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朝井まかて『類』を読んで

みなさんは、森鴎外の娘や息子たちが、みんな外国人のような名前であること、ご存知でしたか?

森鴎外の末の息子、類は、画家を志している。姉の茉莉や杏奴は文筆業で名をはせていたが、類には「父・森鴎外」という超えたくても超えられない壁があった。類もやがて文章を書くようになり、父への葛藤は極度になっていく。

天才・文豪と呼ばれた父。

そんな有名人で実力も兼ねた父の前では、どうすることもできなかった類。

まかてさんの小説には他にも「眩」(北斎の娘が主人公)だったり、歴史小説として「有名人の子ども」を扱った小説が魅力的なのですが、

類はその最たるものかな、と思います。

戦争、軍医であった父、マルチな才能を持った父、そして文筆で次々名をはせていく姉たち。

そんな父を早くになくしてしまうので、故人であり伝説である父を超えたくても超えられない壁、という祝福と呪いにさいなまれる生涯を送っています。

私は有名人の子ではありませんが、もしも家族がなんらかの形で文筆や本の仕事などに携わっていたら、もしかしたら今のように自由気ままに書いていなかったかもしれません。

特に、子どもの頃はそんな思いが強くあったように思います。

今は縁あって小説を書く夫と暮らしていますが、夫とジャンルが違って本当によかったなという思いはあります。はっきりいうと(笑)

家族の中に表現者がいると、例えば本一冊の読みであっても価値観や「どう創作していくか」の方向性が全く違うので、それぞれがそれぞれ好きなように書いて行けるには、例えば私のように「詩」を選んで、家族とのジャンルを分けていることは重要なのかもしれないなと思います。

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