絶句をし、また、今日になって彼女たち彼らたちに届けられることばを探して、Webの辞書で翻訳して届けました。
新作一編。どうしても長くなってしまいました。

・クラーク 池田真紀子訳『幼年期の終わり』光文社古典新訳文庫

オーヴァーロードという宇宙人が文明と星を超えてやってきたら……。
SFの名著ですね。
文学ラジオ空飛び猫たちで放送されていたので読んでみました。
何かに隷属し続けるとしても、己の魂を蔑んではいけないし、
そういうことが本当に大事なことだと思います。
絶対的な君主がいたとしても、
それがどんなに強大でも、
わたしたちはわたしたちであって、
わたしはわたしです。
己の魂を、改めて大事に見つめ直していくきっかけになった本でした。
また読めてよかったです!

・辻征夫 谷川俊太郎編『辻征夫詩集』岩波文庫


近所の人に話しかけるようなことばで詩を書く詩人。
先日の礫の楽音で、大崎清夏さんが言及していたので読んでみました。
小さな頃に読んだ詩もいくつかあり、彼の日記のように、生活や暮らしと行き交うことばたちがすごく贈り物のように思えました。
わたしもこんな平明なことばで書き続けていきたい。

・吉野弘『吉野弘詩集』角川春樹事務所

現代詩を書く方はぜひ読んでほしい詩集です。
I was born は名作ですし、不朽です。
吉野弘さんはなにものかが生活の中に入ってくる時、その事象をまっすぐに見つめ、ことばというものを始終考えていた人なんじゃないかなと思いました。
例えば、このことばは受動態であるのか、とか、それについての自分の思いもことばの並べ方や意味などに見出していく点が多いように思うんですね。
それは現代詩にとって非常に重要であると思います。

・上田敏訳『海潮音』新潮文庫

いつ読んでも、美しいなあ
と思います。
森鴎外に捧げられた詩集ですが、この時代にこんなにも翻訳者として詩を編む人がいたということに改めて感慨を覚えます。
翻訳することは、その土地の文化や場所、そこに根づくことばを用いなければいけません。
それを日本語にするには、相当の努力と労力が必要です。
海潮音は名著だと思っていて、また読めてうれしかったです。

・髙田郁『八朔の雪』角川春樹事務所

胃袋と心って、実は密接なんですよ。
わたしはお腹が空くと怒り狂うという気質を持っているので、常に空腹の時間がないよう工夫をしています。
美味しいものを作って食べる。
美味しいものを作ってもらって食べる。
これ以上に満たされることって、この世にないと思うんです。
わたしが食いしん坊なだけかもしれませんが……。
このシリーズのみをつくし料理帖は、ドラマで好きな俳優さんが出ていて、食べたくなったり、先日の朗読会で同じ作者の方の別の作品を朗読されていたので気になって読みました。
何度か読んだのですが、やっぱり寒い季節のものがいいと、八朔の雪を選んでみました。
日々満たされるために、生きるために食べること。
これ以上の大いなる平凡と大いなる平和はないと思っています。

・黛まどか『星の旅人』角川文庫

スペイン版の奥の細道。
俳句を詠みながら、歩いていく、旅していく知らない場所。
最近わたしの中で、生活と暮らしと場所、そこに関わる人々というのがすごくアツいんです。
きっと、その流れはどれも有機的に連なっていると思うから。
それを写真のように切り取っていくのが俳句だと思っています。
なかなか旅をしづらいご時世になってしまい、明日何が起こるかさえわかりませんが、
日々自分の暮らしの中で、どこにいるか、誰といるか、どんな場所と自分の創作が結びついているのかを日々探求し続けていきたいです。

3月14日

新しい週がやってきました。新作一編。
今週は本の話をしに都内に行って、髪を切り、週末に友人とお茶することにしました。
さて! 今週もがんばるぞ。
今日はホワイトデー。
いつもいつも、ありがとう。

さくら一番!
きれいだねえ。
黄色が鮮やか。


ミモザのネイルオイル!
かわいくて何度もかわいいを連発しました。
ぺこりとおじぎするパンダ。


3月15日

〆切を一つ送りました。ゲラをチェック。
文学フリマ、3つの雑誌の寄稿で参加する予定です。
気温があったかくなったり寒くなったりで大変ですが、みなさま気をつけてお過ごしくださいね。

モクレン満開日和!
こんなところにも春が。

3月16日

昨日思いっきり充電して、充電完了。
こまめにアプリのラジオ体操をしています。新作一編。
昨夜ゲラチェックを済ませ、今日は郵便局に行ってゲラを郵送しました。
昼食をとってから書物の旅へ。今日もいい出会いがありますように。

・イアン・マキューアン 村松潔訳『恋するアダム』新潮社

イアン・マキューアンに対しては鬼才という意見をよく耳にしていましたが、
こんなにすごい文章を書く、または思いつく人なんだとびっくりしました。
もしも、限りなく人間に近いアンドロイドが現れ、そして彼らが人間と限りなく接するとしたら。
アダム、という名のそのアンドロイドを手に入れた不甲斐ない男性は、しょうもない恋愛関係においてアダムを利用しようとするのですが、
アダムはその相手になんと恋をしてしまいます。
これを読書会のテーマ本にするなら、アンドロイドと恋はできるか、アンドロイドと相思相愛に慣れるかがテーマになってきます。
アンドロイドはアンドロイドなりに、不完全な部分があります。そして、その「読めない空気」というものは人間にもあるものだけど、何もかもがルールに縛られているというものに対してはわたしはあまり共感できません。
ハプニングなどが起こってこそ、人間はおかしみや人情を感じることができるからです。
完璧な人生や完璧な毎日を送るより、もっと豊かなものがあったり、もっと欠落したものがあってこそ、良い生き方だと言える、と確信を持ちました。

・アン・モロウ・リンドバーグ 吉田健一訳『海からの贈物』新潮文庫

女性の幸せ。
年代によって変わっていくものだと思いますが、
ある意味普遍的なテーマだと思います。
今、結婚するかそして子どもを産むか仕事をするかなど、わたしたちにはさまざまな幸せの価値観があり、常にそれと対峙していかなければなりません。
もしかしたら、その対峙している時間こそが豊かなのかもしれないと思います。
リンドバーグ自身も、有名な飛行家である夫と、飛行家である自分のキャリアを考え、
海から贈られたものは海へ返すという名目でこの本を書きました。書くという行為は自分の内面や自分の全てを言語化するという行為でもあります。自分が生きてきた道と照らし合わせ、それを言語化していく。
そこに海と貝殻、というまだ誰にも見つかっていない漂流しているものを見ながら考える、なんて素敵なことなんでしょう。

・ドナルド・キーン『ドナルド・キーンの東京下町日記』東京新聞

言いたかったことをきちんと言語化されるって、こんなに気持ちのいいことだったんですね。
実はわたしはこの連載のファンで、
大学の図書館にほぼ毎日のように通い、キーンさんの連載を読んでいました。
だから、最初は辛口だなぁなんて思ったりしたのですが、そうか。最初は日本という国に対して、僕はお客さまだという感情があったんですね。
でも、日本国籍を取得されたら
「言いたいことを言う」という方針に変わられたそうです。
文学は時に政治的でもあり、暮らしに根付いている部分も多々あります。
その中で、モヤモヤしていたことをきちんと言語化されることはスッキリしました。

・デイヴィッド・イーグルマン 大田直子訳『あなたの脳のはなし』早川書房

脳と人間、そして意識と無意識のこと。
わたしが最近特に気になっている分野でもあります。
脳の仕組みや、いわゆる天才と呼ばれた人々の脳、そして赤ちゃんの脳を研究していけばいくほど、謎が深まっていくのですが、
ある程度脳のクセみたいなものを自分自身で掴んでおくと、のちのち暮らしにも豊かな影響を与えることをわたしは実体験として覚えています。
自分の脳がいつ活性化されるのか、またそれがどうしてなのか、人間というものの不思議。
そういった疑問に答えてくれるヒントを教えてくれる本です。

・阪田寛夫『阪田寛夫詩集』角川春樹事務所

よく最近思うのが、阪田さんの生きていた時代に彼がツイッターやSNSを使っていたらということなんですね。
彼の詩はとてもわかりやすくて、短くほんとうのことをついてくる。
そこに多分にユーモアも含み、ちょっとほんのりいろんな気持ちにさせてくれたりもする。
そういうの、今やってみたら面白いんじゃないかと。
いわゆる140字詩みたいな効果があると思うんです。阪田さんの詩。
でも、彼の詩をやっぱり紙で読むと、
この言葉の選び方はセンスがずば抜けているなと感動するんですね。
会いたいなあ、そして今、わたしもそういうことが出来る様に日々、精進していきます。

・竹田信弥 田中佳祐『読書会の教室』晶文社

読書会にすごく憧れがあって、この本を読まないと始まらないなと思っていて、読めて幸福です。
わたしは詩については自分の詩を自作・他作ともに読み合う会を他の詩人たちと一緒に開いています。
そのきっかけになったのが、流行病前に双子のライオン堂さんで不定期に開いていた合評だったんですね。
読書会もそうですが、自分が好きなテーマに対してこんなに熱く語れる会ってほとんどないような気がしています。
だからこそ、いつか……という思いはありますし、この本に出ていたようにオンラインで開いてみるのもありかなぁと思ってみました。
この本では具体的なノウハウはもちろんのこと、読書会の朝の自分の心構えについても書かれていて、とってもわくわくしました。
双子のライオン堂さん、今はラジオやYouTubeで応援したり、お仕事もご一緒させていただいていますが、都内赤坂近くに行く予定があればすぐに伺いたくなりました。

3月17日

今日は都内に行きました。
やっぱり本が好き!
読むのはもちろんのことですが、
自分で創作するのも、そして一緒に本を作るのも、話し合うのも、買うのも。
読みたかった本を買ってきました。


3月18日

今日は2か月ぶりの満月の日なので、髪を切ってもらいました。
わたしはすごくくせ毛なのですが、もうそろそろ縮毛矯正しないとなあ、
でも今の髪が好きなんだよなあと、葛藤。
美容師さんと会うのも2か月ぶり。たくさん話しました。

・國松絵梨『たましいの移動』七月堂

今年の中也賞受賞おめでとうございます!
深淵会やインカレポエトリで國松さんの詩をよく読んでいましたが、いい意味で舌足らずなことばたちが集まっています。
そして、それらが甘い気だるさと共に書かれている点が多くあって。
チョコレートのように眠い
なんてものすごい比喩だと思っていました。
漢字の開き方もやわらかく、それでいて散文詩にも強度がちゃんとある。
余白に余韻を持たせるという意味でも成功している詩集だなと思います。
また新作を読みたいな。

・うるし山千尋『ライトゲージ』七月堂

今年のH氏賞受賞おめでとうございます!
「返戻」という詩がまさに今のわたしなので、すごくわかるというか。
神様はわたしの頭の中にいる。
それがほどけていくとき、光になる。
スピンも青い色なのですが、うるし山さんはきっと、海というものが好きなんだろうなと思いながら読んでいました。
海からもらったものは海へ返していく。
今週読んだ本にもそんな記述がありますが、すべての事象は起こったこと、そして起こったことに対しての「お返し」なのかなと思いました。
なにかの恩返しであったり、わたしたちが生きている、生きてきたということに対しての戻していく作業なんですね。
わたしはまさに図書館に通って本を読むという行為をそのミニチュア版だと考えているんです。
もちろん応援したい作家たちはいるし、その人たちの本はもちろん買うのですが、
返すこと、戻すことにしかできないなにものかがあるよとちゃんと教えてくれた詩集だなと思います。

・原田ひ香『三千円の使いかた』中公文庫

三千円はちょっとの贅沢の日常だと常々思っています。
眺めの良い景色の場所に行って、よいと思う本と、一杯のコーヒーと、小さなケーキ。それでおしまい。
または、大好きな友人とちょっといいランチを食べに行ってからカフェに行く。おしまい。
そんな些細な贅沢だと思うんですね。
でも、多くの人が思うのは、もっとお金があったらなあということなんです。
わたしは自分が好きなものというものをすごく吟味していまして、それがいつまで着られるか、使えるかということに常に思考の比重を置いています。
この本の中の登場人物は、みな節約家だし、お金の使い方も含め、時間の使い方がとてもうまいと思っているんですね。
三千円で本を買う、マックに行く、財布を買う。
そんな中で見えてくる、お金と贅沢と女性たちの物語。
お金で買えないものはもちろんあるし、そしてそのためにお金を使うというのはとても豊かな生活のように思うんです。
だからこそ、時折そういう贅沢って、いいですよね。
そんなことを考えていました。
今日の夕食は何食べようかな。

3月19日

今日は自分の創作について違う目線で考えていきたいので、画材を買ってきて絵を描きました。
さてさてまた新しく、明日からもがんばるぞ!

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